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革命混乱

そのとき、液晶画面に流れていた番組が中断され、

緊急速報というタイトルとともに、ニュースキャスターが現れた。

いま起こっている事件についての説明が始まった。

「現在、ブイテレビのスタジオ内にて、立てこもり事件が発生しております。

犯人は生番組の収録中に司会者であるタモノこと物田五郎さんを人質に取り、

現在も立てこもりを続けている模様です。犯人の名前は付けている名札から、

屁鳴克哉へなりかつや容疑者であると思われます。

屁鳴容疑者は、少年院に拘束されている彼の仲間三人の身柄を解放し、

スタジオに連れてくるよう要求しています。繰り返します……」


わたしの首は左右に慌しく動いていた。

ふたつのテレビ画面を確認するのはもちろん、

両耳で音声を聞き分けさらに携帯から流れてくる会話も聞き漏らさないでいた。

屁鳴が、タモノに向かって口を開いた。

「コワイカ」

「……」

「ツカレテルナ」

「いや……」

「サケ ノミスギ クサイ」

「そ、そんなことはないっ。おれはいつだって真剣に……」

「サケニ タヨル ヨワイ」

と屁鳴が言い終わりかけたとき、

「新たな情報が入りましたっ」

女性キャスターの甲高い声が、携帯から聞こえる声をかき消す。

「先ほど、犯人が釈放を要求した少年たちは一年前、都内で殺人事件を起こしていました。

当時、十六歳だった三人は深夜、コンビニに買い物に来た男性に対して目が合ったからと

因縁をつけて、殴る蹴るの暴行をして相手を殺害しました。

しかし当時、三人はシンナーによる中毒状態であり心神が不安定であったため、

殺人の意志を問うことができず、殺人罪ではなく過失致死で少年院に送られた模様です」

殺人、という言葉が出てきた。

屁鳴の言っていた言葉は、これに違いない。

わたしは携帯を取って、声をあげた。

「殺人っ」

今回も、向こうから言葉は帰ってこなかった。でも、それはとくに重要ではなかった。

また、あっち側に行くことができた、それが嬉しかったから。

画面の向こうで、あの面が少しだけ傾いた。

液晶テレビの向こうで、更なるニュースが届いたようだ。

女性キャスターの後ろから原稿が手渡されている。

「えーーっ、続けます。先ほどの少年たちの事件で殺された方の名前がわかりました。

その名前は・・・屁鳴克哉さんだということです。

繰り返します。先ほどお伝えした事件の被害者の名前は屁鳴克哉さん。

彼は、すでに亡くなっております……」


すでに亡くなっております……

すでに亡くなっております……

すでに亡くなっております……


女性キャスターの言葉が、頭のなかを幾度も響いた。

それから、すべてが消えた。真っ白になった。意識が止まっていく。

ぼんやりと周りが霞みはじめた。そのまま眠ってしまいたい、そう思った。

今までのすべては夢であって、これからもまた夢の続きなんだ、と。

ぼんやりとした記憶のなか、わたしは携帯に向かって訊ねた。

「……あなたは、だれ?」

何も返事はなかった。

プチッ、しばらくして電話は切れた。

それが返事だった。

これで、わたしとテレビの向こうとのつながりはなくなってしまった。


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