早朝の号令
翌朝。
朝の四時半。
「ピンポーン」という耳にやさしい効果音の直後――
スピーカーから叩きつけるような、聞き覚えのある声が響いた。
『起床の時間だ。直ちに準備に取り掛かれ。三十分後にフロア南端の鉄扉を抜けた先へ集まれ。私用はその間に済ませろ。遅れた者には罰則を与える。以上。』
カティナ教官の、寝起きにはちょっとキツすぎるアナウンス。
「……うっざ」
思わず漏れる声。
私はまぶたをこすりながら、重たい体を引きずるようにしてベッドを降りた。
着替えなんてまだ頭が回らない。
とりあえず部屋を出て、薄暗い通路へ。
壁際の照明がぼんやりと足元を照らし、足音とざわめきが交錯する。
洗面台のあるトイレは、すでに人でごった返していた。
「はやくしてよ」
「うそ、まだなの?」
「あぁ〜もう時間ないってば」
耳に飛び込んでくる、せわしない声の波。
何人いるんだろう、ここに集められた“私たち”は。
ようやく洗面台が空いたところで、顔をジャバジャバと洗う。
冷たい水が目を覚ましてくれる。
あくびを一つ、大きくして、深く息を吐いた。
通路を戻りながら、ふと目でセリスの姿を探す。
(いない……)
隣の部屋をそっと覗いてみるけれど、空っぽ。
「……あれ?」
もしかしてもう行った? それともまだ?
そんなことを考えていたその時。
そんなことを考えていたその時。
「お、おはよう!」
背後から、やや詰まったような声が聞こえた。
振り返ると、そこには――
小柄な体で、ピンと背筋を伸ばしたトゥヴァが立っていた。
目が合った瞬間、彼女はそっぽを向きながらも、少しだけ頬を紅くしていた。




