6話
6話 むさしの対空戦
1992年1月29日
日米の巨大戦艦の艦砲射撃の前に精鋭を誇ったアリ・フセイン大統領の親衛統合師団は大きな打撃を被った。いや、壊滅を通り越して殲滅されたのである。
むさし戦闘指揮所
「偵察機より入電。敵戦車師団並びに歩兵部隊は壊滅。残存部隊は北上するか白旗を掲げています!」
大野砲雷長がそう言うと野崎艦長は「そうか…………撃ち方止め!」と呟く。すると砲術長の俺、宮原和義大尉が主砲身冷却装置の稼働スイッチを押す。
砲撃をやめたむさしの3連装3基計9門の45口径46cm砲の先端から冷却の為に使われた冷却水が湯気となって出てくる。
冷却が終わると砲塔が艦橋の測距儀と共に中心線上に戻る。
「…………レーダーに目標反応!MiG-29及びMirage-5戦闘機!数15!」
電測員がそう言うと大野中佐は「ほうしょうの剣隊のF-14BJは間に合いそうか?」と聞く。するとその電測員は「無理です!ほうしょうの戦闘機隊は現在、発艦準備中です!」と報告する。
「仕方あるまい…………対空戦闘用意!スタンダードミサイル。目標、敵航空機群に評定!」
そう野崎が言うとデータリンクシステムにより僚艦のやましろとこんごうにも伝わる。
3隻のイージス艦。これほど味方には心強く、敵には恐ろしい存在は無い。
むさしのレーダーは確実にMiGとmirageを捉え、やましろ、こんごうも同様にとらえてその情報を共有する。
ミサイル発射と誘導、そして敵情報を共有する事により確実に敵を仕留めるのであった。
「発射用意……………一斉発射!」
司令がそう言うとむさし、こんごう、やましろのVLSからSM-2MR対空誘導弾が一斉に飛翔する。
それとほぼ同時に敵もエグゾゼミサイルを放ち、旋回して回避行動に移る。
むさしの搭載するイージスシステムは即座に直進してこちらに来る対艦ミサイルに脅威と判定し、いくつかの誘導電波をそっちへ振り分ける。一方でいくつかのミサイルの誘導電波はそのまま敵機へ照射し続ける。
割合としては7:3位で、当然優先度はミサイルの方が高い。
指揮所を静寂が包み込み、砲術員はモニターを睨み続ける。
「マーク・インターセプト!」と砲雷長の大野砲雷長が言うと固唾を飲んで全ての砲雷員がモニターを睨む。するといくつかのミサイルがモニターから消えると歓声が沸き上がる。
そしてまたいくつかの目標が消え、あっと言う間に全ての目標を撃墜したと言う判定が下る。
そして逃げ切ったかと思われた敵機も半分を撃墜。むさしは自らやミズーリ、ウィスコンシン、それにアンデスに迫っていた刺客を見事、撃破したのである。
残った敵機は全て撤収。
帰り際に嘉手納所属の米空軍のF-15戦闘機による奇襲を受けて全て撃墜されたと言う。
2月1日、米海兵隊が上陸を開始すると我がむさしはその支援射撃を開始し、戦意が低下したイラク軍の陣地を海兵隊はすぐに制圧。
それはまさにクウェート奪還の橋頭堡を築いた事を意味する。
一方で、上空や地上でも激しい戦闘が繰り広げられていた。
1月30日。広大な砂漠で暁を迎えるある戦車部隊があった。
第11戦車師団。
試験的に90式戦車を導入している東北の政経都市仙台の護り手で最精鋭の部隊だ。
「隊長。間もなく時間です!」
「時間か…………よし、戦車前進!」
そう隊長の冨野大佐が言うと12両の61式、8両の74式、そして4両の90式戦車が進み出す。
そしてその上空を米空軍の最新鋭戦闘爆撃機F-15EにA-10攻撃機や英空軍の攻撃機トーネードに英空軍と我が海空自のバッカニア戦闘爆撃機とF-4EJ改及びF/A-18A/B戦闘攻撃機が通り過ぎる。
どの機体もイラク軍陣地攻撃の為に主翼や胴体下におびただしい数の爆弾を搭載している。
彼らに負けてられない。
俺、尾村信太大尉はそう思いつつ愛車74式戦車に乗り込む。
朝焼けに包まれつつも星々の残る砂漠に24もの甲高いエンジン音は静寂を切り裂き、鋼鉄の猛獣は砂漠を進む……