表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫と僕と知らない世界  作者: シマタロウ
第一部2章:猫と魔術師のお仕事

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

64/69

3-6:猫と汚染の拡大 おじさん、もう疲れたよ

「じゃあ、課長、私は先に帰りますね」


 依城が笑いながら帰っていった。最近のアイツは笑うどころか話す事さえ余り無かった。だから、実に喜ばしい。現場であった事の報告については・・・正直いまいちな感じだった。赤松氏が無事っぽいって事ぐらいかな、分かったのは。


 だが、それぐらいは別に構わないだろう。大事な部下が持ち直したんだ。それに勝るものはない。


 そう思っていたのは3時間ほど前の話だ。現地の関連団体から上がってきた報告を読みながら俺は頭を抱える事になった。


 今回の依城の出張の成果

 魔術回路強化薬(仮)の副作用により変化した元人間を100名以上殺害。

 現地にあった建屋も全て破壊。

 薬を飲んでも変化していなかった奴らも漏れなく全員重症。

 主犯だった安藤氏は無事確保、勿論こちらも重症・・・全身打撲のうえ、両足と右手の一部を切除されているそうだ。


 酷過ぎる状況だが、唯一良かったのは、そのおかげで安藤氏が素直にしゃべっている事か。

 しかしな、どう考えても送り出して数時間でこの被害の出し方はおかしいだろ?どう考えても、こうはならんだろ?

 そりゃ依城が異常に強いのは知ってたよ。自制心が無いのも知ってたよ。それにしても限度があると思うわけよ、俺としては。

 ・・・・・・・

 いや、まぁ、やってしまったものは仕方がない。前向きに考えよう。情報は揃ったんだ。考える事は山ほどある。だが、その前にちょっと休憩。

 深夜のオフィスビル。誰もいない事務所で一人コーヒーを飲んでほっと一息。


 辛くなってきた。なんでこんな仕事してるんだっけか。

 ・・・・・・

 ・・・

 それはそれとして、今回の件は分からない事だらけだ。生産者が死んで製法も不明のはずの薬の流行に始まり、普通の関連団体がいきなり武闘派に転身、謎のビル爆破事件に、真昼間からの大虐殺。

 ・・・・・・

 ・・・

 俺、この件が片付いたら引退してもいいよな?おじさん、もう疲れたよ。こんなのどうやって処理したらいいか分からねぇって。マジで有り得ねぇって、これ。

 ・・・・・・

 ・・・


 ひとしきりウジウジしてから状況整理と今後の動きを考える。依城には悪いが、今一番急いでやるべきは薬の流れの把握だ。まだ生産され続けて広まり続けているとしたらヤバい。


 というか、今でも安藤のとこの構成員の半分弱が行方不明ってのがまたヤバい。もし依城の魔の手から逃げ延びた奴らが、何処かで増産を始めたら目も当てられない。あの薬だが大して効果が無いわりに普及が進んでいるとこを見ると、多幸感とか依存性とかもあるんじゃねぇのかなって思ったり。案外そっち目当てで取引されてたりしてな。


 まぁ、細かい事はなんも分からんが、一先ずは良しとしよう。

 その辺りの事情は安藤氏の尋問の成果を期待するとして、俺は関東の組織にも薬が広まってないかの確認をしておくか・・・調査の名目は「激しい副作用がある疑いが」みたいなノリで問題ないだろ。

 サクサクッとメールで関連団体の皆様に連絡だけ投げておく。組織行動の基本、まずは軽いジャブから。

 あとは安藤氏に尋問しておいて欲しい内容を現地の担当者にメールで共有。漏れがあるといけないからな。念押しも大事ってわけよ。


 次いで気が重いけど本店への報告メールも書き書き。もう隠しても仕方ないので有りのままを綴る。ごめんなさい、ごめんさいって感じ。また極東支部がやってしまいましたよと。

 そして書き物が済むと時間はもう深夜。辛いわー。正直、辛いわー。頼むから事務作業が出来る奴を増やしてくれー。


 下らん愚痴はともかくとして、とりあえず明日以降の仕事の種は撒いた。これでどんな情報が返ってくるかだが・・・たとえ情報が返って来なかったとしても、薬の製造拠点が何処かに新しく作られている事は間違いないだろう。まず、そこを潰すのはマスト。

 そして新しい製造拠点が稼働しているという事は、薬の製法が誰かに引き継がれているという事。それこそ最悪は、既に死亡している『薬の製造者と目されているテロ犯』は単なる製造請負業者で、開発者は別にいたってパターン。

 もし開発者が別にいるとするなら、あのテロ犯に魔術を教えたのも、そいつな気がするな。魔術師の家系でも無いところから、いきなり魔術師が生まれてくるわけも無いだろうし。


 まぁ、それを言うと誕生過程が一番謎なのは赤松氏なんだが。あれだ、本人が元気で帰ってきたら一回会って話をしてみよう。「うちの職員の事を頼む。乱暴者だけど良い娘なんだ」なんてな。


 さて、改めて考えてみるとやるべき事は盛り沢山。どうせ素直に情報が集まる事も無いし腰を据えて頑張りましょうかな。

 そんな事をツラツラと考えながら戸締りをし、近所のネットカフェでシャワーを浴び仮眠をとって、その日の業務は終了した。

 正直、もう50も近くなると狭い部屋で仮眠した程度では疲れなんて全然取れないが、オフィスで寝るのはなんだか嫌でな。


 そして翌日、朝から既に疲れ果てている俺を待っていたのは『関東でも薬が浸透していた』お知らせと『行方不明者が大量に発生しているがどうすれば良いか』という関連団体の皆様からの相談だった。


 勘弁してくれ。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