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第46話 呪いの手紙編③

「左手が使いづらいの、何気に不便ね。」

「もしかしてと思いましたけどその左腕…レッドフォード伯爵は、例の呪いの手紙を開けてしまったんですか~?」

「開けていないわよ。持っていたら手から離れなくて、試行錯誤していたら突然破裂して、魔力みたいなのが溢れだして襲ってきたのよ。」

「ふむ、ボクの元にある情報と一致しますな、ケヒヒ。」


アタシは一通り資料を読み終え、紙の端を机の上で整える。そのまま封筒にはしまわないで、一度リディアに渡す。リディアは資料を受け取ると、1人で改めて黙々と読み始めた。


「呪いの手紙が届く場所の共通点は3つなのね。」

「ええ、ええ。まずは『小さな子供がいる家』であることです。ただし、必ずしも住宅である必要はありません。呪いの手紙は孤児院にも届きましたからね~。」


資料にはいくつかの個人宅に並んで、孤児院やリトルスクールの名前もあった。だけど、圧倒的に多いのは病院だった。


「病院と呪いの手紙の接点…思いつかないわね。ワークマンは何か知ってる?」

「調べていたら、とある病院が医療事故を隠ぺいしたって話が出てきたくらいですね~。今回の件と関係あるかは謎で~す。」


関係の有無はさておき、控えておいて損はないかしらね。アタシは金貨をいくつかワークマンに差し出し、医療事故隠ぺいの件の資料も請求する。ワークマンはニコォっと笑うと、机の引き出しから数枚の紙を出して差し出してきた。


「2つ目は『魔法適性持ちの子供がいる家であること』…。」

「魔法適性がある子供ってところがポイントですかね~?力を持たない子ではダメということですかね~?」

「レティシア、アンタ呪いが発動してから何か違和感ある?」


アタシは医療事故隠ぺいの資料に目を通しながら、リディアに尋ねる。アタシが渡した先ほどの資料を読み終えたのか、無言でアタシに突き返してくる。


「最初は耳の調子が悪いのかなって思った。でも、途中で呪いの影響かなって自覚した。」

「…つまり?」

「不思議な幻聴が聞こえるの。何を言っているのかは分からないけど、子供の声で何かが聞こえるの。」


リディアが耳を塞ぐような動作をしながら、アタシにそう伝えてくる。


「耳を塞いでも聞こえるから、脳内に響いているんだと思う。でも、そんなに強い力じゃない。私の力で制御できるくらいのもの。」

「…何で言わなかったの?」

「私の力なら、その幻聴を魔法で抑え込めるくらいのものだからだよ。それくらい弱い呪いなの、こっちは。アディの左腕と違って。」


そう言ってリディアは、アタシの左腕を絞るように握りしめてくる。全然力が入っていないから痛くはない。


「3つ目は『ロジャー魔法大病院に行ったことのある者』ね。」

「イヒヒ、そうですそうです。そこが一番のポイントかもしれませ~ん。」


_魔法病院。

魔法での治癒や治療を目的とした病院の名称で、最低でも初級以上の魔法適性がないとなれない特殊な医者がいる病院よ。クリスティが以前頭を殴られて怪我をしたときに頼ったのも、この魔法病院だったわ。


ロジャー魔法大病院は、名前の通りローゼシア国内でも有数の魔法大病院よ。一番有名なのは、上級魔法が使える大先生が3人も在籍している点かしら。他の大病院は1人いるだけでもすごいのに、セントサザール領にあるこの病院は3人もいるのだから。


「お墓や病院にはおばけが寄り付くみたいなお話がありますけど~、それみたいな感じかもしれませんね〜。上級魔導士先生が3人もいるんですから。」

「なるほど。アディは、クリスティの件で行ったことあったんだね。」

「あとは……いえ、これは野暮であり蛇足ですね~。やめておきます、ウシシ。」


何かを思いついた様子のワークマンだったけど、口に出すのをやめて椅子の背もたれに深く座り直した。どうせアタシの両親の件を話そうとしたんでしょうけどね。アタシがロジャー大病院でお世話になったのは、両親の件が一番大きな案件だったからね。


「知りたいことと聞きたいことは聞けたわ。ありがとうワークマン、これは前払い金よ。正式な情報料は以前と同じ口座に振り込んでおくわ。」


そう言ってアタシは、持ってきていた鞄から金貨の入った袋を取り出して机の上に置く。この男、直接受け取るお金は硬貨以外認めないっていう特殊な価値観を持っているのよね。


ワークマンは袋を持ち上げ、布越しに硬貨を触って満足そうにしている。


「キヒヒ…!さすがレッドフォード伯爵。全て金貨とは、分かっていますね~。」

「情報料と、信頼費込みってところかしらね。アンタの情報は誰よりも正確だから。」


アタシは資料を封筒に入れ、鞄にしまう。挨拶をして立ち上がると、リディアも釣られて頭を下げた。部屋から出ていこうと足を数歩踏み出した時、ワークマンがアタシの背中に声をかけてきた。


「レッドフォード伯爵。近いうちに、あなたの娘さんに大きな厄災が振りかかるかもしれないですよ。お気をつけて~。」

「…肝に銘じておくわね。」


部屋を出た廊下の先で、リディアがこちらを不思議そうに見つめていた。アタシはリディアの元に歩み寄り、手を引いてこの家を後にした。

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