王都編第1説
3話ぶっこむ予定が2話投稿だけになりました。申し訳ありません
翌日の早朝に俺たちは少し大きめの荷物を持ってギルドへと来ていた。
ギルドに行くとまだ人は少なく受付ではギルド員の人たちが談笑するくらいには手が空いていたようだったので挨拶も兼ねて緊急で護衛依頼などないかきくために受付まで足を運んだ
そこには、初日に対応してくれたあのカッコイイお兄さんが座っていてにっこりと微笑んでいた。
「おはようございます。ガロンさんが奥さんと来るなんて珍しいですね?」
「おはようございます。えぇ、実は、俺たちこれから王都で活動しようと思いまして今日は挨拶に伺いました。今までお世話になりました」
「それはそれは。少し寂しくなりますがわかりました。王都でも頑張って下さい」
「ありがとうございます。そうだ、王都までの護衛とかクエストないですか?行くついでに受けようかなって思ったんですが」
「そうですねー・・・あー、丁度王都への銅ランク同行の護衛任務があったんですが、少し前に埋っちゃったみたいです」
「そうですか。んー・・・あ、定期便ってまだ出ていませんか?」
確かアルマルスから王都への定期便が3日に一度出ていたはずであった。
正確な日にちなどは覚えていなかったがまだ残っていたはずだと思いギルド員に聞いてみた
「えぇ、確かにまだ今月の最後の便が残っています。日にちは・・・あ、今日ですね」
偶然ではあったが今日が丁度その便の出発日らしい。ならば、早めに行くべきだろうと思いアリーシャに目配せをするとアリーシャも急ぎましょうとアイコンタクトをした。
「ありがとうございます!では、俺たちは乗り場に行ってみますのでお元気で」
「はい。ガロンさんのこれからのご活躍期待しています。またよければ当アルマルスギルドをご利用ください」
そう言ってギルド員の人は笑顔で見送ってくれた。
この街はいい人たちが多かったなぁと感慨に耽っているとアリーシャが腕を回してきた
「今生の別れってわけじゃないんだから・・・ね?私の故郷でもあるんだしいつでも戻ってくればいいんじゃないかしら」
「そう、だな・・・うん。また生活が落ち着いたら来ようか」
「えぇ。さっ、早く定期便乗り場へ急ぎましょう」
彼女の笑顔に励まされ俺たちはギルドを後にし定期便乗り場へと急いだ。
彼女に急かされながらも乗り場につくと早朝ということもあってかまだ乗客がまばらにいるだけだった。
そしてその傍らで人数を数えてスクロールに目を通している男がいた。恐らく彼が定期便の送迎者だろうと当たりを付け
「すみません。まだ、2人ほど王都行きに乗れますか?」
「ん?あぁ、大丈夫だよ。一人銀貨1枚ね。
あと、途中3回休憩所で寝泊りすることになるけど食事は自分たちで確保しといてね。」
「わかりました。休憩所って寝具とかはどうなりますか?」
「寝具はこっちで持ってくるやつになるけど、もし、持参してるなら銅貨10枚渡すけど持ってるかい?」
「えぇ、彼女と俺の分どちらもあります」
そう言って持っていた荷物を指差した。
「では、二人分で銅貨20枚ね。ん?お兄さんもしかして冒険者かい?」
「えぇ、そうですけどどうかしましたか?」
「おぉ、すまない。別に何かあるわけじゃなくてね。気に触ったならごめんよ」
「いえいえ、特に気にしてはいませんからお気になさらずに」
大方、冒険者同士の諍いを危惧したのだろう。確かに血の気の多い者たちは冒険者にもいるのでわからなくもない。
もちろん、そんな諍いを起こす気は毛頭ないしどちらかと言えば逆で横の繋がりを持ちたいなというのが本音だ。
(ま、何とかなるだろう)
これから3日ほどの旅だ。この世界に来て初めての旅は一体どんなものか今からとても楽しみだな。
アリーシャにもこれからの旅がとても楽しみだということを話ていると体感で1時間くらい経った頃、先ほど話に出ていた冒険者パーティーであろう人たちが大きめの荷物を持って現れた。
