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猫と僕と知らない世界  作者: シマタロウ
第一部2章:猫と魔術師のお仕事

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3-7:猫と汚染の拡大 課長はいつも忙しそうですね

 課長って、いつも忙しそうなんですよね。朝の早くから電話をしたり、電話がかかってきたり、キーボードをガチャガチャ叩いたりと。今日も私は特にやる事も無く、それをぼんやりと眺めています。何か手伝えたらと思わないでもないですが、正直なところ、私では無理。何も出来ません。

 簡単な手続きや書類作りなら出来ますけど、ちょっと難しい事になると、私はさっぱりお役に立てません。若干不本意ではありますが荒事専門というのが私の実質的な立ち位置なのです。


 そんなわけで、今日もぼんやりと過ごさせてもらいます。赤松さん、早く帰って来てくれませんかね。一時期は取り乱しましたが、よくよく考えると、クロちゃんもいるし、魔術で怪我は治せるし、そんなに心配する事なんて無かったんですよ、きっと。

 初めての事態だったので少し取り乱して訳わかんなくなってましたけど、どーんと構えておけば良かったんですよね?


 さて、反省はこれぐらいにして、そろそろお昼ご飯を考えないと。今日は久しぶりにハンバーガーにしようかな?なんか最近アメリカンな感じのお店が出来たとか聞いたような。


「依城。忙しいとこ悪いが、ちょっと来てくれ」


 いえ、メッチャ暇です。


「お前の出番もありそうだから、現状を簡単に説明させてもらう」


 課長はそう言って私に手招きする。ふむ、自席の横に来いという事はそんなに長い案件じゃないですね。立ち話で済むレベルの話と。良かった、良かった。


「まず細かいことかもしれないが、例の薬の名称が安藤氏の尋問から判明した。変若水おちみず。あの薬はそう呼ばれているらしい」


 課長のノートPCに映っているのは例のポーション擬き。名前あったんですね、コレ。・・・というか「おちみず」って何?

 こちらの表情を見たのか課長の補足説明が入る。


「変若水ってのは、俺も詳しくは分からないが、飲めば若返るとか仙人が飲む薬とか、FFで言えばエリクサーとか、まぁ、そんな感じで語られる薬品の事らしい。

 もちろん、物語の中にあるだけで実在するものじゃない。恐らくは魔術回路の強化という効果から連想して名付けられたんじゃないかとは思うが・・・にしても名前負けが凄ぇな」


「同感です」


 詐欺レベルですよね。


「んで、その安藤氏が言うところの変若水な、残念ながらこの辺りにも持ち込まれているらしい。昨晩の時点で既に行方不明者が出ている事も確認している・・・発覚を恐れての逃亡だとは思うが。

 んでな、俺は各種団体に薬の取引の確認やら『もし持ってたら提出しなさい。怒らないから』みたいな、勧告というか根回しというか、そういうのをやってたんだが、その最中に連絡が入ってな。依城には申し訳ないんだが、安藤氏が逃亡したらしい」


 ん?


「両足ともチョン切ったから逃げられるはずないんですけど?」


 安藤さんは欠けた体を回復させる魔術なんて使えないはず。「おちみず」ってやつの効果が遅れて出てきて回復魔術に目覚めたとか?


「いや、尋問のために監禁していた部屋から出そうとした瞬間に、全身が白い姿に変化したそうだ。画像は・・・これだ」


 ふむふむ。監視カメラからの画像だから荒い写真ですけど


「あれ?今までの白いのと随分違いますね。なんというか原型をとどめてますし?安藤さんの面影があるというか何というか。千切ったはずの足と腕が生えてるから原型ってのも変ですけど」


 あと前よりもマッシブな感じになっているような?元をちゃんと見てないから断言は出来ませんが。

 そもそもを言えば、白いのは今まで全裸マンばかりだったので、服に収まる体形をしているって事だけで違和感があるというか、なんというか。


「そうだ。今までの白化した個体とは明らかに形も性能も違うらしい」


「性能?」


「見張りを全員ぶっ倒して脱走しやがったらしい」


「あぁ、なるほど。強かったんですね、ドーピング安藤さん」


「せっかく確保してくれたのに尋問も半日程度しか出来なかったうえに面倒まで押し付けてすまないって、現地から連絡来てるぞ」


「はぁ、別に私は気にしないですけど」


 もう後の事はどうなってもあんまり関係ないですからね、ぶっちゃけ。


「・・・たぶん分かってないと思うが、要は追撃よろしくって事だぞ」


「は?!なんで私が?」


「そりゃ、普通の白いのでも手に負えてなかったのにパワーアップ系みたいなのが出て来たら、どうしようも無いだろ?そして頼む伝手も相手も、心当たりなんか当然無いわけでな」


 それは確かにその通り。フリーの人に声をかけたところで逃げ切られる前に手配が終わるとは思えません・・・あれ?というか


「居場所が分からないから追撃とか無理ですよ?」


「そこは大丈夫だ。服にビーコンを仕込んであるらしい。信号は今も元気に移動中。だが所詮は身体一つ。今から追いかけても十分に確保出来る程度しか移動出来ていないそうだ」


 しゃーなしですね。課長ばっかりに仕事させるのもなんですし・・・ちょっと頑張りましょうか。


「分かりました。いってきます」


「ほれ、新幹線の回数券」


 流れるようにチケットを渡されました。なんでそんなにすぐ出てくるんです?机の中にストックが?


「まぁ、パワーアップしてようが相手は格下一人だ。気楽にな。それとお前がいない間も赤松氏の情報は集めておくから心配するな」


 流石、課長。よく分かってらっしゃる。ちょっとやる気が出てきましたよ。


 では、行ってくるとしましょうか。・・・そう言えば、お昼はどうしましょうかね。やはり駅弁でしょうか?

 


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