第22話 開戦-ディル・ジルの見せ場-
*セイルフォン平野
セイルフォン平野には、フェステル帝国、サーレイド王国両陣営が北と南で対面するような形で陣を整えていた。フェステル帝国100万の兵は、前方に重装騎兵、後方に魔術師団、その間に一般歩兵及び弓兵が並ぶような形で布陣していた。一方、サーレイド王国50万の兵は、前方に重装騎兵、後方に魔術師団、その間に一般歩兵及び弓兵、そして、最前列にランディ、スレイマ、ディル・ジル、杏林風花が並ぶような形で布陣していた。
今回の戦争は、事前の取り決めにおいて、互いに互いの国の本土に侵攻し、民間人の虐殺の禁止及び戦場はここ、セイルフォン平野のみに限定することなどを決めていた。そして、開戦の合図は互いに魔術師が空に向けて、空気圧縮弾を放つこと。この魔法は、威力自体は大したことがないが、限界まで圧縮された空気はやがて破裂する。その破裂時になる、大きな爆発音が開戦の合図だ。
「「空気圧縮弾」」
両陣営の緊張が高まる中、やがて上空に向けて両陣営から一発ずつの空気圧縮弾が放たれ、爆発音が轟く。だが、帝国陣営は動かない。予想できないほど爆音だったからか、それともディル・ジルが巨大な魔法陣を構築し始めたからか。今なら、問題なく全軍強化が発動できるとみてランディがSSランク聖光の守り手、スレイマがSランク煌鍠の守り手をそれぞれ発動した。
「契約魔獣召喚 魔界 フェンリル」
そうこうしているうちに、ディル・ジルの魔法陣が完成しSランクの契約魔獣―フェンリルが呼び出された。フェンリルは巨大な狼型の魔獣で全身に雷と風を纏っている。このフェンリルはディル・ジルがスレイマと一緒に魔界に行ったときにたまたま遭遇した魔獣で、フェンリルがディル・ジルに喧嘩を売り、ディル・ジルがフェンリルを打ち負かすと降伏したので、ディルが契約した魔獣である。それ以来、このフェンリルはディル・ジルの命令を素直に聞く忠実なしもべ(?)だ。
その召喚されたフェンリルに、やっと気が付いた帝国軍は、攻撃魔術や矢の雨をフェンリルに降らせるが、攻撃魔術は雷に迎撃され、矢の雨は風に吹き飛ばされ、いずれもフェンリルには届かない。だが、それを鬱陶しいと感じたのかフェンリルは、帝国軍に向けて雄たけびを上げた。その雄たけびに帝国軍の者たちは畏怖し、そして気絶し、失禁し、意識を手放し、戦闘不能状態となったものが帝国軍の四分の一。
「僕の出番はとりあえず終わりかな。戻っていいよ、フェンリル。」
彼は、満足そうに頷くと。次の手番を、ランディ、スレイマ、杏林風花に譲った。




