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革命分裂

スタジオに三人の少年が到着したようだった。

三人ともサングラスにマスク姿で、帽子を深くかぶっている。

一年前の事件が十六のときだから、まだ未成年である。

いくら生番組だといっても、未成年の犯罪者をそのままテレビに映すことはできない。

そう考えて、施したテレビ局側の策であろう。

三人のすぐ後ろに、体格のよい中年の男性ふたりが付きそっていた。

警護の人間であろう。

屁鳴はその姿を見つけると、

「オマエタチ キエロ」

と、手で追い払った。

頑強な身体の男たちは、何の抵抗もなく素直にその言葉に従った。

そして、スタジオの隅には三人の少年が取り残された。

少年たちの表情は、もちろんわからない。

三人とも背丈は、随分と高く見える。

それは周りにいる屁鳴とタモノが低いからかもしれないが、

それでもゆうに百七十は越えているだろう。

すらりとした体型のためなおさら、そう見える。


いちばん手前にいた少年が口を開いた。

「お前が解放するように言ってくれたらしいな」

「……」

「ありがとよ、って言いたいんだけど、あんたは誰だ」

「……」

「誰にもそんなこと頼んじゃないんだよ。せっかく、もうすぐ出所だったのにさ」

「オマエタチ ユルサナイ ソトニ ダサナイ」

三人の少年は互いに顔を見つめあっている。

「あんた、だれ?」

もう一度、少年が言った。

「コレ ミロ」

屁鳴が名前の書いてあるボードに手をやった。

目を細めて、必死で読み取ろうとする少年たち。

そのひとりの顔色が変わった。

連鎖するように隣の少年の顔色も変化していく。

「ワカッタ カ」

「そ、そんなはずない・・・」

少年は震えながら呟いた。

「サングラス トル」

続けて、

「マスク トル」

屁鳴が短く声を発するが、少年たちは答えない。

「ヒトゴロシ カオ ミセロ」

その言葉を聞いて、横にいたタモノが口をはさんだ。

「おい、無理を言うんじゃない。ここに連れてきただけでも、すごいことじゃないか。

顔なんてどうでもいいだろ」

「オマエ モウ イケ」

「いけ、って? いいのか?」

「イクマエニ マスク サングラス トル」

「おい何でだ、仲間だろ? それなのにテレビの前で、さらし者にするつもりか。

いくら犯罪者といっても、あいつらだって人間だ。人権がある。それに、まだ若い。

未来だってあるんだぞ」

屁鳴は拳銃をタモノの前にちらつかせて、少し早口で言った。

「イウトオリ スル」

「大変なことになるぞ。本当に、それでいいんだな」


タモノは少年たちの前にいって、ひとりずつ、そのサングラスを取った。

続いて、マスクも取っていった。

少年たちは突っ立ったまま、何の抵抗も示さなかった。

丸裸になったその素顔をカメラは映しだした。

テレビ画面に三人の少年の素顔が現れても、映像が途切れることは無かった。

・・・・どうして? 

わたしは疑問に思った。

いつだったか、週刊誌に未成年の犯罪者の写真が掲載されて問題になったことがあった。

それ以降も少年犯罪は頻繁に起こり、そのたびにマスコミの事件に対する対応が問題視された。

特に未成年者のプライバシーに関しては、議論を呼んだ。

だから、マスコミはこの手の事件には敏感になっているはず。

それなのに、どうして安易に少年をスタジオ内に呼び、

顔がわかった今も、映像として流し続けているのか。

確かにこの時間帯の視聴率は飛びぬけてよいはず。

だけど、単なる視聴率稼ぎにしてはリスクが高すぎる。

このまま、放送が長引けばスポンサーだって黙ってはいない。

そこまでして放送しつづける必要がどこにあるのか、わからなかった。

横に戻ってくきたタモノに、屁鳴は言った。

「ヨツンバイ デ イケ」

「でも、客たちをあのままにはできない。

おれは、この番組の司会者なんだ。ちゃんと責任があるんだ」

「セイギノ ミカタカ」

「……そんなんじゃない」

「シンパイナイ キャク ナカマ」

タモノの表情が凍りついた。

口もとは開いたままだった。

次の言葉を探しているが、見つからない。

水面でパクパクと口を動かす魚のように必死で何かを訴えていた。

屁鳴はタモノに向かって、二度ほど頷いた。

それから身体を翻して、少年たちに銃口を向けた。

「ツギ オマエタチ ヒトジチ」


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