第2話『この世界で』
今回からは、この時間帯に更新していきまっせ!
あれから、1ヶ月が経過した。
今の所、わかっている情報は少ないが、全く、何もわからないわけではない。
特に、家族や生活に関してはたくさんのことを知ることができた。
まず、一番最初に驚いたこと、それはメイドさんがいることだった。
それも、何十人も。
つまり、この家はかなり裕福であることがわかる。
さらには、上の兄弟が4人いた。
全員男で、俺に下はいない。
つまり、男5人兄弟の末っ子だった。
だが、俺の母親と思わしき、この間俺を抱きかかえた人物は体調が優れないようで、10日に一回くらい寝込む日がある。
こんなんでよく、5人も子供を産んだな、と思ったが兄弟が腹違いの可能性も十分にあるだろう。
あとは、言語だが思いっきり日本語だった。
漢字も日本にあるものだし、まるっきり違いはなかった。
この国は、どんな特殊文化なんだ、とツッコミたいところではあるが、今はおそらくそれどころではない。
ベッドの上でじっとしていると、目の前に、小型の蝙蝠型ドラゴンが現れた。
……ヤバい、死ぬな、俺。
俺は転生して早々、死を覚悟したが、どうやら、その心配は杞憂だったようだ。
何故なら、このワイバーン、俺のことをベロンと舐めただけだった。
メッチャくせえ!
俺は、心の中で悪態を吐くが、ワイバーンを刺激しないようにじっとする。
それでも、少し高い声で吠えるワイバーンは怖いし、うるさいし、何より間違って食われそうなので、俺は結局それ以上の声でビービー泣いてやった。
すると、メイドさんがすぐに来てワイバーンと俺を同時に宥めるという偉業を成し遂げた。
いやぁ……しかし、怖かった。
「ズドォォォン」
……訂正。あんなコウモリもどき、全く怖くない。
窓から見える、俺の屋敷を覆いかぶさるように空に滞空する、あのメチャクチャでかいドラゴンに比べれば、な。
しかし、あのドラゴンは背中に鞍が付いていた。
足には大きな荷物が括り付けられているし、もしかして、あのドラゴンもウチの所有物なのだろうか。
そのドラゴンをメイドさんが見た途端、屋敷の入り口に立ち、俺を抱えたまま、入り口から入ってくる4人の男……いや、いかついおじさんと、3人の少年を迎える。
この人……特に、30代くらいのおじさんは、相当偉そうでちょっと怖い。
そのおじさんが俺を見た瞬間、俺はおじさんに対する意識がガラリと音を立てて崩れた。
「おお! 可愛い子だ! これが、5番目の我が子か!」
「ええ、元気な男の子です」
「男の子か! そうかそうか! アリアは起きているか?」
「アリア様は、現在ご就寝中でございます」
テンションの高いお父様(仮)に対し、メイドさんは機械のように淡々と答える。
メイドさんは、ある程度お父様と問答すると、俺をお父様に預ける。
「どうだ? 俺の手は。暖かいだろう?」
豆だらけでゴツゴツの手だが、その手は暖かく、お父様の優しさが伝わってくる。
前世で唯一、俺に優しく接してくれた、爺さんにソックリだ。
「おんぎゃ……」
俺は、それに合わせるように気持ちいいことを態度でお父様に示す。
「ふふふ……アリアを起こすか。ナリア、この子を頼む」
お父様はそう言うと、俺を先程のメイドさん……ナリアと呼ばれたその人に渡すと、アリア……つまり、お母様の寝ている寝室に入る。
お母様は病気で寝込んでるんだと思うんだけどな……
俺が呆れていると、すぐにお父様はワイバーンに部屋から追い出される。
このワイバーン、お母様に懐いているらしい。
……と言うよりは、おそらく、この家はドラゴンを操れる一家なんだろう。
もしかしたら、竜がこの世界の生活に浸透している……という可能性も、なくはないが……とりあえず今は、なんとも言えないな。
まあ、浸透しているなら、多分メイドさん達もみんなドラゴンを連れているだろう。
俺のイメージだが、頭が良く、強靭な体を持つドラゴンを、連れていないわけがないだろう。
俺がナリアさんに抱かれたまま考えていると、お母様が寝室の扉から、ワイバーンを連れて出てくる。
「あなた! 一ヶ月も、どこに行ってたんですか! 心配したんですよ!?」
「いやぁ……すまなかったな! 戦争に行ってたんだよ」
「だからと言って! 無言で立ち去るのはやめていただけます!?」
「あ、あぁ……わかった、以後、気をつける」
……ウチの母親は、世間知らずなのだろうか?
