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ユニベルの右手 -忌まわしき女神の使命-  作者: 蓮見ななこ
グリーン・ヴァレ 風の谷
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71/207

71.エイル族

 レンジ達は、ある民家に来ていた。

 唖然としていたところに、子供達の父親らしき人物が来て、家に招いてくれたのだ。

 子供達が、四人を岩壁にある民家へと運んでくれたのだ。

 レンジ達は、彼らに聞きたいことがたくさんあった。

 ここは風の谷なのか。

 翼の生えた彼らはいったい何者なのか。

 風の精霊は何処に行ったら会えるのか。

 あの気味の悪い風の出どころは何なのか。

 今、思いつくだけでもかなりの疑問が浮かぶ。

 悶々としながら彼らの翼を見つめていたら、男がにっこり笑って話し始めた。

 

「いやぁ、うちの子が失礼をしました。

 私は、この子達の父親のゲイルと申します。

 私達は翼をもつエイル族という種族でして、翼で起こした風を、このユニベルに運ぶ役割を担っています。

 ここは紛れもなく、あなたたちが探していた風の谷ですよ。

 そして残念ながら、精霊様はずーっと留守なんです。」


 レンジ達は、お互いの顔を見合わせた。

 まだ聞いてもいないのに、目の前にいる男は自分達の知りたいことを次々と答えたからだ。


「驚いたでしょ?

 私達エイル族は、相手の心を読むことが出来るんですよ。

 人間のように剣を握ることも、エルフのように治癒魔法を使うことも出来ないけど、この翼で空を飛ぶことも出来るから戦えなくたってなーんにも不自由してません。」


 ゲイルは翼をパタパタと動かしてみせると、明るく笑う。

 裏表のない、あっけからんとした彼らの性格は、レンジ達にとって非常に新鮮だった。

 

「そういえば先程、ものすごい地響きが起こったんですが、何か知りませんか?

 何だか、いつもの地響きではなかったから気になって気になって。」


 ゲイルの言葉に、ロイドは、まずいと言わんばかりの表情をし、先に詫びた。


「……すみません。

 僕のゴーレムが、アルメイン大陸とグリーン・ヴァレの間にある渓谷を飛び越えた時の着地で起こったものです。」


「ゴーレム!?

 そりゃまた珍しい……。

 ゴーレムがいたんなら、あの強風の中を抜けて風の谷に来れたのも合点がいきますね。

 それにしても……あの渓谷を飛び越えるだなんて、なかなかステキだよ、うん。」


 独特のテンポで話すゲイルは、テーブルの上に用意したハーブティーを飲み干した。

 会話の中でひとつ気になったことを、ハープが質問した。


「あの、いつもの地響きって何ですか?」


 その質問に、ゲイルは苦笑いをする。

 やはりそこに触れるか、と言わんばかりの表情を見せた。

 この少女の澄み切った心の中を覗いてみると、彼女は自分達を心配してくれていることが分かった。

 彼らが悪い人間ではないということを、会話の中からも探っていたゲイルは、今、この谷で起こっている地響きについてを話すことにした。


「実は今、この風の谷では大変なことが起きているんです。」


「大変なこと?」


「この谷底には、鬼族オーガが暮らしているんです。

 数日前からオーガの様子がおかしくなって、度々地響きを起こしてくるようになったんです。

 彼らは何かしら怒っているようだけど、私達には原因が何が何やらさっぱりでして。

 あの、もし良かったら、オーガ達に聞いてきてもらえませんか?

 このままだと子供達も心配だし、それに何で怒っているのかが知りたいんです。

 もちろん、ただとは言いません。

 原因が分かった時は、精霊様を祀るほこらへ案内します。」


 エイル族は、戦う力を持たない部族であるため、オーガに恐れをなしていた。

 もちろん、飛んでいる間は平気なのだが、睡眠や食事を阻害されては、いくら明るい彼らとて気が休まらない。

 そのために、気味の悪い緊張感の漂う風が生じてしまう。

 ユニベルに吹く風は、彼らと共に生きているのだ。


「その話のった!

 で、どこに向かえばいいんだ?」


「谷底にある、隠れ里にオーガ達は暮らしています。

 けれど、そこに行く前に地底湖の洞窟を抜けなければなりません。

 私達も、入り口までなら案内できます。」


「一緒に中に入らないのか?」


「その……エイル族は恥ずかしながら、暗くて狭いところが苦手なんです……。」


「何だかエイル族って子どもみたいだなぁ。

 まっ、いいや。

 さくっと聞いてくるから、案内してくれよ。」


 話が終わると、レンジ達は外に出た。

 真上に大きな影が出来たため、上空を見ると、ゴーレムが穴を覗き込んでいた。


「ヴォルス、僕らはこれから谷底に向かう。

 ここで少し待っててくれ。」


 ロイドがそう言うと、ゴーレムはゆっくり頷き、集まっていた他のエイル族と楽しそうにしていた。

 大人しいゴーレムと、優しく語り掛けるロイドの姿は、まるで、


「恋人同士ね。」


 と、セレスが笑いながら彼に言った。

 

「バ、バカ言うなよ。

 ゴーレムに男も女もないだろ!」


 ロイドは顔を赤くしながら、やや強めの口調で話した。

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