第922話 占いの誤差①
エルダータートルたちがジャイアントレンゲを食べる裏に何かがいると言うアレンに、暗黒大神官は両手を胸の前で握りしめて感動して声を荒げた。
「素晴らしいですわ、アレンさん!!」
「やっぱりすげえな。後は亀の陰にいる奴をぶっ飛ばせばいいんだろ?」
「裏に何かがいると言うが、そんなもの探したがどこにもいなかったではないのか」
アレンはエルダータートルたちとの戦いの中で、上空からクワトロたちを飛行させて何かないのか調べていたが、何も発見できていない。
「たしかにな。ただ上空から見ても海面の葉が邪魔だし、海水が透明度が高くないからな。召喚獣たちを潜らせても酸の海のせいでは移動距離に制限があるから十分に探せていないぞ」
(酸の海でゲンブやフカヒレたちを泳がせても、すぐに体力尽きてしまうし)
「だから俺に薬をもらってこさせたのか!!」
「そういうことだ」
「だがそれもお前の仮説に過ぎないだろう」
「仮説から確証を得るには段階を踏まないとな。資料も薬も手に入ったからな。実証に移るぞ」
「お? 出かけるんだな。俺の用意した薬を使うのか?」
「そのつもりだから、タジンもこい。マリアたちはすまないが広げてしまった資料を片付けておいてくれ。後で返さないといけないからな」
「おう!!」
『お片付けするデス!!』
「やれやれ。その実証のために町長や村長たち全員集めさせたのか」
「なんだ。ついてくるのか」
「当然だろ。お前の勝手な仮説が誤っていたら迷惑かけたと謝るのは私なんだからな」
暗黒騎士の立場で村長たちを全員集めたのだとイルゼは言う。
(予想が外れて間違っていたら叩きのめされそうだな。それもこれも町に行けば分かること。ただ、それだけのこと)
アレンがイルゼと知り合って2ヶ月も経っていない。
イルゼにはイルゼの生きてきた常識もあり、暗黒騎士としての立場もあるだろう。
守護番や冒険者ギルドでも対応できない亜神級以上の魔獣を狩ることを務めとする暗黒騎士にとって、今回のような対応方法は常識の範囲外なのだろう。
だが、イルゼはアレンに疑問を投げかけて文句を言うが止めもしないし、不平不満の顔とは裏腹に協力もしてくれる。
ここまでのブライウス大陸やコルブラン大陸のアレンの発想や判断力で解決したことを理解しているし、雲をつかむような話だが解決の可能性を捨てることはしないようだ。
アレンはこれから予定のために立ち上がった。
「よし、転移するぞ」
アレンたち3人は手を振る暗黒大神官の目の前で、事前に巣を設置したランマイルという町の村長宅の控室に転移した。
ランマイルの町は10日ほど前に訪れたミウタベ村など全10の村を取りまとめている村に比べて広さも人口も大きな町だ。
年に数回、ミウタベ村などが移動する際、ランマイルの町が10の村ごと移動する。
移動の時期とジャイアントレンゲの選定は1人の町長と10人の村長が一同に集まって占いによって決めている。
村長宅の広間に設置した「巣」に転移するなり、すぐに声がかかる。
「おお、暗黒騎士様……。儂はこの町の村長のペグラミーと申しますのじゃ。儂らを救うため、このような町にお越しいただき感謝しますじゃ」
(仮説を実証する広間で待ってくれていたのか)
ここは村長宅で普段使っていない、アレンの推察を実証するための空き部屋だ。
事前に確認して、鳥Aの召喚獣に巣を設置してもらっていた。
本日昼過ぎに来ると聞いて、村長が使用人か世話係りの村人2人と普段使っていない空き部屋で待っていた。
【名 前】ペグラミー
【年 齢】253
【種 族】魔族
【職 業】占星術匠
【体 力】3800+7200
【魔 力】6500+14400+4000(魔法具)
【攻撃力】3200+7200
【耐久力】3100+14400+3000(武具)
【素早さ】4500+14400
【知 力】6800+14400+6000(武具)
【幸 運】8000+14400+30000(魔法具)
【攻撃属性】無
【耐久属性】無
※星4つのエクストラモード
(村長と違って町長はエクストラモードだな。っていうか、もう準備万端か)
200歳程度が寿命な魔族にとって、町長はまだ生きているのが不思議なくらいかなり高齢だ。
立ち上がることのできないのか、町長は座布団の上で手先がずっと震えており、腰は曲がり、目は完全に閉じている。
なお、ランマイルの町は外の町並みも建物内の様式もミウタベ村と似ており、移動可能なテント形式となっている。
(これから結構なお願いするけど大丈夫かな。それにしても全身色とりどりの石ころで着飾っているね。これで幸運が3万も上昇する効果があるのか)
「来ていただいて申し訳ありませぬ。すぐに側で休んでいる村長たちを連れてくるのじゃ。ほれ、すぐに行かぬか!」
「町長宅で働く小間使いたちが村長たちを呼びに行ってくる。
それから10分もしないうちに、小間使いたちに手を添えて歩いてやってきた150歳を超える老婆たちは、各村から集まってもらった村長たちだ。
10人の中には10日ほど前に訪れたミウタベ村の村長もいる。
「……お忙しい中、お集まりいただきありがとうございます」
「なんのなんの」
「5日も待ったのじゃ」
「喉が渇いたからお茶が欲しいのじゃ」
モゴモゴと言う村長に構わず、アレンは話を続ける。
「今日は亀の魔獣に困る皆様の暮らしを良くするために、これから場所を指定しますので場所を指定して占ってもらいます」
「はて? 引っ越しは再来月の予定じゃないのかの?」
イルゼが最も説明したはずのミウタベ村の村長がアレンの言葉が理解できないと首を傾げる。
「はい、そのとおりです。この方法で皆さんにとって大事な葉を荒らす『真の敵』を探したいと考えております」
