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逃亡者イツキ

イツキの逃亡劇です。

―――ループス城下町


「待てッ!」


小型犬である柴犬を大型犬であるシベリアンハスキーが追いかけているともなれば、普段の住民達ならすぐに止めるであろう状況が繰り広げられていた。


「誰が待つか……っ!」


街中では大型犬が小型犬や中型犬を恣意的に追いかけ回す行為は法で禁じられている。獣化状態で際限なく走り回るのは危険だからだ。


「何アレ……、カルラ副団長と……?」


カルラの騎士団副団長の制服と、イツキの着流しが彼らの所属を表しているせいで、より一層住民達は困惑の目でその追走劇を傍観する。


イツキは器用に大太刀を背負いながら走り続ける。街ゆく人を驚かせながら、カルラが追いつかぬように道に障害物を落とし、人々が怒声や悲鳴を上げながら混乱の渦を広めていく。


「クソッ、民間人にも被害が出かねない……!」


カルラは一段と走る速度を上げた。瞬間的な身体強化術である。後ろの気配を察してか、イツキもまた使用し、彼らの距離は一向に縮まらない。


「危ない!」


イツキに気づかなかった八百屋の店主が、持っていた山積みの木箱をひっくり返す。途端にリンゴやレモンがゴロゴロと転がる。

カルラは一瞬の葛藤の後、尚もイツキを追いかける。そして、飛び出したイツキの目の前に馬車が走ってきた。その黒馬に轢かれそうになるイツキ。


「……ッ!」


一瞬恐怖と驚きに目を見開いたものの、ぶつかる衝撃とそれらを和らげる為か、低い姿勢を取る。


「マズい……ッ!」


カルラが叫んだと同時にその馬車の馬は人の姿へと戻った。そして、目を閉じて怯えているイツキを背中の大太刀ごとひょいと持ち上げた。そして、同じく人の姿に戻ったカルラが走ってくるのを見て、フゥとため息をつく。


「カルラ……さんでしたか?街中でこのようなことはお控えください。甚大な被害を出していますよ」


カルラは一瞬その馬の獣人が誰だかわからなかった。すると、彼は髪を分け直し、メガネをかけた。


「……ナトです。ご存じないのも無理はないかと。城内勤務であり、城外では獣化形態での送迎がメインですので」


ハッと思い出すカルラ。先程の喧騒と追走劇で鼻が一時的に麻痺していた為、すぐにナトを認識できなかった。


「こちらの方は?先程から随分と暴れておりますが」


ナトの腕に噛みつこうとしたり、足で必死に蹴っているものの、ナトは全てを受け流している。


「あ、あぁ。彼は先程城の訓練場に侵入した不審者です」


ナトは顔を顰めた。そしてコートの内ポケットから袋を出すと、イツキの鼻にかざす。すると、一瞬でイツキが意識を失った。


「強力な睡眠薬です……、健康に害は無いのですが多用は禁物です。私はこの場の収拾を図りますので、彼を城へと連行してください」


カルラはテキパキと仕事をこなすナトを驚いて見つめていた。仏頂面で何を考えているのかわからない怖い存在だと思っていた彼が、すぐさま事態の収拾に努めている。


「……大丈夫ですか、役割を変わりますか?」


カルラが微動だにしないため、ナトは声をかけた。心配故だが、カルラにとっては常に不機嫌そうな顔をした謎の多い人物である為、ビクッと怯える。


「申し訳ありません、感情表現が下手なのです」


申し訳なさそうな表情をうっすらと浮かべると、カルラに視線を合わせる。


「あなたはあなたの任務を。ここは私がどうにかします」


もう一度ハッキリと言われ、ようやく我に帰るカルラ。

「わかりました、ここをよろしくお願いします」


カルラは獣化したまま眠るイツキを抱き抱えながら小走りで城へと戻るのだった。

ナトさんは基本的に冷静です。クールですね。


面白い、続きが読みたいと思った方は評価、ブックマークetcよろしくお願いします。

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