第16話:上層位相へのアクセスと『観測の街』
王都の無血クーデターから数日後。
俺とリアナは、監査官セヴランが遺した『座標断片』を手に、王宮の最上階に立っていた。
目指すは、この世界を監視し、運命を固定化している不可視のシステム『観測者』のサーバー――上層位相だ。
「迅、魔眼の準備はできているわ。空間の『継ぎ目』が見える」
リアナの瞳が、深く澄んだ黄金色に輝く。第3段階まで進化した彼女の魔眼は、今や世界式の微細な歪みすら捉えることができた。
「サンキュー、優秀なナビゲーター。それじゃあ、管理者権限に直接ログインさせてもらうか」
俺はセヴランの座標断片を中心に、ストックしている【跳躍堡塁】と【基盤プロトコル】の空間固定式を限界まで多重合成する。
――合成完了。【上層跳躍陣】。
空間がデジタルノイズのように歪み、俺とリアナの身体が光の粒子となって吸い込まれていく。
強烈な浮遊感の直後、目を開けた俺たちの前に広がっていたのは、圧倒的に無機質で、それでいて美しい光景だった。
空に浮かぶ巨大なリング状の構造物。
その表面には、クリスタルのような素材で構成された『街』が連なっていた。だが、人の気配はない。無数の光のデータ(観測ログ)が血管のように街の路地を駆け巡っている。
「これが、観測者の本拠地……まるで、星全体を見下ろすための巨大な計算機ね」
「ああ。『観測されること』によってのみ存在を維持している、データで作られた仮想空間だ」
『――警告。特異点の侵入を確認。これより、無限循環の排除プロセスを起動します』
空気を震わせるのではなく、脳に直接響くような冷たい機械音声。
ついに、世界を停滞させていた元凶が、その防衛機構を露わにした。




