第6話『夢2』
奴の剣が、俺の頬を掠める。
「ッ……」
「まだまだァ!」
奴は、そのまま俺のななめ上あたりを回転切りでとびこし、俺は迫り来る連撃を太刀と大剣で防ぐ。
しかし、二本の武器は役目は終えたと言わんばかりに根元からポッキリと折れてしまう。
「覚醒・超爪竜『ソード・アームドラゴン』」
俺は使い物にならなくなった剣を捨て、腕が大太刀の竜へと姿を変える。
切先を奴へと向け、俺は突っ込む。
片腕の突き攻撃は奴の剣に防がれる。
「剣技『龍脈の太刀』」
「クッ」
俺は、片腕を竜の如き力を込め、突きを撃ち放つ。
それは、斬撃の砲弾となり、奴をより、遠くへと吹き飛ばす。
俺は両手の太刀を短くし、追撃のために追いかける。
直後、何かが俺の肩を貫く。
「グァァァァッ! 熱いッ! 肩がッ! 焼けるッ!」
天空から、それは現れた。
『我が盟友を殺そうなど、覚悟はできているのであろうな、小僧! 我が名はガルーダ、全てを殺す神鳥なり!』
弓を持つ、目が飛び出た異形の人鳥、ガルーダはそう言うと、奴の真下に魔法陣を展開し、『聖地〈アヴァロン〉』と叫ぶ。
奴は転移し、この場所には俺とガルーダの2人だけが残った。
『レベル200……その程度では、我との戦闘も勝てまい』
俺はステータス閲覧阻害〈大〉の特殊技能があるんだが……それすらも効かない強敵ってことか。
逆に、こっちの閲覧は有効だった。ガルーダのレベルは1000、ヒュドラと変わらない程度のレベルか。
スキルはー……わからないものが多すぎて、なんともいえない。
『千本槍』
ガルーダは大量の槍を出現させ、俺に放つ。
「負けてたまるか! 覚醒『ヒュドラ』
結界『無限障壁結界』」
俺は、ヒュドラとなり、結界で槍を防ぐ。
『む……それが噂に聞く、ヒュドラの力か。見せてみよ!』
「『首打羅千砲』」
俺は背中から生えるヒュドラの首でガルーダを殴る、殴る、殴る。
『この程度か』
しかし、最も傷ついたのはガルーダではなく、ヒュドラの頭だった。
首に合わせて殴り返されたのだ。それを再生し、次の攻撃へと移す。
「さすが神鳥……召竜喚陣『魔砲』」
俺は、召喚陣から強大な魔力の塊、魔砲を発射する。
……が、ガルーダはそれを打ち消すように、掌を魔砲へと向け……魔砲は、跡形もなく砕け散った。
『柔い。つまらなすぎるな』
俺は、ガルーダが喋り終えるより先に、ガルーダに向けてダッシュする。
手には魔法で出現させた大岩を持ち、それをガルーダに思いっきりぶつける。
大岩はガルーダの拳によって破壊される。だが、それでいい。
ヒュドラの毒で塗りたくられた拳をガルーダの顔面にぶつける。
『なにッ!?』
「先ずは一発!」
ヒュドラの毒は、俺の拳から遠くに移動したガルーダへと伝染り、ガルーダを苦しめる……が、それはものの数秒で回復し、毒による多大なダメージもすぐに治って行く。自動治癒も持っていたか……
『あァ、今のは評価するべきか。なかなか見事だった。だが、今までのように我は攻撃しないと思うな』
ガルーダはそう言うと、恐るべき速さで俺の顎を蹴り上げる。
そのまま俺の首を掴み、先ほどの様な速さで俺を掴んだまま上昇し、一気に降りる。
俺は、ガルーダに下敷きにされ、そのまま地面に落下。
ガルーダと地面に挟まれるような形になった。
「ガァッ!」
『フン……立て。まだ貴様は死んではいないだろう』
ガルーダは、遠くから俺のことをじっと見据えながらそう言う。
が、そんなことはどうだっていい。
俺は、ガルーダの強さを文字通り痛感していた。
これが、本物の強さか。
レベルなんて関係ない。
圧倒的な力、速さ。
動けなくなった体を、無理矢理動かし、俺は立つ。
この強さの壁を越えるんだ、と。
