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65話 幸せの形


「長かったな、イーギス」


 次の日、教室に集まって報告をすると王子がイーギス様の肩を叩いた。


「本当だよねー。ごめんね、フローラ。利用するような真似して」

「いえ、お2人のこと大好きですから」


 私を膝に乗せて後ろから抱きしめるイーギス様。フローラは眩しい笑顔を私たちに向けてくる。


「俺には迷惑だった」

「レオンハルト様、今でも私は反対ですからね。庶民が王族と婚約するなんて前代未聞ですよ」


 聞けば王子とフローラも想いが通じ合えて、幸せらしい。結局私は何もシナリオを変えられなかったということだ。


「ナターシャはシナリオを変えたと思うよ」


 そんな話を馬車でイーギス様と話してたら、イーギス様が笑う。


「だって、ゲームの世界では俺は孤独だったんでしょ?でも俺は孤独を感じたことがない。ずっとナターシャが一緒にいてくれたから」


 イーギス様が私を抱き寄せて、頭を撫でてくれる。


「ありがとう、ナターシャ。この世界に来てくれて」

「イーギス様……」


 推しからそんな言葉が聞けるなんて、最高のご褒美だった。


「泣き虫」


 涙を流す私にイーギス様は笑って、涙を拭ってくれる。


「泣くのは俺がいる時だけにしてね。涙を拭ってあげられないのは嫌だから」

「イーギス様のこと以外では泣きません」


 イーギス様は心配そうにいつもどこかで私に触れる。もうこれが恋だと言った後でも不安なのかずっと手を繋いだり抱きしめたりしている。だからこの先長い時間をかけて、私が前世でどれだけイーギス様のことが好きだったか語り尽くしてあげようと思う。


「イーギス様」


 私はイーギス様の名前を呼ぶ。なぁに?と振り向いたイーギス様にキスをした。


「大好きです。今も昔も、これからも」


 想いを伝えると、イーギス様は私を抱きしめた。


「俺も、ずっと愛してる」


 推しと恋人になるなんて想像もしてなかったけど、イーギス様の婚約者に転生してきた時から決まっていたのかもしれない。私はイーギス様を愛し守り、幸せにする。それが使命だったんだとようやく気付いたんだ。現代とは何もかもが違う異世界の世界。馬車から見える景色に今は懐かしさすら覚える。イーギス様と結ばれて、ようやくこの世界に馴染んだ気がした。ここが私の居場所なんだって。

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