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夢その2

ステージの真反対に位置する体育館の出口を塞いでいる鉄扉を、その扉の前に並んでいるパイプ椅子に座っていた卒業生の保護者達が開こうとしている。


だが、皆パニックに陥っているせいか、冷静なら簡単に解錠できるはずの単純な鍵に苦戦している。焦りにより網膜がその構造を複雑化させて脳に伝達させているのかもしれない。




俺の網膜も嘘を伝達していると思いたいが、鼓膜は依然として絶叫を捉え続けている。


くそっ、俺は今何をすればいいんだ?


あいつが人を殺すのを止めるべきか?


出口の扉を開けるのを手伝うべきか?


それとも瓦礫の下敷きになっている校長先生とあの卒業生を助けるべきか?


……分からない。お父さん、俺はどうすれば……




――ガシャン




大きな鈍い音が体育館に響く。その音が呆然としていた俺を我に返らせた。


この音はもしかしてっ!?


音がした方へと視線をやる。


俺の予想は的中していた。そう、出口を塞いでいた鉄扉が解放されたのだ。


皆、一刻も早く地獄絵図のような惨状と化している体育館から逃げ出そうと必死である為、歓声は聞こえない。




鉄扉の鍵を解錠したと思わしき夫婦が、その出口から外へと足を踏み出した瞬間、攻撃を続けている奴が体育館にいる全員の耳を劈く様な声で、




「一人も逃がさぬ、と言ったであろう!杭は既に打ち込んでいる!『風竜ふうりゅうの古城こじょう』ッ!」


 


な、何だ!?また魔法を発動したのか!?


出口の向こう、日光に照らされている外を凝視する。


出口から一馬身程先、脱出しようとする者を絶望の淵に追いやるように、半透明の刃物のようなものが無数に存在し、暴走した扇風機のように高速回転していた。




「何だこれは!?」




夫婦の次に外へと顔を出した男性が、人類の九十五%が同じ立場だと選ぶであろう言葉を、奴に向かって怒鳴りつける様に言い放つと、




「そいつに突っ込んでくれると我は楽ができるのだがな……『風切かざきり』ッ!」




そう言いながら逃げ回っている人達を真っ二つする。


出口に殺到していた群衆は、外へ出られぬという現実を嫌でも判ってしまい、殺されまいと蜘蛛の子を散らすように四散していった。




悠長に見ている場合じゃない。でも何をすればいいのかわからない……。いつもそうだ。複数の選択肢が出てきた時はいつも優柔不断に陥ってしまう。原因はわかっている。それは途中で思考を放棄してしまうからだ。普通の優柔不断はどれが最善かを悩み抜く。だが俺は違う。現に今も進むべき道とは無関係なことを思考している。救えないよな。こういう時に限って脳内の俺は出てこない。ヘタレ野郎。




――ドゴッ




俺は自分の右頬を手加減無しで殴った。


……悪手だとしてもとにかく行動をしろ、俺。動けば第二の心臓であるふくらはぎの血流が良くなって頭も冴えるだろう。何が最善手かは冴えた俺に任せればいい。




棒立ちで電源の落ちていた下半身を、殴りつけて無理やりオンにし、俺は体育館中央で凄惨な行為をしている黒衣の人物へと駆け出した。




黒衣の人物は相も変わらず無抵抗の人を魔法で殺している。


ああ、今俺がすべきことがわかった。これが冴えた頭から導き出した答えじゃなく、ただ感情に任せて選んだだけだが。それでも、これが間違いではないと確信している。




俺があいつを倒す




夢その3へと続く

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