そしてパーティーのリーダーであろう人物と御者が軽く話し合いをしているのを遠くから眺めているとそろそろ発つのか冒険者と別れ御者は少し早歩き気味に乗客の人たちに話しかけている
「そろそろ出発しますので荷馬車の方へお乗りください!」
その声を聞き乗客は荷馬車へと向かって行く。
それに合わせて俺たちも荷馬車へ乗ると少し奥側へと陣取った。乗客は詰めるほど乗っているわけではなく少し余裕がある程度の乗客数だった。冒険者たちは最後に乗りこんだ。恐らく道中で何かある場合にすぐに対応できるようにするためだろう。
狭い場所にすし詰め状態になるくらいの人がいる状態だとストレスが溜まる俺にとっても丁度良い人数だった。これなら快適に過ごせそうだ。まぁまだ懸念するところはあるがどれくらいのものか・・・
それから出発してしばらく経っただろうか。朝に出た日が高くなり少しだけ夕暮れの方へと傾いていた。
が、尻が痛い。馬車が道なりに進んではいるが小石や窪みに車輪が当たる度に馬車が揺れその度に尻が打ち付けられる。
周りを見渡すと乗客のほとんどは慣れているのか男は何事もないかのような顔をし女はクッションのようなものを挟んでいる。
「まさかここまで揺れるとは思って見なかったわ。何か買っておくべきだったわね」
「そうだな・・・とりあえずアリーシャは今はこれで勘弁してくれ」
俺とアリーシャは何も持っていなかったため適当に中に入れていた布を折りたたんでアリーシャに渡す
「アナタはどうするの?」
「俺はまぁなんとかなるさ」
そう言ってアリーシャを優先させた。これはあとでアイテムボックスの中から負担のかからないものをアリーシャに渡しておくか。
何かいいモノがあったかな、等と軽く思案したりアリーシャと軽く雑談をしていると馬車の速度が落とされ完全に止まった。それを確認すると出入り口付近に座っていた冒険者が先に降り周囲を巡回し始めた。
乗客たちも慣れたものなのか各々が持っていた荷物を手にし宿泊ポイントへ向かっていく。
「さて、と。俺たちも寝床の確保に行こうか」
「そうしましょう。夕ご飯はどうする?」
「少し早い気もするから軽く運動してからかな」
「ねぇ、それじゃあ、私も一緒に行っていいかしら?」
「んー?あぁ、それは構わないが見てても面白いものじゃないぞ?ただ柔軟するだけだし」
「いいのよ。私が見ていたいだけだから」
まぁ見ていてくれるなら少しアリーシャに背中を押してもらうなどするのもありかな。と考えつつ宿泊用のポイントで場所を確保した後に、少し離れ柔軟をする。
さすがに一日中座っていただけあって体が硬くなっていたようで軽くほぐしただけでも体が軽くなるような気がした。
これがあと2日も続くと考えるとさすがに辛いものがある。何か移動手段を考える必要があるかもしれないな。
「っと。そうだアイテムボックスに何か座るのにいいのないか見てみるか」
「あ、それなら一緒に食材も出してもらえないかしら?」
「あぁ、別に構わないよ」
「じゃぁ、ビェスーチャにしようと思うからビェスーチャの粉とブーフのお肉とボリュスとジェンチャとパンを貰えるかしら」
「あいよー」
アリーシャが必要なものを言いながら俺はそれに従ってアイテムボックスから取り出す。
ビェス-チャとは俺の住んでたところでいうカレーだ。アルマルスで初めて食べた時はまさかカレーを食べれると思ってなかったので最初は涙を流してしまった。
米がなかったので少々物足りなく感じてはしまったがアリーシャ曰く中央国か王都で販売しているそうだ。アルマルスにも多少は卸されるらしいがパンの方が需要が高いそうだ。
それを聞いた時に俺は王都で絶対に米を購入しようと心に決めたのは内緒である。
そんなこんなで初日は宿泊ポイントでテントを建て就寝した。途中でカレーを食べてると乗客の人たちがやってきて物々交換でカレーを分けたり夜警を手伝おうとしたのだが夜警自体は冒険者がするのと魔除けの聖水があるので大丈夫だと断られたりとあった。
