我が家の猫、化け猫
少女の姿になったネコは、長い黒髪、白のワンピースを着た、十四、五歳くらいの風貌。耳や尻尾は無く、猫の面影は金色の瞳くらいしか見当たらない。
今はその金色の瞳をキラキラさせながら、満ち足りた表情でまぐろを頬張っている。
見かけは可憐な少女なのだが、素手でまぐろを掴んで食べ日本酒をラッパ飲みする様は、さながらガラの悪い酔っ払いであった。
「ぶへぇ、うんめぇ。あ、そうじゃ飼い主よ」
「その呼ばれ方は嫌だな」
「そうか? ならばどう呼ぼうかのう。んーむ…」
ネコは振り子のように体を揺らしながら、考え込む。
「ん~~~~~~。ん~~~~~~~?」
「いや、悩みすぎでは?」
「むぅ、かわいいのがなかなか思いつかなくてな」
「三十路のオッサンをかわいく呼ぼうとするからだ。普通でいい普通で」
「えー!? そんなんつまらん!つまらんぞ!」
「普通で頼む」
ネコは納得のいかない表情を浮かべ、日本酒をあおった。
「じゃあ…ニンゲン」
「マサキと呼んで下さいお願いします」
ちゃんと名前を付けてあげてればと、少し後悔した。
「そうだ、ネコ、さっき何か言おうとしてたよな?」
「おお、そうじゃった!」
ネコは頬張っていたまぐろを飲み込んだ。
「わし、ここに住むぞ」
「ここ、ペット禁止なん――」
マサキはネコに組み伏せられ、首筋に鋭く尖った爪を突きつけられた。ネコの腕は、人間大の猫の腕に変化していた。
「言ったじゃろ、飼い猫の世話は、飼い主の義務じゃ。それに…」
ネコは顔を近づけ、ほぼゼロ距離からマサキを睨んだ。
「お主の妹がわしにしたこと、知らぬとは言わさぬぞ」




