表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神を殺した世界にて  作者: ほてぽて林檎
第2部:その手はまだ繋がって
114/123

余白



昼休憩に話すには――全然足りなかった。



さっきのトゥヴァの話から察するに、私は入院していた母から“あの書類”のことを聞いていない。あの時、見舞いに行ったときに彼女がぎこちなく笑って、何かを誤魔化したように話を逸らしたのは、あれだったのだろう。



……なんだ、そんなことだったのか。



私は心の奥で、ぽつんと小さくつぶやいた。



親に捨てられた――そんな言葉が、思い浮かんだ。



いとも簡単に、私は金に換えられただけだったのか。



「外で遊んできなさい」と言われて追い出されたあの日も。


行く当てもなく彷徨って帰れば、他人の前では“保護者”の顔をしていた母。


形だけを取り繕っていたのは、母だけじゃない。

それを受け入れていた私も、きっと、同じだった。


最初から……私は、邪魔だったのかもしれない。


今さら、考えたって遅いのに。





私は無言のまま、トゥヴァの手を引いた。集合場所へ向かって歩く足音が響く。



彼女の目は赤く腫れ、頬には涙の痕がまだ残っていた。顔を伏せがちにして、何かを噛みしめているように見えた。



「ほら、急がないと。教官に、また罰を科せられちゃうよ」



小さく笑って言うと、彼女はかすかに頷いた。


「……うん」



その返事には、まだ涙の余韻が残っていたけれど――どこか、少しだけ前に進めたような、そんな気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