まざりあうこえ
※颯くん視点です。
「……誰かいるの?」
「ひっ……!」
……その声を聞いた瞬間に、俺の足は無意識の内に動いてた。
(早く、ここから逃げないと……! また、殴られる……!!)
……違う、違う!!
あれは、俺の大好きな透花さんの声だろ!
あの人が、俺を殴ることなんて絶対にない!!
そんなの、ちゃんと考えればわかるはずなのに……。
――――――颯はいい子だ。さぁ、こっちに来るんだよ。
――――――颯くん、大丈夫だよ。泣かないで。
――――――普通の子どもの暮らしなんて飽きただろう?
――――――いつも一生懸命で頑張りやさん。颯くんは、そういう人間だよ。
――――――汚れた子を受け入れられるのは、アタイしかいないんだから。
――――――……汚くなんて、ないよ。
……頭の中で、二人の女の声が混ざり合う。
あの女のねっとりした声と、透花さんのキレイな声は全然似てないのに……。
(オレを汚いって言ったのは、どっちの女だ……? もうわかんねえよ!!)
冷静に考えれば必ずわかるはずのことが、今の俺にはわからない。
……そんな状態の俺にもわかるのは、たった一つのことだけだった。
(女の声は怖い! こんな場所には、いたくない……!!)
俺は震える足を必死に動かすと、そのまま飛び出しちゃったんだ……。
俺のとても大切な、“帰る場所”から――――――――――――。