5-4:猫と僕との関係 休耕田って書いてあったから大丈夫!
依城です。いつの間にか戦場みたいに荒れに荒れた現場で一人頑張っているOL(偽)の依城です。赤松さんはどっか行っちゃいましたし、他の人も援護に入ってくれるわけも無いしで、孤軍奮闘・八面六臂の大活躍を誰に応援されるわけでも無く延々とこなしております。
初回は苦戦しましたけどね。適切な距離で戦ったら別に何の問題も無いんですよ。前に出て朱天が暴れる。太刀を振り回して叩き砕く。たまに蹴り飛ばす。そして私は朱天の後ろから遠距離攻撃をバカスカ撃ちまくると。
さっきの電柱みたいな形が気に入ったので、それをどんどこ降らしていってます。並列起動で複数本同時発射の繰り返し、雨あられって感じですね。もちろん、近場に降らすと音やら土埃やらで私が大変な事になってしまうので、ちょっと離れたところを狙って撃っていく感じですね。
近接戦闘で犬擬きが朱天を抜くなんて不可能ですから気楽なものです。戦闘の様子が、どう見ても「犬VS鬼」って感じですもの。あとは適当な鳥と猿でも連れて来たらお話が一本作れそうです。
そんな感じにお気楽に魔術を展開しながら、私は少しだけ脳内反省会をしてみたり。これからは戦闘の開始時点から朱天に頼るようにしようかなと。なんか油断して死にかけるの、ここ最近だけで二回もあったし、しかも両方とも赤松さんに助けられるという、どうにもみっともない展開なわけで。
私も思ってはいるのですよ、ちょっとぐらいは先輩としての威厳とか、そういうのも必要じゃないのかなって?私に頼り甲斐があれば、今回みたいな緊急時でも連絡ぐらいはしてくれたと思うんですよね。どれだけ私が心配してたかって・・・
そんな事を考えているうちに、いつの間にやら犬達の撤退が始まっていたみたいです。後ろの方ばっかり狙い撃ちしてたんですけど、ターゲットがいなくなっちゃいました。機械的にどっかんどっかんしてただけだから気が付きませんでしたけど・・・たぶん、私がちょいちょい追い込まれる原因はこういうとこでしょうね。慢心、ダメ、絶対。
で、この後、私はどうすればいいんでしょうか?赤松さんは「ちょっと待ってて」って言ってましたけど。これって「撤退が始まるまで待ってて」なのか、それとも「自分が戻ってくるまで待ってて」という意味なのか?どっちなのでしょう?時間が無かったので聞きそびれてしまいました。
とりあえずは撤退していない犬がいると困るので、暇つぶしがてら哨戒でもしておきましょう。
朱天に先導させながらブラブラと辺りを散歩します。実は朱天を出してるだけでそれなりに魔力を消費しているので、ちょっとしんどかったり。もちろん、さっきまで大盤振る舞いでどんどこ撃ちまくっていたのもあるのですが。
まぁ、とは言え仕事ですので、ちゃんと見回りはしておきましょう。少しずつ前進していく感じで。
・・・・・・
・・・
テクテクテクテクと一人の散歩は続きます。でも、まぁ、もういいですかね?辺りに犬はいないみたいですし。どこを見ても散乱する犬らしき物の残骸と荒れ果てた大地が広がるのみって感じ。・・・やりすぎたかも知れません。これもうお米作れないんじゃあ・・・いや大丈夫!休耕田って資料に書いてありました!セーフです!!荒れ果てても大丈夫!もう作ってないから!大丈夫!私のせいじゃないし!!
危ない、危ない。もう少しで貴重な田園をダメにしてしまうところだったぜ!
さて、そうなるとやる事も気にするべき事も特に無い。しんどいし朱天も戻そう。ばいばい。
消える朱天を見て状況が落ち着いたと判断したのだろう、ここまで車で送ってくれた人が走って近寄ってきた。
「お疲れ様です。あの、お疲れの所を申し訳ないのですが、お知り合いという方が話をさせて欲しいとの事でして、少しお時間を頂いてもよろしいでしょうか?」
硬い。なぜこんなに硬いのか。もう少し普通に接してはくれないものだろうか?なんだか若干、傷つかないでもないよ?
・・・・・・
・・・
「すみません!また後日訪ねるように伝えておきますので!」
私の機嫌を損ねたと勘違いしたのだろう。係のおじさまは必至の様子で訪問者を帰す方向にシフトしようとしている。一体、人を何だと思っているのか。
「いえ、大丈夫ですよ。今からお話させて頂きましょう。時間はありますし」
そして、引っ張られるようにして連れて来られたのは、ちょっと意外な事に柏木さん。
「あら、こんにちは。行方不明だったと聞いてましたけど」
「すみません。協会の誰が味方か分からなかったっすから。でも依城さんは大丈夫だからって赤松さんが」
「へ?赤松さんと一緒にいたんですか?」
とりあえず、その場で柏木さんを質問攻めにしてみました。大怪我を負った赤松さんの治療をしてくれた事、潜伏先で白い犬に襲われた事、この場所に協会の人員が派遣される事を知って駆け付けた事(情報の入手方法は「勘弁してください」との事)等が判明。
赤松さんを助けてくれたのだから、少々の怪しいところは追及しないでいてあげましょう。ナイス柏木さん。今後はあらゆる分野で最大限の便宜を図ってあげましょう。
「なるほど。それで赤松さんは?」
「合流したんじゃないんっすか?」
あれ?
「・・・ちょっと探してきます」
なんとなく嫌な予感がする。そういえば、ちょっと様子がおかしかったような。
あまり得意では無いですけど、自身に強化魔術を施し走り出す。場所はさっき赤松さんが見ていた方向、最終的な目的地は白い犬の残骸を追えば分かるはず。
休耕田を突っ切り、山の方へと進み、山道を入って行く。
進めば進むほど白い犬の残骸の数も増えていく。そして走り続けた私が辿り着いたのは山の中腹にあった神社だった。神社と言っても、あるのは壊れた社とボロボロの鳥居だけ。実際のところは山の中の小さな広場という感じ。
そして、そこには空のペットボトルや小さなレジャーマットのような物が放置してあり、ほんの少し前まで誰かがいたような痕跡があった。
そう、既にそこには痕跡しか残っていなかった。
赤松さんも、そこにはいなかった。




