第887話 ヘルビースト戦
アレンがタジンという名の魔神の見た目をした混血人に対して渾身の一撃を後頭部に与えた。
倒れたところをイルゼにアダマンタイトの鎖で縛り上げたのだが、ボロボロの布切れの中で何かが蠢いている。
ボコボコッ
「なんだ? お前、どうしたというのだ」
イルゼは蛇か何かが蠢く服を触れようとすると、それ以上の変化が少年の全身に現れ始めた。
『俺たちの隠れ家を荒らしてんじゃねえぞ!!』
この状況でアレンは岩穴の中に体が前のめりで入っていた。
(中は奥行きがないな。お? この石はなんだ。不自然に置いてあるぞ。ん?)
アレンは大岩の中に魔王軍が転移の魔導具か何かを設置しているのだろうという予想を優先した結果なのだが、イルゼとタジンのやり取りへの反応が遅れてしまう。
ベキベキッ
『グオオオオオオオオオオ!!』
厚い雲が覆っているため薄暗い中、真っ赤だが朧気な満月が世界を照らす。
タジンのぼろ雑巾のような服の背中側を引き裂き、蝙蝠のような飛膜の翼が現われる。
腕も足も皮膚の下で筋肉が盛り上がり、漆黒の獣のように毛深くなっていく。
顔も既に魔神の顔から、犬かオオカミのように鼻口部がメキメキと伸びていく。
全長3メートルほどまでにまで大きくなったタジンを見て、イルゼは叫ぶ。
「何だ? 狼男か? やはり化け物か!! 真・居合切!!」
タジンの目の前で腰に差した剣をスキル「真居合切」を使い、高速の斬撃をお見舞いしようとする。
ザッ
タジンの肉体はイルゼのスキル「真居合切」によって僅かに裂けつつも、翼を広げ構わず空へと上昇していく。
さらにミチミチと裂かれた肉体はすごい勢いで回復し、毛皮で覆ってしまった。
「くっ、倒せないか!!」
イルゼは一呼吸で気持ちを落ち着かせ、グルっと空を回って方向を調整してからこちらに向かってくるタジンに向かって剣を合わせる。
『グオオオオ!!』
凶悪な両手の爪を突き出し、引き裂かんとばかりにイルゼに突っ込んでいく。
「はあああ! 真・渾身斬!!」
混血人の両手の爪がイルゼに当たる前の刹那のタイミングでイルゼはスキル「真渾身斬」タジンの首元目掛けて容赦のない急所への一撃だった。
ギンッ
「何だと!? がはっ!!」
本来であれば首が飛ぶほどの一撃を与えたつもりであったようだ。
だが、どれほどの耐久力があるのか剣は厚い獣のような毛皮の皮膚を裂くことはできなかった。
アダマンタイトの鎧にタジンの両手の爪の一撃を喰らい、何度もバウンドしながら吹き飛ばされてしまう。
体当たりを受けた衝撃で剣をどこかへと飛んで行ってしまった。
『グオオオオオオ!!』
「くそ!! ならば、神技発……」
吠えるタジンに武器を失い素手になってしまったイルゼはそれでも立ち上がり、正面に向き合う。
再度、翼を広げたタジンは一度高く飛び上がった後イルゼに向かって真っすぐ突っ込んできた。
イルゼは息を整え、全身の魔力を巡らせ、打開しようとした時だ。
横から横から体勢を倒してしまいそうなほどの風圧を感じた。
「本当に魔神だな。鑑定結果は半魔半獣で才能はヘルビーストなのだが魔神じゃないのか? 見た目と何か違うのか」
アレンが、イルゼと変貌を遂げたタジンの間に一瞬で立っている。
「な、馬鹿な!?」
「イルゼの力じゃ手に余るようだからな。俺が何とかするよ」
「おい、ギルド長相手とは違うぞ! 避ける……」
イルゼはアレンに対して最後まで言い切れない。
既に上空から加速して襲い掛かるタジンの拳は割って入ってきたアレンに変えていた。
顔面目掛けて変貌したタジンの拳が吸い込まれるようにぶち当たる。
ゴシャッ
『ぐあ!?』
「あ、アレン……」
殴りかかったタジンの拳が音を当てて砕け、青い血が辺りに噴き出した。
アレンの耐久力はタジンの攻撃を受けるには至らないほどに達している。
「クワトロ、鑑定してくれ。能力の変化を確認したい」
『承りましたわ』
上空で旋回するクワトロに対してタジンに改めて鑑定するように指示する。
【名 前】タジン
【年 齢】13
【種 族】魔神
【職 業】ヘルビースト
【体 力】59000
【魔 力】59000
【攻撃力】62000
【耐久力】62000
【素早さ】62000
【知 力】56000
【幸 運】56000
【攻撃属性】不死、暗黒、体力超回復
【耐久属性】不死、暗黒
「全体のステータスが3万増えて不死と暗黒の属性持ちで体力も超回復だと? 超絶優秀だな。亜神ほどではないが上位魔神には達しているし。ヘルビーストとは姿を変える能力か。ビーストモードとは違うのだな。蝙蝠男になるのか」
殺意を込めて相対するタジンに対してアレンは鑑定結果を分析する。
『グオオオ!!』
砕けた拳は体力超回復で瞬く間に回復し、至近距離からアレンに対して、両手の爪や拳で襲い掛かる。
だが、アレンがどれほど固いのか、殴った拳は砕け、引き裂こうとした爪は折れてしまった。
【名 前】アレン
【年 齢】17
【職 業】召喚士
【レベル】250
【体 力】35515+190000
【魔 力】56780+200000
