第2話 嘘と真実
「御馳走様でした」
「もう、いいのか?」
「うん。私、もうお腹一杯」
肉が美味すぎて、危うく食べ過ぎるところだった。
「そうか……」
レインは一瞬、膝を抱えて地面に座っている俺の、胸のあたりを見てから視線を外した。
ん? レインが、何か言いたげそうな感じだけど?
「お兄ちゃん、どうしたの?」
「ああ……。いや……」
何だ? 俺と目線を合わせないぞ。本当にどうしたんだ?
「何? どうしたの? 何か気になる事があるなら言って欲しい」
レインは、何やら考え込んでいるみたいだ。俺に対して、何か言いにくい事でもあるのか? こうなったら、もう少し強引に訊いてみるか。
「私……。お兄ちゃんになら、何を言われても大丈夫だよ。だから、何かあるならハッキリと言って欲しい」
「そうか……。そうだな」
おっ、やっと話す気になったか?
レインは顔をこちらに向けて、また俺の胸のあたりを見ている。
「フェリスは、もう少し……。食べるべきだと思うぞ。俺から見たら、体が痩せすぎてる。そんなんじゃ、胸も大きくならないぞ」
ああ……。確かに俺は、華奢な体をしてるから食べないと胸が……じゃねえんだよ! 俺は毎日、鏡に映った可愛い自分の姿を見てうっとりしてんだよ! それにな! 太らない為に一生懸命食事制限してんだよ! 本当は毎日、腹一杯ガツガツ飯を食いてえんだぞ! 分かってんのか、この野郎!
「はぁ……はぁ……」
「ど、どうしたフェリス?」
「あ……。な、何でも、ないよ」
やばっ、心の中で叫んだら、息切れしちまった。
「本当に大丈夫なのか?」
「うん。全然、平気」
「そうか、それならいいんだが……。もしかして、俺はフェリスを怒らせてしまったか?」
おお、よく気付いたな! 俺はめっちゃ怒ったぞ!
「ううん、怒ってなんかいないよ。私のためを思って、お兄ちゃんが言ってくれた事だから。私は、ちゃんと分かってるよ」
お前の事は、よく分かったよ。お前は……巨乳好きだったんだな! ちなみにだが、俺は貧乳好きだ! ざまあみやがれ!
「でもね。私の体は、食べ物をたくさん食べられない体なの」
「そう……なのか?」
「うん。だから、こめんなさい。食事は、今まで通りの量じゃないと駄目なの」
「そう……か。いや、俺の方こそ、余計な事を言ってごめん。もう、フェリスの体の事で、何かを言ったりしないよ」
「うん。ありがとう、お兄ちゃん」
そうだぞ! もう俺の体の事で、とやかく言うんじゃねえぞ!