第47話 呪いの手紙編④
情報屋ワークマンの元から帰宅したアタシは、例のロジャー大病院に電話をかけていた。内容はもちろん、例の呪いの手紙の件で。病院側も呪いの手紙による被害が何件か起きているらしく、現在治療中の患者がいるとのことだった。リディアの言う通り、呪いを消したところでそれは一時的な対応に過ぎない。
(手紙が無くならない限り、被害者は出る一方なのね。)
おそらくだけど、呪いの手紙と普通の手紙を判別する方法は、今のところ存在しない。リディアは最上級魔導士ゆえの力で、手紙に呪いが込められていることを察知した。
アタシに届いたのは黒い封筒に赤い封蝋がしてあるものだったけど、ワークマンの情報曰く、届く封筒の見た目は様々で見た目による判別ができないとのことだった。
共通して”差出人がない”という特徴はあるけど、それだけではその手紙を呪いの手紙であると決めつけるわけにはいかない。アタシみたいに手にして手から離れなくなって、呪いが発動してようやくそれが呪いの手紙だと自覚ができるのだと思う。
再び呪いの手紙が届いた場合、連絡をしてほしいと言って電話を切った。ついでと言ってはなんだけど、現在呪いの手紙による被害を受けた患者に話を聞けないか尋ねてもらうことにした。
アタシはあの後も試行錯誤しながら、呪いのかかった左腕とうまく付き合っているわ。リディアの魔法の力なら簡単に消してもらえるそうだけど、何か進展のきっかけになるような気がしてそのままにしてあるの。
リディアの方も相変わらず不思議な幻聴が聞こえているらしく、時々魔法を途切らせて幻聴に耳を傾けてもらっているわ。でも、こちらも特に進展はないらしい。
被害件数は確認できる範囲で数十件。呪いの手紙による被害が出始めたのは2~3年ほど前と比較的最近。頻繁に起きているわけではないけど、放置するには多すぎる件数だとアタシは判断した。だからこそ、早急に対応したいと思っているの。
「…ふう。さて、次は…。」
アタシはワークマンから得た資料集を見ながら、受話器を元の場所に戻した。
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あれから1週間が経過した。アタシはいつも通りの業務をこなしつつ、呪いの手紙の調査をしていた。ワークマンにも何か新情報があったらよこすように連絡したけど、そちらの進展はなし。
リディアはというと、何か幻聴から打開策が見当たらないか探ってくれているわ。持ち前の力を利用して試行錯誤しているみたいだけど、解決には至ってないらしい。今はアタシの目の前にある長椅子で伸びているわ。
何度かアタシの左腕に対して過去視の力を使っているけど、見られるものは何もないと毎回断念している。未来視もしてみたらしいけど、こちらも情報なし。
「んわああああああ…!」
「…あら、電話ね。リディア、少し静かにしてね。」
「はあーい。」
もどかしさから奇声を発していたリディアを制し、アタシは受話器を手にして対応する。
アタシはささっとメモを取りながら、受話器を片手にペコペコしている。話が終わったのを確認し、タイミングを見て電話を切る。
リディアがじっとこちらを見ていたから、アタシはニコッと笑いかけて手招きをした。
「連絡をしてから1週間で進展があったわね。」
「というと?」
「今さっき、呪いの手紙が届いたらしいの。受け取り主は入院中のとある男の子。デニー・マクミランという名前の少年の母親宛てだったらしいわ。母親が手紙を受け取ったら、そのタイミングで呪いがボーンって。」
アタシは急いで移動車の鍵を取り、移動用の鞄を用意する。
「病院側がアポ…面会の許可を取りつけてくれたわ。今から向かうから、リディアも準備なさい。」
「はーい。」
リディアはそそくさとアタシの仕事部屋から出ていき、廊下の左に曲がっていった。
「10分以内に支度しなさいよ!」
そう声をかけると、廊下の向こうから気の抜けた応答の返事が返ってきた。
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「呪いの手紙は受取人の大人と、その対象となる魔法適性持ちの子供がセットになっている…と。」
「ええ、アタシたちの場合、アドルディ宛ての手紙とその娘であるアンタが該当するわね。」
アタシは法定速度をギリギリ上回る速さで移動車を運転する。その間に、リディアと今までのおさらいとこれからのことを話していた。
「血縁関係は問わないみたいね。アタシたちが義理の親子ですもの。」
「ね。あくまで必要なのは、呪いの手紙の対象である受け取り主の大人と、その近くにいるであろう魔法適性持ちの子供、と。」
大人側にかかる呪いは大規模なものではなく、今回のアタシみたいに腕のどちらか、または手のみに呪いが付与されてしまう場合がほとんどみたい。稀に足に呪いを受けてしまった事例もあるらしいけど、ワークマン曰くそれは1~2件の事例でほとんどは腕周辺のみへの被害とか。
「まあ理由は単純に、手紙を受け取って作業をするのが手だからでしょうね。深い意味はないんじゃないかしら。」
「で、呪いの罹患者と対になった魔法適性持ちの子は、不思議な幻聴に苛まれることになる…。」
まさに今のリディアの状態ね。
「考えつく事と言えば、魔法適性持ちじゃないとその幻聴を聞かせられないから、ってとこかしら。」
「うむむ…。」
「まあとりあえず、マクミラン親子の話しを聞いてから考えましょうか。」
アタシはリディアにそう言いながら、アクセルを少し強く踏み込んだ。