【霊 力】256780
【攻撃力】19876+200000
【耐久力】19876+190000
【素早さ】36919+203600
【知 力】56790+213600
【幸 運】36919+190000
【加 護】物理攻撃力(強)、因果律調整(中)、生命循環、不死耐性、体力超回復、魔力超回復、回避率上昇(強)、心頭滅却(状態異常無効)、飛翔
【スキル】召喚〈9〉、生成〈9〉、合成〈9〉、強化〈9〉、覚醒〈9〉、成長〈9〉、拡張〈8〉、創生⑤〈7〉、削除、共有、収納、高速召喚、等価交換、指揮化、王化、目録、剣術〈5〉、剣神術〈1〉、瞑想〈1〉、投擲〈3〉
【経験値】約3京/無量大数
・スキルレベル
【召 喚】9
【生 成】9
【合 成】9
【強 化】9
【覚 醒】9
【成 長】9
【創生⑤】7
・スキル経験値
【生 成】約780億/1000億
【合 成】約630億/1000億
【強 化】約650億/1000億
【覚 醒】約520億/1000億
【成 長】約600億/1000億
【創生⑤】約20億/100億
・ホルダー(全90枚中23枚)の構成及び召喚可能種類
【 虫 】計00枚:封(各0枚)
【 獣 】計01枚:S1枚
【 鳥 】計07枚:S1枚、A3枚、D3枚
【 草 】計01枚:S1枚
【 石 】計00枚:封
【 魚 】計01枚:S1枚
【 霊 】計01枚:S1枚
【 竜 】計01枚:S1枚
【天 使】計06枚:S-BCDEF封封(各1枚)
【 神 】計05枚:SABCD封封封封(各1枚)
※創生スキル上げのためにホルダーを空けている
※天使AのメルスがSランクとなって不在
※神技削除、創生、目録は神技相当
・装備一覧
【武 器】アレンの剣:攻撃力50000、知力30000、物理耐性(極大)、スキル発動速度100%増、クリティカル率100%増、無限修復
【防具①】甲竜の鎧:耐久力8000、物理攻撃ダメージ半減
【防具②】闇竜のマント:耐久力4000、魔法攻撃ダメージ半減
【指輪①】魔力5000、魔力5000
【指輪②】魔力5000、魔力5000
【腕輪①】魔力秒間1%回復、クールタイム50%減、魔力5000
【腕輪②】魔力秒間1%回復、クールタイム50%減、魔力5000
【首 飾】魔力3000、魔力3000
【耳飾①】魔力2000、魔力2000
【耳飾②】魔力2000、魔力2000
【腰 帯】耐久力50000、暗黒属性耐性、ブレスダメージ半減、魔法ダメージ半減
【足輪①】体力5000、魔力5000
【足輪②】体力5000、魔力5000
【暗黒界の巣の場所3ヶ所(最小限)】
・暗黒神アマンテの大神殿
・獣神ブラキノの大神殿
・ブラキウス大陸発着場イシュバラ(冒険者ギルド前)
「なんて強さだ……。貴様こそ、化け物ではないのか」
タジンと戦ってみてアレンの強さが分かる。
アレンは創生スキルを上げ、成長スキルと合わせることによってステータスの増強を図ってきた。
特に天使系統と神系統の創生スキルが一巡で解放されるごとにそれぞれ、全ステータスがそれぞれ1万と2万ずつ増加していく。
結果、創生スキルが5巡目のレベル7に達したアレンは、全ステータスがホルダーの加護によって20万を超えてしまった。
だが、アレンは驚愕するイルゼに対して、自らが何もすごいとは思っていない。
(そうだな。容赦はできない。手段を選んでいたから俺は魔王軍に負けたんだ。そして何億って人が死んだんだ)
自らのこれまでの行動を戒めるように、左手で変貌を遂げたタジンの首を掴む。
たとえ元は少年であってもこんな狂暴な者をそのまま放置すると選択肢はなかった。
『がは!?』
アレンはタジンの首元を掴んで全長3メートルあるタジンを引きずり倒す。
だが、20万を超えるアレンの掴んだ片手を両手で、全力で引き離はなそうとするがビクともしない。
右手でゆっくりと魔導書から取り出したアレンの剣の柄を持つ。
そのまま感情を込めず、明らかに変貌を遂げた魔神の見た目をしたタジンに向かって剣を振り上げた。
「タジン!!」
今まさにアレンが剣を振り下ろそうとしたところ、背後から1人の女性の声が聞こえた。
「タジン?」
アレンが剣を止めて振り向いたところ、ヒツジの獣人の女性が、大穴がある方向から、アレンたちのところに涙目で駆けてくる。
「ぼ、冒険者の方々ですか? その子は私の子のタジンです。タジンは興奮すると見た目が少し変わる病気になりまして、……でも何の問題もない良い子なんです!!」
必死に変貌を遂げたタジンとアレンの間に入り、アレンの腕を掴んで剣を振り下ろさないように必死に食い下がる。
(いや、思いっきり殴られたけど……。ん? なんかたくさん出てきたな)
アレンはタジンの渾身の一撃を顔面に受け、結構な痛みを感じていた。
悲痛な声で叫ぶ女性の背後の岩穴からゾロゾロと人々が出てくる。
「騒ぎに聞きつけて岩穴の地面に出来た穴からでできたか。ここは混血人たちの集落だったか」
彼らの見た目から魔王軍ではないと判断したアレンは剣を魔導書に納めるのであった。





