22話
人間味がある政治将校を書いてみました。
苫小牧から上陸したNEATO軍は畳み掛ける様に快進撃を続けていたが、それに対して北日本陸軍はゲリラ的な戦術で反撃を続けていた。
制空権の無い中、Su-25攻撃機による対地攻撃や残存戦闘機による決死の制空権確保作戦に、戦車を森に隠した待ち伏せ戦術以外にもブービートラップやRPG-7などを用いた典型的なゲリラ戦術、奪った兵器による同士討ちなどを誘発させる戦術、ありとあらゆる戦術が用いられ、NEAT軍を苦戦させたが、絶対的な戦力に大きな差が大きく、そんな戦術も長くは続かなかった。
一方、臨時国家主席らは首都脱出を終え、旭川陸軍駐屯地の核シェルター内で戦時指揮を執っていたのである。
俺はここの政治将校の一人で、名前は本木信一郎と言い、階級は中尉だ。しかも若手でまだ軍についても党についても全く理解していない。
だが、ここも長くない事は俺もわかっている。北海道の内陸とはいえもし米軍がその気になれば多数のトマホークが旭川にも飛んでくるであろう………いや、最悪の場合………と思っている内に寒気がしてきたので考えるのをやめた。
そして俺の任務は核シェルター内の見回りと地上へ出向き、兵隊に対して命令を出す事などで、本来は白兵戦は含まれていないが、この日、俺はAK-47を肩にぶら下げ、トカレフを片手にいつでも敵が基地の近くに来る事に備えていた。
もっとも政治将校とは言え俺は戦車兵出身なのでT-72戦車に乗って戦う事になっているが、一応、統合政治将校学校でSu-27の操縦免許や水上勤務許可証も取得させら、陸海空軍でのローテーション勤務となっている。
ふと俺が空を見上げるとレーダー員がSR-71らしき高速機を探知したとの報告をしたので高高度迎撃ミサイルの発射命令を俺は下した。
だが、既に時遅し、SR-71は音速の3.3倍の速度でこの上空を通り過ぎると情報を既にNEAT軍へ転送し、同部隊の攻撃を簡単にしてしまったのである。
しかし俺は冷静さを取り戻すとMiG-25の発進命令を下し、操縦員たちはMiG-25に乗り込み、護衛のSu-27やMiG-29と共に還らぬ上空へと発進する。
俺自身の心境は非常に辛い。彼らは強大な空軍力を持つNEAT軍に立ち向かい二度と帰れないであろう事はわかっているが、それでも乗っていく。
しかも皆、俺と同じで若いパイロットばかりだ。それにしても上層部や軍政治科本部の連中は何を考えているんだ。クーデターに権力争い、俺は政治将校でありながら彼らの考えに疑問を呈し始めていた。
戦争を終わらせなければならない。そのためにはこの基地の上層部や主任政治将校を殺害し、全面降伏の余地がある事を国際周波数で………
俺はそう思いつつ、帰らぬ空へ飛び去るMiG-31を見つめて涙を流す。




