第7話:幻視回廊と、欠陥を突く方程式(差分合成)
遺跡の内部は、まるで巨大なサーバーラックが並ぶ電脳空間のような異質な空間だった。
空中に無数の光の数式が飛び交う「幻視回廊」。
その最奥部で、俺たちを排除すべく巨大な多面体の『守護体』が起動した。
「迅、気をつけて! あの多面体、周囲の魔力を吸い上げて装甲を自己修復している!」
「厄介だな。高火力の魔法をぶつけても、すぐにパッチを当てられるのか」
守護体が放つ無数の光線。俺は【静盾】と【跳躍堡塁】を組み合わせて回避するが、徐々に押し込まれていく。
その時、リアナが目を凝らし、自身の眼に魔力を集中させた。
王族の血筋が持つ特異体質――魔眼の深化。
「迅……見える! あの多面体の術式、完璧じゃない! 魔力を循環させるルートの中に、使われていない“空き回線(未使用枝)”と、構造の“継ぎ目”がある!」
「マジか、デバッガーの才能あるぞお前! 座標を教えてくれ!」
リアナの指示に従い、俺は守護体の術式構造を完全に把握する。
『【幻視領域】【紋差分解析】を解析・保存しました』
既存の魔法をゼロから作るんじゃない。相手のシステムの「空き容量」に、こちらのエラーコードを流し込む。
(守護体の魔力循環ルートの差分(隙間)に、【石壁】の硬直化と【重力】の反転式を合成して直接流し込む!)
――合成完了。【差分合成】&【位相楔】。
俺が放った不可視の魔法の楔が、リアナの指定した「継ぎ目」に正確に突き刺さる。
瞬間、守護体の自己修復プロセスが致命的なエラーを起こし、完全にフリーズした。多面体は空中に固定されたまま、活動を停止する。
「やった……! 止まったわ!」
「ナイスアシスト。さて、管理者の遺産を拝ませてもらおうか」
守護体の奥にあった神代の端末に触れると、莫大なデータが流れ込んできた。
『――基盤プロトコルの一部を供与。“観測者”の干渉に警戒せよ』
その言葉とともに、俺は世界式の根幹に触れるための重要なパーツを手に入れた。
同時に、この世界を裏から監視し、確率を固定しようとする絶対的なシステム『観測者』の存在を、確信へと変えたのだった。




