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猫と僕と知らない世界  作者: シマタロウ
第一部2章:猫と魔術師のお仕事

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2-2:猫と飼い主の友達 マスターのお宝情報

 晩御飯にカニを食べる事は決めたものの、まだまだ時間はあります。なにせ勢い込んで来たものの、まだ10時にもなっていないのですから。

 さて何しましょ?ってところですけど、とりあえず昨日届いたばかりのクロちゃん用のキャットタワーを赤松さんと二人で組み立てる事になりました。クロちゃん自身は「自分は猫ではなく使い魔だ」って頻繁に主張してますけど、キャットタワーが必要な時点でかなり猫寄りなのではないかと。


 正直その存在に疑問が尽きません。


 それはそれとして組み立て自体は思いのほか簡単で、あっという間に終わってしまいました。

 私の背丈より少し低いぐらいの立派なキャットタワー。なのに簡単なねじ止めだけで完成です。そして、組み立ての簡単さに反してクロちゃんの満足度はかなり高いみたい。


「これはいいわねぇ。一人でもベランダの向こう側が見えるし。これはいいわねぇ」


 尻尾をぶんぶん振り舞わしながらご満悦の様子。

 窓際に置いたのは外を見せてあげるためだったんですね。なるほど。・・・って、これ完全に猫扱いしてるけど、それでいいんですか?!

 そう思って赤松さんの方を見てみるとスマホでクロちゃんの写真を一生懸命撮っているところでした。可愛いし仕方ないですよね?・・・もう普通に猫と飼い主の姿ですけどね。

 そんな事を思っていると窓越しに外を眺めているクロちゃんがご機嫌なまま語りだした。


「そういやさぁ、昨日ナギの上司って人にマスターが使ってる強化魔術の術式をまとめて送ったのよ。わたしだけじゃ術式の中身よく分かんないし、ナギもまた見ておいて」


 初耳。というか、赤松さんが唯一使える魔術を簡単に他人に明かしたらダメなのでは?


「依城さんにも知恵を貸してもらえると助かるね。いつの間にか皮膚が陶器みたいな驚きの白さと硬さになったりしたら辛そうだし」


 あぁ、例の薬の被験者を見て不安が出てきたと・・・ん?それって?


「赤松さんもクロちゃんも術式の構成を把握出来てないんですか?」


「「うん、全然」」


 二人は声を揃えて楽しそうに答えました。

 まじかー。それはちょっとダメじゃないかなー。


「赤松さんは仕方ないとはいえ、クロちゃんは分かってないとダメじゃないです?」


「それがね、ある程度までは分かるんだけど、細かいところが複雑過ぎてわたしには分からないのよ。ちゃんと動いてるから問題ないとは思うんだけど」


 クロちゃんは外を見るのをやめ、キャットタワーの二段目から少し困った顔を見せた。緑っぽい綺麗な瞳。


「・・・やけに強度の高い術式だとは思ってましたが、そんなに複雑なんですか?」


「結構凄いわよぉ。単純な体の強化以外にも並列で処理が複数走ってるみたいなんだけど、それがさっぱり何してるか分からないのよ。でも、たぶんそれがマスターの異常な強さの秘訣だとは思うのよね。とりあえず書き起こせた箇所をナギにも送るわね」


 クロちゃんはそう言うとキャットタワーから飛び降りソファーの上に置いてあるタブレット端末を起動した。まさかの肉球による指紋認証です。今の技術は無意味に奥深いですね。

 そしてクロちゃんはスイスイとタブレットを操作し、ほんの数秒で私のスマホにメールが届きました。


『マスターのお宝情報』


 どうしようもない件名ですね。

 そして添付のテキストファイルには・・・なんだか異常な行数の魔術の構成らしき物が延々と書き連ねてある・・・ナニコレ?原稿用紙にしたら何枚分あるんだろ?しかも後半に行くと私でも何が書いてあるのか危うい。難解というよりも文字の羅列にしか見えない。


