第920話 葉っぱを喰らう魔獣
占星術師の才能を持つ村長が、魔獣がすぐに攻めてくると言う。
(クワトロ。万里眼で魔獣が発見できるか?)
『申し訳ありません。葉の下にいるのか、まだ接近していないのか、こちらからは確認できません』
アレンたちのいるジャイアントレンゲの上空を飛ぶクワトロに対して共有越しに指示を出したが、魔獣の陰も形も発見できない。
「魔獣はどちらから来るのだ?」
「へ? え? 暗黒騎士様、よろしいので……」
「もちろんだ。そのために我らは来たのだからな。襲ってくる場所を教えてくれ。我らで討伐しよう」
「この感じは葉の東からエルダータートル共が上陸してくるのじゃ!!」
(魔獣の種類まで分かるのか)
クワトロを使っても影も形も分からない魔獣の在処を村長は占いだけで言い当てているようだ。
「それでは失礼します。イルゼ、タジン行くぞ!!」
「分かった!!」
「おう! 魔獣を狩ればいいんだな!!」
話に全くついていけないタジンも出番だとすぐに立ち上がってアレンの後を追おうとする。
「村の者もすぐに向かわせますのじゃ!!」
「お願いします」
背中越しに村長の叫び声が聞こえ、振り返ることもなくアレンは返事した。
アレンは2人を引き連れ、村長のテントのような住宅から飛び出ていく。
何キロメートルも進まぬうちに海に浮くジャイアントレンゲの東端までやってきた。
「ここか! って、何もないぞ!!」
村長の言われた場所まで駆けてきたが、視界の先まで海が続き空を見てもなにもない。
「いや、既に近くまで接近している。下だ!!」
「あ? 下だって!? うわあああ!!」
グパッ
タジンの左右の葉っぱが下から何かが突き破ってくる。
巨大な何かが葉っぱの下から1メートル以上の分厚い葉っぱを裂き、そのままタジンごと食べてしまおうとしていることが分かった。
「むん!!」
「ぐえ!?」
「無事か? タジン、礼はいいぞ」
イルゼはためらうこともなく、タジンの腹に回し蹴りを決めて、寸前で閉じようとした口から脱出させた。
『アアア……』
水中から明らかに亀の見た目をした頭部が、敵意も感情を捉えられないおぼろげに嘆く口の次に突き出して現れた。
葉っぱを焦点の定まらない目がこちらを静かに見つめる。
「敵は一体ではないようだな」
『アアア……』
『アウア……』
『アウウ……』
無数に葉っぱを食い破り、大きさは違うものの亀の頭が葉っぱの下から姿を見せる。
「亀の魔獣か。こいつらが食い荒らすから葉っぱが数を減らしているのか。だが……。雑魚だな」
アレンの行動を先回りして、クワトロが10体の亀の魔獣を鑑定していく。
(魔獣は3種類か。Cランクが6体、Bランクが3体、Aランクが1体か)
【名 前】なし
【年 齢】18
【種 族】エルダータートル
【体 力】300
【魔 力】260
【攻撃力】300
【耐久力】520
【素早さ】200
【知 力】280
【幸 運】300
【攻撃属性】水属性
【耐久属性】水属性、酸耐性(弱)、物理耐性(弱)
【名 前】なし
【年 齢】55
【種 族】ビックエルダータートル
【体 力】1200
【魔 力】1100
【攻撃力】1300
【耐久力】2000
【素早さ】1200
【知 力】1300
【幸 運】1700
【攻撃属性】水属性
【耐久属性】水属性、酸耐性(中)、物理耐性(中)
【名 前】エンリケ
【年 齢】180
【種 族】ヒュージエルダータートル
【体 力】5500
【魔 力】4500
【攻撃力】6000
【耐久力】8000
【素早さ】5500
【知 力】5000
【幸 運】6800
【攻撃属性】水属性、体力自然回復
【耐久属性】水属性、酸耐性(中)、物理耐性(強)
ザンッ
アレンは自らの剣で、水中から5メートル以上伸ばした首に向かって飛び上がると、Aランクのヒュージエルダータートルの首を切り落とした。
「俺も行くぜ。って、おら!!」
タジンが拳に着けた爪でBランクの魔獣のビックエルダータートルを容易く切り裂く。
イルゼも容易く葉っぱを突き破って姿を現した魔獣たちを切り裂いていく。
CランクからAランクの魔獣だとアレンたちの相手ではなかった。
倒したエルダータートルたちがジャイアントレンゲに引っかかって、プカプカと甲羅の部分が浮いている。
「はぁはぁ、も、もう戦いが終わってしたっただよ」
「はぁはぁ、流石、暗黒騎士様たちだべ」
何分もしないうちに10人の村の若い者たちが手に武器をとってやってきた。
(剣豪に弓聖と……。村の中で若くて戦闘に長けた人たちがやってきたな)
混血人を除く全ての者たちに才能のある世界で、星2つや星3つもそこそこいる世界だ。
戦闘関係以外の才能も半数ほどいるようだが、それでもこの村には200人から300人ほどの魔族がいるのでそれなりの戦力だ。
(葉っぱの上には100人以上の戦える者たちが武器を持ち、自衛しながら生活していると……。今回はAランクまでだが、もっと高いランクの魔獣が結構現れると危険か。まあ、それなら他の大陸同様に守護番や冒険者ギルドに依頼すればよいわけだし)
「……この程度の魔獣。この者たちでも十分に対処できたのではないのか?」
アレンが思っていたことをイルゼが敢えて聞こえるように耳元で口にする。
「たしかにそうだな。えっと、こちらの魔獣たちは皆さんにお渡しします」
「よ、よろしいので!!」
村人たちの視線が明らかに背後で絶命した魔獣たちに注がれるので、空気を読んでアレンが提案した。
「では、後で、この村名物の亀汁をご馳走するべ」
「お? それは旨いのか!!」
