第69話 黒のローブを纏った女は誰だ?
「レッドはん――二人で、彼女を倒すで」
ユートが当然のように言い放つ。
「あ?」
レッドが眉をひそめた。
「二人で? 何で俺も一緒に戦わなきゃなんねえんだよ」
「何言うてんねん」
呆れたように肩をすくめるユート。
「レッドはんは、強い奴と戦うんが好きなんとちゃうんかいな?」
「ああ、まあ……そうなんだが」
レッドは頭をかきながら、少し視線を逸らした。
「ぶっちゃけ、さっきので疲れたしな。なんかもう、熱も冷めちまった」
えぇ……。
思わず心の中で突っ込む。
あれだけ楽しそうに戦っておいて、それかよ。
「ほんまかいな……」
ユートの声にも、明らかに困惑が滲む。
「ほな、わい一人で戦えっちゅうんか?」
「悪いが、そうしてくれ」
あっさりと言い放つレッド。
「てか、これはお前の問題だろ? 俺、関係ないし」
「関係大ありやろが!」
ユートが声を張り上げる。
「レッドはん達の命、彼女に狙われとるんやぞ!」
「だったら、まずはお前がやれよ」
レッドはまったく動じない。
「お前が負けたら、その時は俺がやる。それでいいだろ?」
「何を呑気なこと言うてんねん!」
ついにユートが頭を抱える。
「わいとレッドはん、二人がかりでも勝てるか判らん相手なんやぞ! それくらい、あの女は強いんや!」
――いや。
何やってんだ、あの二人。
思わず呆れる。
普通に考えれば、レッドが協力すればいいだけの話だろ。
なのに、なんであんなに渋ってるんだ?
「……あなたたち」
静かな声が、空気を切り裂いた。
「随分と余裕なのですね」
黒いローブの女が、一歩前に出る。
「ユートの言う通り……私は、あなたたち全員をここから生きて帰すつもりはありません」
その声は冷たく、そして確かな殺意を孕んでいた。
「全員――ここで死んでもらいます」
――あれ?
その声を聞いた瞬間、違和感が走る。
どこかで聞いたことがある。
しかも……つい最近。
「……黒いローブに、深いフード」
隣で、アマリアさんが小さく呟く。
「顔は見えないけど……」
何かに気づいたように、目を細める。
「そうですね……」
俺も耳を澄ませる。
「どこかで、聞いたことがある声な気がします」
「ええ……私もよ」
アマリアさんが頷く。
「たぶん、なんだけど……」
わずかに間を置き、そして。
「ゼフィン・ライド監獄長の給仕――シャノン・トルアさんじゃないかしら?」
「え……?」
思わず、声が漏れた。
「シャノンさん、ですか?」
「ええ。声が……とても似ているわ」
言われてみれば――
確かに。
声だけじゃない。
言葉の選び方や、話し方まで……どこか似ている気がする。
胸の奥がざわつく。
まさか……そんなはずは……。
「あなた」
アマリアさんが一歩前に出る。
そして、大きく声を張り上げた。
「シャノン・トルアさん、じゃないかしら?」