「わたしなりに工夫してまとめてみたんだけど、これでもたぶん7割ぐらいしかカバー出来てなくて。だいたいは分かるんだけど、別に無くても起動しそうな工程がたくさんあるし、一度専門家に見てもらおうかなって」


 なるほど。とりあえず私の手に負えない事は分かりました。というか、赤松さんは分からないまま、こんな複雑怪奇な魔術を行使していたんですね・・・この人ちょっと謎が多すぎるのでは。

 ちなみに本人は端から理解を諦めているからでしょうけど、またクロちゃんの写真を撮っていました。タブレット端末を駆使する肉球の素晴らしさが記録されている事でしょう。それに続いて、これは・・・私とクロちゃんが入る構図かな?ソファー座面斜め下からのアングルでの写真撮影にチャレンジしています。

 とりあえず決め顔して左手で小さくピース。これで良し!バッチリです!


 あれ?合ってますよね?こんな感じのリアクションで?・・・まぁ、一旦置いておきましょう。今はそれよりも


「私も後で読み解いてみますけど、正直これはちょっと難しそうです」


「一応言っておくけど僕はさっぱり分からんからね」


 私が何を聞くよりも前に赤松さんは胸を張って断言した。なら、なんで使えてるのでしょうか?

 いまさらですかね。気にしても仕方ない事は気にする意味も無いですし、不思議ポイントが増えただけの事ですし。


 結局、その後は三人でだべってお昼を食べに行きました。近くのインドカレー屋さん(作ってるのはネパールの人らしいけど)でご馳走になりました。個室が無かったので残念ながらクロちゃんは霊体化したままだったんですけど、他の人に見えないのを良いことに一人で店内をウロウロしていました。傍から見ていると無意味にスリリングな光景でしたね、熱いものがそこかしらにあるわけですから。

 カレーは美味しかったのですけど、ナンが凄く多くて半分ぐらい赤松さんに食べてもらったり。男の人って凄く食べるんですね。ちょっと驚きです。


 そして、私の滞在予定の遅延作戦であるカニの調達が始まりました。と言っても、カレー屋さんのすぐ後ろにイオンがあるので、そこで買い物をするだけなのですけど。

 ここで問題になるのはカニ以外、お泊りセットとかのお買い物を自然に切り出す方法がよく分からないという事です。一人頭を悩ます私ですが、そんな時、赤松さんがいつも通りの飄々とした様子で


「あぁ、そうだ。鍋とかカニスプーン?とかは食品売り場とは違うコーナーに売ってるんよ。そっちの方に洗面用具とかもあるから先に見ておいた方が良いかなって」


「洗面用具?」


「泊っていくでしょ?今日はあんまり荷物持ってないみたいだから現地調達なのかなって?」


 なんと!なんと渡りに船!!

 言い出し難い私の気持ちを汲んでくれた・・・という事ではなく単なる天然ですかね?

 まぁ、何でもいいです。この機会を活用させて頂きましょう。


「そうですね。ちょっと色々買わさせてもらいますね」


「お客様用布団なら準備してあるのよ!」


 霊体化したままのクロちゃんが急にしゃべった・・・って他の人にバレると不味くないです?

 いえ、人がちらほらいるからこそ、逆にそんなに気にしなくていいのかな?赤松さんも何も気にしてないみたいだし。


「そうそう、家財道具を揃える時に『きっと依城さんが遊びに来るから買っておいた方がいい』ってクロに言われてさ。早速、役に立って良かったよ」


 実に楽しそうに語る赤松さん。全く下心が無さそうな笑顔が凄いですけど、逆にそれもちょっとどうかとは思わないでも無いような。いえ別にいいのですけど。


 でも、とりあえずはナイスです、クロちゃん。あとでカニを多めに買ってあげましょう。少なくともマツバとタラバの両方いっとくとしましょう。今日は初めてのカニでお腹いっぱいになるといいですよ!


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