お約束の盗賊と遭遇イベントはなかったのでホッとしたのも精神的に楽だった。
そう、3日目の今朝までは――
3日目の早朝から馬車に乗り王都までもうすぐという所でサードアイのサーチ範囲に複数の人影が森の中にあるのを見つけた。
どうやらその複数の人影を見ると追う者と追われる者という構図になっており前者は武器を持った清潔とは程遠い格好の男数人で追われている者は女性でこちらに向かっているという所まではわかった。
恐らくこのままいけば少なからず女性たちは捕まってしまうだろう。その後の展開は予想がつく。しかし幸か不幸か今俺たちはまさに森より少し離れた街道にいる。
そんな状況を見た俺は御者に森の方に女性が二人盗賊に追われておりもう少しでこちらに来ることを告げる。御者はギョッとし一瞬どうするか思案する。このまま彼女たちを乗せ王都まで無事にたどり着けるかどうかを考えたのだろう。
ならばと、俺は御者に俺が彼女たちを保護するからその間に王都へ向かって救援を出して欲しいと頼んだ。御者はまた思案するが
「お客さんは冒険者だ。確かに戦闘はいけるかも知れないが、それでいいのかい?」
「迷ってる時間はないですから。それに、このままだともしかしたらこっちにまで被害が出るかも知れませんし」
「わかった。だが、貴方も私のお客さんだ。絶対に無理だけはしないでくれ」
「ええ、危なくなったらなんとか逃げてみます」
御者はそれを聞き馬車を止める。ニコリと笑い俺は出入り口へと向かい外へと出る。が、なんとアリーシャまでも降りてきた。アリーシャが降りたのを確認した馬車が少し駆け足で駆けていく
「アリーシャ!?」
「女性がいるんでしょ?男のアナタだけだと恐らく警戒されそうだし私がいた方が安心はすると思うわ」
「いいのか?」
「アナタの妻ですもの。危険なことでも共に一緒よ。―んっちゅ」
「はは、俺は素敵な女性を嫁にもらえて嬉しいよ」
「ふふっアナタの格好いいところ見せてね?それと・・・」
「・・・・わかってる。すまないがあとで無様なところを見せることになる」
「大丈夫、私がアナタを支えてみせるわ」
「・・・ありがとう」
彼女を守る。そのためなら俺は危険を取り除こう。大丈夫だ、俺の弱さは彼女が支えてくれる。
ならば―
決意を胸に俺は森から出てくる二人の女性の元へ走る。
「え?」
一瞬にして現れた男の俺に二人は呆けている。思考が停止しているのなら好都合とばかりに俺は二人を抱きかかえアリーシャの元へと戻る。
アリーシャも一瞬だけ驚いた顔をしたがすぐに抱えられている女性たちにニッコリと笑みを浮かべた
「もう大丈夫よ。あとはあの人に任せておいて」
女性たちを見ると胸の部分は晒され下部の布地は剥ぎ取られたのか一切隠れていなかった
そんな彼女たちに俺はアイテムボックスから新しめの布を2枚出しアリーシャに手渡す。
「アリーシャ。これを彼女たちに」
「ええ」
受け取り彼女たちは布を巻きつける。それを確認し俺は物理結界と聖魔法結界をアリーシャたちの一帯にかける。
聖魔法結界は中にいる対象者たちにリジェネ効果をもたらす魔法結界でゲームの時は使えなかったがこの世界にきてアルマルスで色々と習得した一つだ。
さすがに神聖魔法結界は種族制限で覚えられなかったがこれでも十分である。
「これでよしっと、じゃぁ俺は行ってくる」
「いってらっしゃいアナタ」
前方の森には盗賊。数は3人・・・ん?後方支援であと1人いるのか
気を入れなおし俺は森へと再び駆けて行く。
「悪いが、これより行われるのは一方的な蹂躙だ」
そう聞こえ盗賊たちが振り向くとそこには、一人の男が立っていた
異世界さんこんにちわ~不死王だけど元人間です~ 王都編第1説「旅立ち」
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