表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/90

第1話 死の森

「心配するな! 俺が、いつだって必ず、フェリスを護る!」


 死の森……と、呼ばれる強大で凶悪な魔物が跋扈している広大な森。そんな危険な場所に、兄のレインと妹の俺、フェリスは手を繋ぎ彷徨い歩いていた。


レインのさっきの言葉は、今の俺にとってはとても心強い。妹の俺に対するレインの溺愛ぶりはシスコンと言わざるおえないが、妹の俺を護ると言ったレインの言葉は、今まで一度も違えたことはない。そもそも怪しげな骨董屋で、これまた怪しげな鏡を触ったせいで、こんな危険な状況になっているのだが。多分、あの鏡は……転移の鏡だ。転移の鏡は、鏡に触れた者を無作為に転移させる。


 そんな危険な物を店の中に置いておくんじゃねえ!


「フェリス! 下がれ!」


 レインが突然、俺を後ろに突き飛ばした。その直後、人の何十倍もある巨体のイノシシみたいな魔物がレインに突っ込む。


 ドーン! と大きな音が森に響く。


「レイン!」


 レインを心配して見てみれば、レインは片手だけで、巨体のイノシシみたいな魔物の突進を軽々と受け止めていた。


 レインは、マジでスゲーな。


 可愛い妹が、決して口に出してはいけない言葉。そんな言葉を、俺は心の中で呟いた。


「爆炎!」


 魔物の突進を止めたレインの手から、巨大な炎が吹き出し、イノシシみたいな魔物は一瞬で丸焦げに早変わり。


「丁度いいから、こいつを食って休むとするか」


「あ、そうだね」


 レインは周囲に結界を張り、幻影の魔法も使って、突然魔物に襲われる事がないよう気を配る。その後は、風魔法で器用にさっき丸焦げにしたイノシシみたいな魔物を切っていった。あっという間に、レアなステーキが山積みされる。レインは右腕を真横に突き出し、何もない空間に穴が開く。その穴に腕を突っ込み、お皿とフォークとナイフを取り出す。お皿の上にお肉を載せ、近くにあった大きな木の下で、俺達は食事を摂る事にした。


「お兄ちゃん、このお肉、柔らかくて凄く美味しい」


「そうか、フェリスが喜んでくれるなら良かった」


 村で食ってた飯よりも、数倍美味いぞ、これ。死の森じゃなければ、ここで暮らしたいくらいだ。


 俺とレインは、レミリス王国の西部に位置する辺境の村サイダールに住んでいる。両親は三年前にダンジョンの探索に行って、未だに帰っては来ていない。生死は不明だが、俺もレインも両親は今もどこかで生きていると信じている。


 俺の生前は日本人の男で、二七歳の時に車の事故で死んだ。それが次の瞬間、女の子の赤ん坊になっていたのには心底驚いた。赤ん坊の状態で前世の記憶があるのも変なのだが、暫くしてこの世界が異世界なのだという事も知る。俗に言う、俺は異世界転生したのだ。


 どうせ転生するなら、レインみたいな奴にしてくれよ!


 レイン・ロードは現在二五歳で、探索者という職業に就いている。剣技、格闘技、魔法、どれを見ても超一流の使い手。まさに、武の天才と言っても過言ではない。それなのに冒険者ではなく、探索者になっているのは親の影響が強いからだろう。何故なら、両親も探索者だったからだ。探索者は世界各地に存在するダンジョンの中に入って、古代遺物などのお宝を見付けて持ち帰る。ダンジョンによっては、強力な魔物も居たりする。だから、死と隣り合わせという場合も多々あるのだ。通常は冒険者と探索者は、一つのパーティーとなって行動をする。レインは探索者だが冒険者としての実力もあるので、パーティーを組んでの行動はしない。


 ちなみにこの世界は、職業を一つしか選べない。全く、融通のきかない世界だ。


 フェリス・ロードの俺はというと、現在一五歳(中身は二七歳の男なのだが……)。

 レインの妹で、村の学校に通う学生だ。

  

 俺とレインは、休日を近くの町で楽しんでいた訳なのだが……。それがいきなり、とんでもない状況になっているという。


 どんな悪夢だよ。


 まあ、悔やんでいても仕方ないので、今は目の前の御馳走で幸福感を得ることにした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