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神を殺した世界にて  作者: ほてぽて林檎
第2部:その手はまだ繋がって
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戯れ

 


 グッと何かを堪えたような表情をしたあと、トゥヴァが口を開いた。



「しょ、食堂で……水、飲みに行こ……!」



 最初は強気だったその言葉尻が、しだいにしぼんでいく。



「いいよ、ちょうど喉も乾いてたし。行こっか?」



 その言葉を聞いた瞬間、トゥヴァの顔がぎこちなくも、パァっと明るくなった。




「う、うんっ!」


 二人並んで、通路を歩き出す。




(なんだろう……友達作るの下手なのかな。でも、それを言ったら私も……)



 苦笑いしながら、思わず心の中でセリスの顔を思い浮かべる。


(セリスみたいな距離感、真似しようとしたら引かれるよね。あれはあの子だから許されるというか、自然というか……)



 ふと、視線を感じる。




 トゥヴァが、じっと私の手を見ていた。




(え、手?)





 試しに手を前に出してみる。視線は前へ。




 今度は後ろに下げると……やっぱり、視線が手の方へ。





(……え、これって……)





 まさかとは思いながらも、私はその手を――



「わっ!」と声をあげながら、勢いよく彼女の顔の前に差し出した。


「きゃあっ!!」



 トゥヴァは両手を顔の前に上げて、思わず目をつむる。

 そのあと、睨みつけるような視線で私を見た。



「な、何をするのよ!? びっくりしたじゃない!!」



 声を張りながら怒るトゥヴァ。



 私は彼女の抗議もお構いなしに、いたずらっぽく笑いながら小走りに先を行く。



「ほらほら、人が集まりはじめてるかもしれないし、急がないとー」


「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! 私が誘ってあげたんだからっ! もぁーーーっ!!」



 プンプンと怒るその様子すら、どこか照れ隠しのようで、ふたりの足音が、フロアに軽やかに響いていた。

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