「もちろんだべ。葉っぱを食べた亀汁は万病に効くど。ぜひ食ってくれろ」
「おお!!」
「よし、俺らが葉の上に引っ張りだすから、おめえたちは人手を集めに行ってくれ。エルダータートルたちを10体も暗黒騎士様たちが倒してくれたぞって言うんだべよ」
「おうだべ! ありったけ集めてくるど」
村人たちは手分けして作業に当たるようだ。
魔獣たちにすでに用意していた柄の長い専用の鉤のようなものを引っかけ数人係りで引っ張り出していく。
全長100メートルのAランクの魔獣でビックエルダータートルであっても、ジャイアントレンゲの上に引き上げても葉はかなり上部で引き裂かれたりしないようだ。
(なるほど。慣れたもんだな。この亀の魔獣はこの大陸の村人の貴重な食料源になっているのか。骨や甲羅はテントを作る柱などにも使われていたし建材にもなってそうだな)
10体の魔獣が村中を何十日も腹を満たすのに十分な食料になるようだ。
「それでどうするのだ? まさか全ての村人から情報を募るつもりか? それとも全ての魔獣を狩るのか? どっちにしても何年かかると思っているのだ?」
「……もう少し、この亀たちの情報をここで収集する。それが終わったら、もう一度大神殿に戻るぞ」
「そうか。お前がそうしたいなら止めはせぬ」
「ああ、イルゼにも協力してもらうぞ」
「私にできることならな」
アレンの考えのとおり、その日は村長を相手にあれこれ、ジャイアントレンゲを喰らうエルダータートルと呼ばれる魔獣について情報を収集した。
【エルダータートル種の魔獣ランクと甲羅の全長の長さ】
・C:エルダータートル(3メートル)
・B:ビックヒュージエルダータートル(10メートル)
・A:ヒュージエルダータートル(30メートル)
・S:ジャイアントエルダータートル(100メートル)
・亜神:スーパーエルダータートル(300メートル)
・神:ハイパーエルダータートル(1000メートル)
※亜神未満のエルダータートル種の額に海石ができる
※亜神以上のエルダータートル種の額に海鳴石ができる
※海石、海鳴石は魚神船の動力になる
※上位神は直近で誕生していない
村長の話では、アレンたちが倒したAランクからCランクのエルダータートル系統の魔獣は、さらにSランクから神級にまで至ることもあるらしい。
さらに、亜神級のスーパーエルダータートルになると額に海鳴石を宿すと言う。
人間界に帰るために必要な海鳴石の取得方法も分かった。
その日の晩、暗黒騎士を歓迎する宴まで開いてもらい、お代わりを何度もするタジンの横でアレンは村人からどんな細かい話も聞き丁寧に情報収集に努めた。
なお、エルダータートル系統の魔獣は主食がジャイアントレンゲなのだが、その胃袋の中で発酵してお酒になるらしい。
独特の臭みのある酒が振舞われたのだがイルゼだけが無言で表情を変えずに飲んだ。
よく飲めるなと後で味の感想を聞いたがえぐみが強くて美味しくはないらしい。
アレンたちは次の日、エクスワイヤ大陸の大神殿に戻った。
3人で大神殿の中に入っていく。
礼拝堂では、祈りに来たこの大陸の魔族や獣人たちに暗黒大神官が何やら語り掛けている。
暗黒大神官を呼んで、アレンたちと一緒に2階で作戦会議をすることにする。
「それでどうするのだ? お前にも難しいって分かったのではないのか。たしかに村で魔獣は増えているが、それは自然の摂理ではないのか。今は対処できる以上の亀の魔獣が溢れているのではないのか」
アレンたちが向かった先のジャイアントレンゲの葉の上の村では、魔獣と戦いながらも、普段の営みを送る生活があった。
「それは分からない。ただ、単純に魔獣を倒して終わりでは難しいのは分かったけどな」
暗黒大神官が状況を心配そうに見つめる中、イルゼの言葉にアレンは村で見てきた現状を話す。
魔獣が人の住処を襲うことが日常の世界で何ができるのか問いたいようだ。
「とりあえず、できること、まだ分からないことをはっきりさせて行こうか」
「まだだと。何がまだ分からないのだ?」
「それを探すんだ。暗黒大神官ドリアーヌ様、地図は5年おきに更新されるのですよね」
「そ、そうです!!」
急に話しかけられて暗黒大神官はびっくりする。
「過去の地図も見てみたいです」
「過去とはどれくらいでしょうか?」
「全てです」
「全て!? はわわ!! あ、あの、1000年分の地図が保管庫に眠っていますが……」
「では、この会議室にお出しください」
「……神兵たちと共にこの会議室に準備します」
アレンはエクスワイヤ大陸でジャイアントレンゲが減少する問題を徹底的に調査に乗り出すのであった。
評価ブックマークもっと欲しい(もっともっとだ!!)
最近何故か誤字脱字修正が0になった(少し増えた)
誤字脱字修正を使って、メッセージを残すのはお控えください(切れそう)
〇暗黒界の地図
カクヨム⇒https://kakuyomu.jp/users/hamuo_ham/news/11054822663618798406
〇小説家になろうとカクヨムは同日公開ですが、有料カクヨムサポートは数話先行公開中です
サポーターとワチャワチャしています
921話⇒https://kakuyomu.jp/users/hamuo_ham/news/11054822664847845825
【14章の投稿話の修正点】
・コケトリスをキングコケトリスに修正
・ハンネスがプリニッタからコケトリスを引き継いだ話を加える
・暗黒騎士ムラルガンを倒した魔獣の名前登場させる
※未修正のみ掲載に変更





