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神を殺した世界にて  作者: ほてぽて林檎
第2部:その手はまだ繋がって
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戯れ〜トゥヴァ〜

 


 朝。教官の声が鳴り響く中で、私はさっさと起きて支度を済ませた。



 顔を洗っても頭が冴えないまま、自室の前に戻ってくる。


 ……で、なぜか私は、セラの部屋の前で突っ立っていた。


(あんたを……いや、セラを待ってるとか、そんなんじゃないから。たまたまよ、たまたま)


 隣の部屋の中を覗き込むセラが「あれ?」とつぶやく。

 その背中に、思わず声をかけた。


「お、おはよう!」


 変に詰まる。ああもう、何で緊張してんのよ、私!


「……食堂で、水、飲みに行こ……!」


 強気に言おうとしたのに、途中で自分でもびっくりするくらい声が弱くなる。


 やっぱりこういうの、苦手。距離の詰め方って難しい。




「いいよ、ちょうど喉も乾いてたところだし。一緒に行こっか?」



 セラのその一言に、心の中がふわっとなる。



(……うん、よかった)


「あ、うん!」


 自分でも顔が明るくなったのが分かる。

 思わず口元が緩んでしまった。



 二人並んで歩きながら、ふと視界の端にセラの手が見えた。





(……手、つなぐとか、そんなんじゃないけど)




 でも気になる。ちょっとだけ気になる。



 目で追ってしまう。前に出すとそっちを見て、後ろに引っ込めるとまたそっちを見てしまう。




(ああもう、何やってんのよ、私……)




 次の瞬間。



「わっ!」


「きゃぁっ!!」



 顔の前に突然手を突き出されて、私は思わず声をあげてしまった。



 両手で顔を覆って、目をつむる。



 心臓が跳ねたみたいにドキドキしてる。

 けどそれを悟られたくなくて、思いきり睨んでやる。




「な、何をするのよ!? びっくりしたじゃない!!」



 私の怒りなんてどこ吹く風、セラは楽しそうに小走りしていく。




「ほらほら、人が集まってるかもしれないから急がないと~」



 ……はあ!? 何よそれ!


「ちょっと待ちなさいよ! 私が誘ってあげたでしょ!もぁーーーっ!!」


 もう怒ってるんだか嬉しいんだか、自分でもよく分かんなくなる。

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