15話 表彰式と死刑判決
アーサーをエリスが押さえ、ザオがその手を握っている姿を見たノエルは、すぐさま彼らの元へ駆け寄った。衛兵たちは一方で、麻痺している盗賊たちを拘束し始めている。
「エリス! 何があった!」
エリスは一拍置いてからノエルを見上げた。そのメイクは流した涙によって崩れ始めていた。
「アーサー……どうしてこんなことをしたの?」
ノエルは一瞬言葉を失い、何が起きたのか理解できないまま固まった。そして視線が、息絶えている盗賊へと向かう。
「これは……俺の息子がやったのか?」
エリスとザオは顔を見合わせたが、何も言わなかった。
その時、アーサーがゆっくりと顔を上げる。
「もしこれをしなかったら、あいつは後で僕に復讐しようとしたはずです」
そのあまりに冷静な答えは、その場にいた全員の心を打った。
ノエルの目が大きく見開かれる。
少し離れた場所にいたチャオは、立ち上がろうとしたが力が入らなかった。
もう何を言っても無駄だ……これは、やってしまったことだ。変えられない。
アーサーはそう結論づけていた。あの盗賊は自分の誘拐、そしてプリンセスたちの誘拐にも関わっていたのだ。そう考えれば、行動は正しかったと判断できる。アーサーはゆっくりと母の腕から離れ、立ち上がった。ザオはまだ彼の手を離さず、むしろさらに強く握りしめていた。まるで彼が消えてしまうことを恐れているかのように。ノエルが近づく。
「その女の額を撃ち抜いたのもお前か?」
アーサーは一度ザオの手をそっと振りほどいた。今のノエルの様子では、何か良くないことが起きると直感したのだ。
念のため、ザオを自分の背後へと下がらせ、手で軽くかばうようにした。
「はい……彼らはプリンセスを奴隷として売ろうとしていました……見過ごすことはできませんでした……」
エリスはチャオのもとへ歩み寄り、まだ立ち上がれない彼女を抱き上げてアーサーの元へ戻った。
ノエルは何も言わず、背を向けてその場から姿を消した。
……
エリスは驚いたように周囲を見回したまま、チャオを抱いて立ち尽くした。
彼が意図的に姿を消したことは理解していたが、その理由までは分からなかった。
「彼はどこへ行ったの……?」とエリスは小さく呟いた。
地下室には静寂が落ち、わずかに響くのは捕虜を拘束する衛兵たちの声だけだった。
アーサーは、お父さんが消えた場所を視線で追っていた。
なぜか今は、数分前よりもずっと心が落ち着いていた。
まるで全てがすでに起こり、もう何も変えることができないかのように。
ザオは依然として彼のそばに立っていた。
その小さな手はアーサーの服の端を握っている。
「アーサー……」
彼は彼女へと視線を向けた。
「……ありがとう」
アーサーは柔らかく微笑み、彼女の方へ向き直った。前髪が片方の目を隠している。彼は手でそれを軽く払った。
「感謝されるようなことではありません、王女殿下。もしもう一度あなたのために同じことをする必要があったとしても、私は迷わず同じ選択をするでしょう」
ザオは視線を落とした。
瞬、彼を抱きしめたい衝動に駆られたが、周囲に多くの人がいるため、それを必死に抑えた。
それから一日後、盗賊たちは王国の裁判にかけられた。
尋問と全ての事情の審議の末、彼らには死刑が言い渡された。
方アーサーは、王女たちを救った功績により、王家の感謝の紋章を授与された。
このような褒章は極めて稀なものである。
チャオはすでに完全に回復しており、介助なしで自由に歩けるようになっていた。
授与式の間、アーサーは王城の大広間でプリンセスたちの隣に座っていた。
表面上は落ち着いていたが、彼は明らかに緊張しており、足を何度も揺らしていた。
それに気づいたチャオは、そっと微笑み、彼の膝の上に手を置いた。
アーサーは彼女を見て、徐々に落ち着きを取り戻した。
その時、王が玉座から立ち上がった。
広間のざわめきは一瞬で消え去る。すべての視線が王へと集まった。
アーサーはすぐに席を立ち、玉座へと歩み寄り、片膝をついた。
「我が娘たちを救い、死を前にしても勇気を示したアーサー・ダークフィールドに、王家の感謝の紋章を授与する!」
その言葉とともに、王は自らの手で彼の胸に王国の紋章を取り付けた。大広間に拍手が広がった。
アーサーは片膝から立ち上がり、無意識に胸元の褒章へと触れた。
黄金の紋章は、見た目以上にずっしりと重かった。
彼に向けられる視線は数百にも及んでいた。
ある者は称賛の眼差しを向け、ある者は興味深そうに見つめる。
中には嫉妬を隠そうともしない貴族たちもいた。
結局、このような褒章を受け取れるのは王国の英雄の中でも限られた者だけであり、アーサーはまだただの子供に過ぎなかった。王は彼をじっと見つめていた。
アーサーは褒章を受け取った後、もう一度深く頭を下げた。
ノエルはエリスと共に黙ってその様子を見ていた。しかしその視線には、どこか奇妙なものがあった。まだ自分の気持ちを決めかねているかのように。
王妃は王の玉座のそばに立ち、同じようにアーサーを観察していた。
今や彼はかなり有名な存在となっていた。
君は殺人者じゃない……大丈夫だ……
アーサーは自分にそう言い聞かせようとした。プリンセス救出の祝賀は問題なく終わった。
アーサーの誕生日の締めくくりは、かなり学びの多いものとなった。その後、彼はほとんど一日をプリンセスたちと過ごした。
やがてこの出来事は王国中に噂として広まっていった。
それから一か月後。アーサーが自室に座っていると、突然ドアがノックされた。
トン、トン、トン。
「どうぞ」
ドアが開き、リリアが部屋に入ってきた。
「旦那様、お父さんがお呼びです」
「お父さん?」
アーサーの脳裏に、あの地下迷宮での出来事の後のノエルの視線がよぎった。彼は思わず喉を鳴らした。
「わかりました。行きます」
リリアは静かに頷き、屋敷の廊下を彼へと案内した。
やがて二人はノエルの執務室へとたどり着く。
扉を開けた瞬間、アーサーは固まった。そこには家族全員が集まっていた。シンの姿もある。
そしてその隣には、アーサーが四年以上も見ていなかった二人の少女が立っていた。
「わあああ!見て姉さん!弟、こんなに大きくなってる!」
「ほんと!もう別人みたい!」
この世界、双子にやたらよく出会う……
アーサーの頭にそんな考えがよぎる。シンがアーサーに気づいて手を振る。アーサーもそれに応えるように手を振った。そして二人の少女へと視線を移す。驚くほどよく似ていた。
「すみません、お父さん……この二人は誰ですか?」
室内は数秒間、静寂に包まれた。
そして次の瞬間、二人の少女が同時に自分を指差した。
「えええ!?」
「えええ!?」




