見つけた花は*
R15ギリギリ
気分が悪くなる可能性あり
「ギャドいい子ね。とても綺麗な所作だわ」
最初の違和感は貴族の所作の指導を母親に見てもらっていた時だった。
社交シーズンが近づいて、俺も礼儀作法を覚えなくてはいけなくなった頃。
この頃から、あの人はおかしくなっていった。
最初は俺も母親に褒められる事が嬉しかった。
でも、回数を重ねる度、あの人の要求は増していった。
「さぁ。私の名を呼んで。オリヴィエと・・・・」
「オ、オリヴィエ・・・」
俺への触れ方も段々と変わっていった。
そして、とうとうあの人が俺の唇にキスをした時、俺はやっと母親の異常さに気付かなくてはならなくなった。
そこから、俺の暗黒の三年間がやって来た。
「ギャド・・・・扉を開けて。お願い、お願いだから」
父が屋敷にいない日を狙って、あの人は俺の部屋に忍び込んだ。それも、最初は軽く抱きしめて寝るぐらいだったのが、その内、体を撫で回すようになり、服を脱がすようになりそして・・・・。
「貴方、陛下にお会いしたのね?私は知っているのよ?真実を知ったのでしょう?」
「な、何を・・・ちがっ・・・・」
自分の母が、母だと思っているものが、夜になると全くの別人に変貌する。俺はそれでも、いつかきっと目を覚ましてくれるはずだと何処かで期待していたんだろう。
「ギャド。私の名を呼んで。愛してると言いなさい」
あの頃。俺はちゃんと生きていたのだろうか?
正直な所、記憶は曖昧だ。
朝になり綺麗に整えられたベッドと自分の服を見る度にあれは夢だと言い聞かせた。
陛下は、母を殺して俺も死ねと言ったのに。
「許して!許して!もう、こんな事はやめてくれ、もう!」
「ええ。ちゃんと私の言う通りに出来たら許してあげるわ。さぁ、私の名前を呼んで?貴方が愛しているのは誰なの?」
いっそ。狂ってしまえれば楽だったのに。
あの人は俺が拒絶する度に、父やジェラルド、そしてセラを使って俺を思い通りに操った。従わなければ皆を巻き込んで心中すると。今考えれば、そんな事きっと出来はしなかった思うんだ。エルハド様がそんな事許すはずないと。
・・・・・セラ。
お前に出会って初めてちゃんと恋をして俺は心底失望した。この世界に。
決して手に入れる事が出来ない小さな小さな白い花。
だから、もう終わりにしようと思った。
きっと、セラと出会わなければ、俺はあそこから抜け出せてはいなかった。最初の一歩はお前だ、セラ。
「これで、楽になれる」
でも、結局俺は死ぬ事が出来なかった。
なんでペシュメル団長、俺を見つけたりするんだよ。
お陰でセラの記憶消す羽目になっちまった。
だってよ、アイツが頭の中にいたら俺はいつまでもセラを求めちまうだろ?手に入れる事なんて出来ねぇのに。
「今日からコイツは騎士見習いとしてここに暮らす!ギャドだ!いいかぁ?手加減せずビシバシしごいてやれ!!そんでお前は超強くなれ!」
それからの数年間は、そりゃ天国だった。
いや、仕事は多いし訓練はキツイけどよ。なんせ余計な事考えなくて済む。そして最高に居心地がいいんだよ!
皆それなりに訳ありだけど、お互いふざけ合いながら、このままずっと。生きて行けたら楽だったんだがなぁ?
「ギャド様、私を見て下さい」
気持ちが悪い。吐きそうだ。
まさかセラにこんな事をされるなんて。
まるであの女に触れられているみたいに、気持ち悪い。もう、無理だ。限界だ。
「・・・セラ!・・ほんと、に無理だ・・たのむ・・」
無駄だと思った返事を待ってこれは違うと思い出す。
閉じた目をゆっくり開いてセラを見た。
「セ・・・・・・ラ?」
「・・・・・分かりました」
そこにいたのは。俺の目の前にいたのは。
俺が恐れていたものじゃなかった。
「じゃあ、最後に・・・・一つだけ」
泣かないように歯を食いしばって、それでも必死に笑顔を作るセラだった。
「キスして下さい。もう、それで終わりにします」
俺の気持ちを無視して、まるで物の様に俺を扱った、あの女じゃない。
「セラ」
ああ。セラ。
もうこれは、俺のものだ。
「お前の願いを叶えてやる。今、すぐに」
俺は、堕ちるぞ?ティファ。ありがとな。
お前のお陰で、安心して堕ちていける。
「だから、セラ。お前も俺の願いを叶えてくれ」
そして俺は、この花を摘み取る。
いずれ枯れると分かっていても構わない。
もう暗闇の中で咲く花を遠くから眺めるのはうんざりだ。
「俺と一緒に、奈落の底まで落ちてくれ」
例え誰に軽蔑されようが罵られようが構わない。
俺は、ずっとずっとお前が欲しかった。
暗闇の中でただ一つ俺の中で咲き続ける、セラ。お前が。
セラ。どうせ泣くなら、そんな風に、俺を思って泣いてくれるのなら。いいだろ?
大丈夫だ。
奈落の底に堕ちても、俺がちゃんとお前を抱きとめて、致命傷だけは避けてやるから。
「はい。どこまででも、ご一緒させて下さいませ」




