第70話 フェリス、叫ぶ
「あらあら、流石ですね。アマリア様」
「あんたはアマリアが言ったように、シャノンさんなのか?」
「今更、私の正体を隠していても仕方のない事ですね」
黒のローブを纏った女性は、深く被っていたフードを取った。そして彼女の素顔はゼフィン・ライド監獄長の給仕、シャノン・トルアさんだった。
「皆様、初めまして……と、言っておきましょう。私はシャノン・トルアと申します。そして、天を穿つ咆哮、第九将、氷結の魔女とも呼ばれています。今宵限りとなってしまいますが、どうぞ皆様、よろしくお願い致します」
シャノンさんは、俺たちに向かって軽く頭を下げた。
「やっぱり、シャノンさんだったのね。しかも、ユートと同じ謎の組織の実力者だったという事ね」
謎の組織、天を穿つ咆哮。ユートは、その組織の第十将と言っていた。そしてシャノンさんは、その組織の第九将……。ユートがレッドと二人で協力しないと倒せないと言っていた事を考えると、第何将というこの数字は、小さくなるほど強さが増すという意味なのかもしれない。
「レッドはん! わいと一緒に戦ってくれへんか!? 頼むで!」
「いや、俺は――」
「氷結晶」
シャノンさんが、いきなり技名らしき言葉を発した。
ちょ! レッドとユートが、一瞬で氷の結晶に閉じ込められた!
「申し訳ありません。あなたたちの不毛な会話を聞いていても仕方ないので、二人纏めて氷漬けにさせて頂きました」
氷漬け?
まさか、レッドとユートは氷の結晶の中で体が凍っているのか!? それって、やばくね!?
「お二人のお命は、あと数十秒で消えてしまいますね」
「何とかしないと、不味いわ! このままだと、二人が死んでしまう!」
アマリアさんが言うように、氷漬けの二人がめっちゃピンチだ! この状況を何とか出来るのは、レインしかいない!
「レイン!……じゃなくて、お兄ちゃん、来てー!」
俺は結界の中から、部屋全体に響くほどの音量で叫んだ。すると次の瞬間、俺がよく見知った人物の後ろ姿が、俺の目の前に現れた。




