豹変する*
R15ギリギリ?
読んでいて気分が悪くなる可能性があります。
彼が触れる
こんな彼は初めてで
それでも、私は喜びで溢れていく。
そのまま深く深く溺れていく。
長い長い夜が明けて、私はその夢から目覚める筈でした。
「う・・・・・ん?」
「おう。おはようさん」
「・・・・あ。おはようござ・・・・い・・うひゃ!?」
え?私何も着てない?あ、え?ああああ〜!!
「想像通りの慌てぶりで安心だ。ほら、服はここだ。俺じゃこれの着せ方わかんねぇから起きるの待ってた」
ギャド様いなくなってません。え?じゃあ昨夜私達・・。
「あ、あの。着ますから向こうを向いて・・・」
「は?もう昨日隅から隅まで全部見たぞ?今更だな?」
ぎゃああああああああ!!ギャド様のばかー!さ、そ、そ、そんな事ハッキリ口にしないで!この人本当にギャド様なの!?
「ほら。こっち来いコルセットの紐結んでやる」
「・・・・・申し訳ありません。お願いします」
でも、その。ギャド様に触られてしまうと、なんというか・・・おかしな気分になってしまうので。あまり今は触って欲しくないです。
「・・・・・・セラ」
「はい?」
え?何故ここでキス?嬉しいですけど、あの、今服を着ている最中・・・・。
ダァン!!
「・・・・・お、お前達・・・・な、なんて事を」
・・・・・・・・わ。
忘れてましたーーーーー!!!きゃあああああああああああう!!お、お、お、思い切り見られてしまいました!こ、こんな、はしたない姿を!お、お、お父様すごい顔色になってます!し、しかもマルクまで居ます!!
死にたい!
「おい。まだお楽しみ中だぞ。大勢でズカズカ入って来やがって。サッサと出て行け」
え?ギャ、ギャド様?な、何を。
「に、兄さん?」
「満足か?」
あ・・・・・・・。これは、ギャド様、怒ってます。
「満足かよ。セラと共謀して、まんまと計画通り俺を操作出来ただろ?良かったな?思い通りに事が運んでよ?」
「そ、そんな。私は、何もここまでは・・・・」
「ジェラルド?どういう事だ?セラ様と共謀?一体」
「ギャド貴様!お前自分が何をしたのか分かっているのか!!人の娘を傷物にして!ただで済むと思うな!!」
違う。
おかしいです。
私は何かを見落としています。
とても、大事な何かを。
「別に?ただで済むとは思ってないけどよ?とりあえず皆纏めて出てってくれねぇかな?着替えてぇからよ?」
「ふざけるな!セラは連れて行く!二度と貴様には会わせない!!」
「あ?」
「・・ギャ・・・・・」
おかしい。さっきから、ずっとギャド様の言動が。
「あんた、俺が居ない間に勝手に俺とセラとの婚約を白紙に戻そうとしたよな?そもそも、そちらからの申し出の婚約話を、一方的に、格上相手の俺を相手に」
「・・・・・・な!」
「俺が、何もしらねぇとでも思ってたのか?まぁあんたにとっちゃ俺は単純で操作しやすい脳筋野郎だもんな?でもよ?許されないのは本来あんたらの方なんだぜ?セラはまだ俺の婚約者だ。責任を取らせたいなら、そのまま結婚しちまえばいい」
ギャド様が私のお父様にこんな風に言い返すなんて、今までなかったです。いつも困った顔で一言二言言い返してそれで終わらせますのに・・・・。
「俺は今、最高に機嫌が悪りぃんだ。サッサと部屋から出て下で答え合わせでもしてろや。なんでこんな事になったのかをよ!!」
ドゴォ!!
「「「「・・・・・・・・」」」」
ギィ・・・・・バタン。
「・・・・・さて。着替えるか」
「ギャド様・・・・あ、の」
「ん?」
あれ?なんでしょうこれ。
もしかして、いや、当たり前ですけれど。
「も、猛烈に怒ってらっしゃいます?私も含めて」
あ、笑いました。これは、本気です。
「俺が、怒ってないなんて、一言でも言ったか?セラ」
言ってませんんんんんんんん!!それどころではなくて自分の仕出かした事を失念していましたぁ!ああああ!!
