反響と加速①
俺の仮定に仮定を重ねた個人的考察は横に置き、一度は世間に向かって宣言したのだから、企業として宇宙開発を推し進めていく。
俺にできることはダンジョンで稼いで、稼いだ金を出資するぐらい。
研究とか、そういう頭を使うことは四宮教授や及川教授の仕事で、俺は現場で輝くタイプだから、これも役割分担だ。
宇宙開発してるのは個人出資企業ではなく複数企業が出資する合弁会社だから、正確には俺が出資するのではなく、俺の所属する鴻上工業が金を出しているんだけどな。ニュアンスは違わないだろう。
宇宙開発でダンジョン以外の出番があるとすれば、|他の出資者との顔合わせ《コネクションの構築》と、テレビ出演と言った宣伝事業となる。
俺は三人娘のこともあってメディアへの露出がそこそこ高いので、業界の連中とは仲良くやってきた。
視聴率至上主義の「マスゴミ」呼ばわりもされる業界人たちであるが、こちらの目的と許容範囲さえきちっと説明し、時には譲歩もして見せれば、付き合いやすい面もある。
こちらが公開を決めた技術や数字、それらをうまく切り取り世論を誘導していくことで、より多くの資金を集めやすい環境を整えていく。
「今は月までだと一回の打ち上げ費用が5000億円ぐらいで、燃料だけ見ても40億近い節約になるし、スリム化によるシャトル建造費用削減は100億円近いと試算されていますが。これだとインパクトが弱いんですよね。3%のコストカットは、こう、微妙に受け取られかねない。
ただISSに人を送り込むだけなら、100億円を最小限の設備で100万円まで下げられるメリットは大きい。こちらを主軸にしたいんですよ」
「滞在費用の1日400万は計上されてませんけどね」
「そこはほら、打ち上げの情報だけに絞ってしまった方が分かりやすいですから。ね? 詳しくは自分たちでも調べられるわけですし、我々としては分かりやすく記憶に残りやすい番組にしないといけないわけでして。
それに環境方面への配慮も強調していけば大企業も無視していけなくなりますよ」
偏向報道は言い過ぎだけど、言葉のマジックで情報を操作しているところが目に付くこともある。
ただ「伝える情報の絞り方と、それをしたことによる世間の反応の変化」については彼らは専門家で、完ぺきではないが、素人の俺が口をはさむほど変なことは言わない。
情報を詳らかにすることは無いが、嘘を言わず、こちらが狙った効果を出してくれるなら、思うところはあっても文句はない。
感情論で言うなら、あまり好きになれないやり方だけどな。
そうして報道された番組で俺がやったことの詳細が公開されると、世間もようやく理解を示す。
俺が衛星を自力で打ち上げられる、それでコストカットができる、同時に環境負荷の軽減もできるということが「信頼できる情報として扱われた」のは大きい。まだオールドメディアへの信頼は強い部分が残っている。
今がオールドメディアが衰退してネット全盛の時代になったと言っても、自称や聞きかじりの情報が混じるネット情報は真偽が定かでないうちは話半分だったのだ。
テレビ局によって裏付けされれば、それだけ信用されたことになる。
これまでは計画変更に難を示していた宇宙開発系大企業も、俺たちを無視できないようになっていくのだった。