アレンの言葉に座布団の上で小さく震えながら座る町長が僅かに口を開いた。
「皆の衆。暗黒騎士様が災いを断つといってくださっておる。協力しようではないか」
(町長が理解早くて助かる)
「そうじゃ。これで禍根を断つのじゃ」
「暗黒騎士様に頼られるなど、長生きするものじゃ」
「孫に今度自慢するのじゃ」
半信半疑の町長は助かる人がいるならと村長たちに協力を呼び掛ける。
これまで長い年月の中でエルダータートルに襲われたり、ジャイアントレンゲが食べられて村ごと海に沈んで多くの人々が亡くなったと暗黒大神官に聞いた。
必死に魔獣から身を守り、時には自警の町や村の若い衆や冒険者ギルドへの依頼しながら町を運営してきたようだ。
(暗黒大神官から見せてもらった地図だと200年くらい前から葉の数が2分の1に減っているからな。首長として人々を先導する皆にとって思いは俺たちもよりも重いだろう)
「では、もう一度言います。敵はどうやらかなりの凶悪で力をもっています。そんな敵が1人の町長と10人の村長の占いの結果、歪めていると考えられます」
「……ふむふむ。占いに歪みの」
町長が深く頷いている。
「ですので、明日、引っ越しをする場所を占い、その歪みがどこか特定する作業をしてもらいます」
「儂らの占い結果で歪みが一目で分かると言うのかの?」
「はい、そのとおりです。場所をこれから無数に指定しますので、移動先として安全かどうか占ってください。メルスは俺と一緒に地図の上に、移動しても良い人数分『白の石』を、移動しては駄目な数の分『黒の石』を置いて行く。お前は黒の石を置いてくれ」
『ああ、分かった。それくらいなら覚えられるぞ』
「皆にも占いの誤差である歪みを見せるためだ」
アレンの言葉にメルスは指示に従い、イルゼとタジンもこれから何をするのか概ね、理解できたようだ。
(テミさんが俺を占えなかったことを思い出すな。村長の占い結果に誤差があった時に気付いた俺エライ。まだ仮説だけど)
アレンは人間界や神界にいたころ、アルバハル獣王国の獣王相談役のテミの占いを見てきた。
S級ダンジョンを挑戦する前日にドゴラや他の仲間と違い、アレンが占えないことにテミは疑問に思っていた。
神界の原獣の園では、日のカケラや月のカケラの場所を占うことに苦労していることを覚えている。
過去を思い出しつつ、床に広げた地図の上にアレンは立って語り掛ける。
「まずはどのあたりに引っ越すか決めたいと思います。現在、102の町、それに従う1006の村があります」
そう言ってアレンは、魔導書から筒状に丸めていた、メルスと霊系統の召喚獣が町と村の最新の位置を書き込んだ巨大地図を広げた。
「おいおい、町と村合わせて1000回以上も占わせるのか?」
「いや、イルゼ。流石にそれでは効率が悪い。どうやら、魔獣は多くても1日1~2か所しか襲ってこない。だから効率良く絞るんだよ」
イルゼの疑問を使って町長や村長に聞こえるようにアレンが説明する。
「大陸に全て葉っぱがあると仮定して、まずは葉っぱがある西側と東側のどちらに引っ越せばよいか占ってください」
ジャイアントレンゲは現在大陸の西側のみ海面上に浮いており、大陸の東側は水中に沈んでいる。
「海の底にあるかなど気にせず占えば良いのじゃな」
「そのとおりです。一緒に葉っぱを食べる諸悪の権化を倒しましょう!」
「よし、皆のもの聞いたな。地図を囲むぞ」
町長の掛け声に村長たちがワラワラと巨大な地図を囲んでいく。
移動に合わせて、占いに使用する小さな木のテーブルを町長や村長の隣に置いていく。
「では大陸の東半分の葉に移動すべきか。占ってください!!」
(まずは住めるはずのない大陸東を占うぞ)
「……」
「え? どうぞ。占ってください」
「……」
アレンの指示が聞こえていないのか、町長も村長も目を瞑って黙ってしまった。
「えっと、どうしたのでしょうか……」
「きええええええええい!!」
アレンの言葉など聞こえないと言わんばかりに、町長はおもむろに腰に下げていた小袋から色とりどりの石を片手に握り締めた。
テントが震えるほどの大声を上げたかと思ったら腰が曲がり、小刻みに震えていた町長の目がカッと開く。
バチバチッ
骨と皮だけになった手で石ころを握り締めると爆ぜるように魔力が練り上げられていく。
「どおおおごううりゃあああああああああああ!!」
「え? な、なんだよ!? 何が起きてんだよ!!」
あまりの町長の声にタジンが思わず両耳を両手で押さえつけるのであった。
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最近何故か誤字脱字修正が0になった(少し増えた)
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〇暗黒界の地図
カクヨム⇒https://kakuyomu.jp/users/hamuo_ham/news/11054822663618798406
〇小説家になろうとカクヨムは同日公開ですが、有料カクヨムサポートは数話先行公開中です
サポーターとワチャワチャしています
922話⇒https://kakuyomu.jp/users/hamuo_ham/news/11054822665161240224
【14章の投稿話の修正点】
⑤魔獣「雷光蟲ルチオラス」の名前明記⇒907話修正済
⑥スキル経験値微修正⇒887話修正済
⑦ハンネスがプリニッタからコケトリスを引き継いだ話追加⇒908話修正済
・コケトリスをキングコケトリスに修正
※番号ふられていないのは修正予定





