反響と加速②
重い腰を上げ始めた宇宙船の打ち上げ関連企業とは別に、すぐに動き始めた企業もある。
「パワードスーツ生産ライセンスを、ぜひわが社にも!」
それはダンジョン用ロボットを作る企業だ。
彼らは企業規模の大小・国内外を問わず、一斉に「パワードスーツ」生産を目指しだしたのだった。
これまで俺はネットで騒がれ、テレビ出演をし、自社の広報で顔を出してきたが、それでも「冒険者としての顔」が表に出ていた。「ダンジョンの探索をしたり、モンスターと戦う人」という認識が強かった。
それが宇宙開発事業に手を出し、ほんの1年足らずで結果を出した。
そこが大きな呼び水となっている。
ダンジョン関連で成功したのであれば、これまで通り「冒険者や魔法に憧れる人」だけが注目するのだが、今回は他の分野である。
当然、これまでダンジョンに興味が無かった人も「俺」に目を向ける。
もっと細かく言えば「パワードスーツ」にも目を向ける。
自分もパワードスーツがあればと、勘違いする。
そしてそんな人と商売をしようと考える企業も注目した。
人型ロボットが一気に巨大産業になり、人が乗れる(だけの)ロボットも多数作られたが、パワードスーツはうち以外だとほんの2社ほどが研究をしていた程度の隙間産業だ。
俺が把握しているのが2社というだけだが、その2社も個人向けの調整を考えると、製品化したところでなかなか売れない趣味的な商品になりかねないため、そこまで力を入れていないように見えた。
俺のパワードスーツ『バトルクロス』だって、実践投入からしばらくは役に立たない足かせみたいなものだったからな。
使用者がレベルアップさせてようやく使い物になるのだが、その手間をかけられる人間は少ない。
また、パワードスーツが使い物になっても中身になる冒険者が弱ければ全く意味がない。
軍も似たようなものなのか、興味は持たれていたようだが、そういう話をしてこなかった。
許可も下りないだろうが、これまでどこの国にもパワードスーツは輸出していない。
自衛隊はよくこんなものを投入し、実戦レベルまで引き上げたものだと感心するぐらい、パワードスーツは面倒くさい商品だ。
手間を惜しんで努力せずとも、自動で戦ってくれるロボットにすべて任せ、安全にゆっくりレベルアップしていけばいいというのが昨今の冒険者の主流。
冒険者ギルドからレンタルしたロボットの中で娯楽の延長のように冒険する冒険者にとって、パワードスーツは不要な品だった。
だが「冒険者としての成功」ではなく「宇宙に行ってみたい」人にしてみれば、その投資と努力は許容範囲内だったりする。
元々、宇宙飛行士も冒険者としての活動が求められるのが今の時代だ。
過酷な宇宙で何かが起きても生き残るため、冒険者活動を通じて生存能力を高めるのは普通のことだ。最近の宇宙飛行士は少しぐらい魔法が使えなければ就けない仕事である。
そこにパワードスーツの適応訓練が混じったところで、彼らには違和感なく受け入れられる。
ぶっちゃけてしまえば宇宙服だって数億円するのだから、新型の宇宙服だと思えばコスト面でも悪くない。
むしろ、レベルアップ分を考慮すると既存の宇宙服よりも性能が良いのだから、今の宇宙服からパワードスーツに切り替えるぐらい何にも問題がない。
パワードスーツの製作はまだ注目されていなかった小規模な産業だ。
最先端を行く俺たちには勝てずとも、他を出し抜けられればその企業がトップクラスになれる、ブルーオーシャンみたいなもの。
だからこそ我先にとうちの会社に提携を持ち掛けたり、「これがうちの製品だ!」と未熟な技術で作られたものを世に送り出したりするのだ。