戦争なんて有ったら、わかると思うんだが。それに、お父様がいなくて、辛くなかったのか?
まあ、出産ともなれば世間知らずにもなるかもしれない。
それに、お母様はどことなく出産慣れしてるっぽいしなぁ……
辛くは、なさそうだ。
俺がそんなことを考えていると、腹が減ってきた。
ああ、至福のひと時がやってきた。
俺はそう思い、ビービーと声を荒げて泣く。
「はいはい、どうしたの? ……おっぱい? たっぷり飲むのよ?」
お母様はそう言うと、胸を露わにし、俺に近づける。
俺はそれに、遠慮なく吸い付く。
うむ、本日も美女の母乳は、美味である。
これだけでも若干興奮するのに、偶にお母様と年齢はほとんど変わらないナリアさんのおっぱいに吸い付いて母乳を飲めるっていうのが、また興奮する。
当たり前だが、体(特に下のモノ)は、俺の精神に一切付いて行ってないけどな……
◇◆◇◆◇
半年が経過した。
ハイハイが出来るようになり、暇な時は庭に出たりもする。
未だに、屋敷の外には出てないが……
ってか、あんまり出たくない。
また、イジメにあいそうで怖い。
そんなことはないとわかっていても、やっぱり怖い……
今日も、いつものように中庭に出てみる。
すると、そこでは俺の兄さん2人が戦闘をしていた。
一瞬喧嘩かとも思ったが、違いそうだ。
2人とも、顔が活き活きとしていた。
おそらく、模擬戦かなんかだろうな。
長男の手首には魔法陣が展開されていて、その先はまるで炎を纏った竜の手のように、鋭い爪と真紅の鱗で包まれていて、手のひらには野球ボールくらいの火の玉。
また、次男の手は魔法陣の先は深い青の艶やかな鱗に覆われている。
まるでドラ○エに存在する、兵士に支給されるという鉄製の剣を力強く握り、長男の炎や拳を防いでいる。
竜人の力か……いつかは俺も、手に入れることが出来るのだろうか?
俺がそんなことを考えていると、巨大な戦斧が2人の真上、空高くから振り下ろされる。
先ほどの2人と同様に、手首に魔法陣を展開し、明るい緑の鱗で手が覆われた三男だ。
長男と次男はそれを見切ってかわしていたが、俺は全然わからなかった。
「覚醒『インフェルノ・ダークネス』!」
「覚醒『シー・アルマドラゴン』!」
「覚醒『カオス・スカイドラゴン』!」
思わずずっこけそうな厨二病患者もビックリのドラゴンの名前を叫ぶと、3人は全身がドラゴンの姿に変化し、俺の方に近寄ってくる。
ヤバい、食われる。
またしても、餌になるのを覚悟する時がくるとは……
相手は厨二心満載の竜の名前を叫び、竜の姿をしたおかしな人間だ。
人間も食べてしまいそうで、怖い。
初めてワイバーンを見た、あの時以上の恐怖だ。
「どうだ? カッコいいだろ? あ、でも、親父には内緒な?」
長男が俺に自慢するようにそう言うと、付け足してお父様にお兄様達が竜の姿になれることを秘密にしろ、と伝えてくる。
「いやいや兄さん、まだ半年しか生きてない乳幼児が、お父様に伝えられるわけがないでしょう」
「そうっすか? こいつ、何か、不気味な気を纏ってるっすよ?」
長男に対し、次男が苦笑いしながら伝えると、三男が俺のことを不気味だと言ってくる。
「うー!」
酷いやつだぜ。
俺は、心外だと、三男に対して声を荒げる。
なんか微妙にチャラい喋り方をするくせに……
前世だったら、間違いなくボッコボコにしてるだろうな。
「そうか? 可愛いじゃねえか」
「そうですよ、不気味だなんて可哀想に……」
長男に次男、わかってるじゃないか。
だが次男、哀れみの目は向けないでくれ。
地味に傷つくから……
そんなことを考えていると、ナリアさんが俺を捜しに来た。
「ん……メイドが来たな。覚醒解除」
「「覚醒解除」」
3人は変身を解いて、メイドさんに向かって俺を抱えながらスタスタと歩いていく。
メイドさんに俺を預けると、最後に長男は俺の頭を優しく撫でながら、「秘密にな」と言っていた。
それから3年が経過した時、大事件が起きた。