もう、負けないと誓った。
あの時を超える。
だから、勝つんだ。
『やはりな……それでこそ、勇者だ。次の一撃が、我のラストだ』
ガルーダはそう言うと、空高く、まっすぐに伸びる剣を空間から引き出す。
俺も、素手で構える。
『いざ、覚悟! 龍牙』
「覇王拳」
ガルーダは、俺の一メートル前、ガルーダの剣の切先が当たる距離に移動し、剣を振るった。
『〈咆哮〉』
「〈死脚〉」
俺は、超高速のガルーダの剣を跳躍で避け、死脚を顔面に打ちつける。
だが、俺の秘技である死脚ですら致命傷にならない。
しかし、隙はできた。
「覇乱〈蓮華〉」
肘打ち、膝蹴り、さらにはガルーダの顎を持って地面に無理矢理倒し、最後の剣〈神角〉を肩掛けの鞘から引き抜き、ガルーダの腹に突き刺す。
『流石だ……勇者よ。インドラとヴリトラを頼るが良い。我が形見を見せれば、奴らは勇者の仲間となるであろう』
ガルーダは最後にそう言うと、データの塊となって消えていった。
ガルーダは、勇者の敵ではないのだと思うが……わかんないな。
「とにかく、お前の力、活かさせてもらうぜ」
俺は、ドロップ品を確認しながらそう言った。
なかなかレア度が高く、使いやすそうだ。
ガルーダの剣とかもある。
「神鳥の討伐ギフト?」
視界の端にあるロゴに集中し、メニューを開いてそこからメールを開いてみると、神鳥討伐ギフトと書かれた……送信者は神のメールが届く。
「なになに……? 『お好きな武器をお一つ選んでください』『お好きな特殊技能をお一つ選んでください』なるほど、記念品みたいなもんか」
俺は、この中途半端な敬語はどうにかならないかな、と苦笑いしつつも、目についた武器を調べてみる。
「……なんだこれ、『スルトの焔剣』?」
とりあえず実体化させて調べてみると、黒い両手剣が出現する。
「魔法陣も結構細かいな」
俺は、レーヴァテインに施されたいくつもの装飾を見る。
レーヴァテインといえば、ユグドラシルを焼く剣だったか?
付属スキルも結構強力だ。
この武器の他にも、『オーディンの輝槍』とかもあるな。
レーヴァテインとは対照的な、真っ白な槍だ。
こっちは、魔法陣は槍の先端部分に集中している。
こんな感じで、五種類の武器のリストが載っている。
どれも、ギリシャ神話や北欧神話の神具だ。
さっきの二つに、トールの金槌、アテナの盾に、ゼウスの剣だな。
この感じだったら……俺に合っているのは、レーヴァテインだな。
剣も2本折られちゃったしな。
次に、ユニークスキルだが……いろいろある。ピックアップすると、こんな感じだ。
『勇賢の才』
勇者の近接戦闘と賢者の魔法戦闘・頭脳を手に入れる。
『創造』
何かをそこに創り出すスキル。時空すらも歪める。
『超自然精霊』
竜と対等な力を持つ、自然精霊を召喚する。
『夢見』
夢の中で、全てを自分の思い通りにする。別の世界とこの世界での、リンク能力も備わっている。
『魔帝建国』
魔帝として、圧倒的な戦闘能力、統治能力を身につける。
ざっと五つあげてみたが、だいたいこんな感じだ。
今、候補として1番上に来ているのは、夢見だ。異世界とのリンク能力っていうのは、ステータスの強化にピッタリだろう。
「よし……じゃあ、スキルは夢見で、武器はレーヴァテインだな」
俺は決定ボタンをタップし、手元に現れた黒い鞘に包まれた巨剣を肩にかける。
……あいつらの所に戻るか。
俺は、ボックスから転移クリスタルを取り出し、思いっきり叫んだ。
「転移『ニブルヘイム』!」
◇◆◇◆◇
また、あの夢だ。
けど、今回は違う。
「……夢見の能力……か」
俺は、誰もいない部屋で、黒い巨剣と混沌とする記憶を落ち着かせながら、そう呟いた。