ど、ど、ど、どうしましょう。
「本当に堕ちるのはこれからだ。セラは俺にしっかりしがみついてりゃいい」
「・・・・・・ギャド・・・・様?」
「どうせ。お前が俺を拒絶しても、もうお前を手放してやれねぇんだからな」
下に降りてギャド様の自宅の応接間に行くと、頭を抱えて蹲るギャド様のお父様と青い顔のままのジェラルド様、弟のマルクそして、オリヴィエ様の姿がありました。
恐らく事の経緯をジェラルド様から聞いたのでしょう。
父が怒髪天の表情で私を睨んでいます。
「なんと・・・言えばいいのか。しかし、その、ギャド。何故だ?お前いつもなら絶対に惑わされないだろう?」
お父様、何ですかそれ。
確かに最初全く相手にされませんでしたけれども。
「そ、そうですよ兄様。いくらなんでも、その、やり過ぎでは?」
先程から座っている膝に私を乗せたギャド様、黙ってしまっています。この場をどう収めるつもりでしょう?
「それで?俺に言いたい事は、それだけなのか?なら俺はセラを連れて、このまま出て行く。そして二度と、ここには帰らない」
「「「「な!!」」」」
え?ギャド様?ここを出て行くって?
ここは宮廷のギャド様のご自宅ですわよね?
「俺は今日で、マッカローニの姓を捨てる。そしてセラもだ。この国で暮らすことが出来ないのなら、別の国へ行く。今日をもってあんたらとは他人になる」
あ、成る程。
他の国に行ってしまえば血がどうとか確かに関係ないですものね。命を狙われる心配も今よりは減ります。
あ、行くのですか?
「セラ、これが家族との最後になる。挨拶を済ませろ」
「・・・お父様、マルク。ごめんなさい。私、ギャド様と行きます。どうか、お元気で」
「何を言っているんだセラ!許さんぞ!!」
「あんたの力じゃ俺には敵わない。俺を止めようとしても、無駄だ」
「兄様!!何で?そんな事しなくても!!」
皆大混乱です。当たり前ですが。
でも、ギャド様どんどん行ってしまいます。
これで、いいんですよね?
「待ちなさい!!」
オリヴィエ様?
ずっと黙っていたのに、やっとギャド様に声をかけました。何を、言うつもりなんですか?
「こんな事をして、本当にいいのかしら?皆に知られてもいいのね?」
何を・・・。もう、お父様も私も知っています。
全て手遅れです。オリヴィエ様。
「ふっ・・・・くっくっ」
・・・ギャド様?
「あはははははははははははははははは!!」
「な!何を・・・笑っているんだ、お前は」
「に、兄様?」
「・・・・ギャドさ・・・」
これは、誰?
私、こんなギャド様知らないです。
「やっと本性を現したな?何をバラすって?ああ、構わないぜ?言ってみろ」
え?ギャド様?
部屋に戻るのですか?
私を、降ろして何を?
「セラ。見てろ全てを」
私はこの時まで何一つ知らなかった。
「本当にいいのね?セラに全部知られるわよ?」
「いいから言えよ。最初から最後まで・・・あんたが俺にしてきた事を」
この場にいる者は、この日一人残らず奈落の底へ突き落とされた。ギャド様の手によって。
でも、それは当然の報いだった。
ギャド様が美しい所作でオリヴィエ様の手を取り、その手にキスをする。まるであの庭園で私にしてくれたように。
「愛しいオリヴィエ。そんなに寂しかったのか?私に会えなくて」
でも、誰が・・・こんな事想像出来たと言うの?
「・・・・ぁああ。やっと・・・やっと私を呼んでくれた・・・陛下・・・いえ。私の愛しいギャド」
この女が、幼いギャド様にした、考えられない残虐な仕打ちの数々を・・・・一体、誰が。