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81.

慣れるにはやっぱり触れるのが一番だろうと、何故かフィーリアは両手に鉱石達を握らされている。

一体これはなんの罰ゲームだろうかと思いつつも、クラースににっこりと微笑まれてしまえば大人しく握っている事しか出来なかった。


「先日の石は、これよりも小さい物でしたね」


使えないと分かっているサイズを除いた中で、一番小さい石をクラースが指す。


「はい、それで7日。石の質と、大きさが関係していて……質の良い大きい石ほど、効果の持続時間が長くなるんだと思います。ただ──」


うーんと首を傾げたフィーリアに、クラースが視線で先を促す。


「えぇっと……例えば今からこの前の倍くらいの、この辺りのサイズの石に同じ効果付与をするとします。単純に大きさが倍だから持続時間も倍になるのか、というのと、前のと石の種類が違うので、石の種類による差っていうのがあるのか。あるとしたらどのくらい違うのかが心配で……」


「石の種類による差、ですか…」

「はい。石によって硬さとかも違うと思うので…」


ふむ、とクラースが青い石を二つ手に取る。


「例えばこの二つ、色は似ていますが、種類は違います。こちらの、少し色が濃い石の方が硬い(・・)と言われていますね」


「え、すごい。宝石の硬さ、分かってるんですか?」

「"と言われている"であって、何かきちんとした根拠があるわけではないようですよ。宝石職人の加工のしやすさ……加工する時の割れにくさ、でしょうか」

「あぁ……なるほど……」

「硬い方がより持続時間が長くなるのか? という事ですよね」

「はい。石の硬さと効果の持続時間……というか石の魔力保持力?蓄積力?? そういうのも調べたら面白いかもしれませんね、すごく大変そうだけど……」


フィーリアは自分の握っていた石をかざして眺める。


「要らん事に気付いてしまった気がするんだが……」


ボソリとアレンフィードが呟いた。 フィーリアとクラースが首を傾げてアレンフィードを見る。


「いや、もしかしたらだけどな。"石の性質的に魔力を保持しやすい石"というのも、もしかしたらあるんじゃないかと、思ったんだが……」

「え……えと、それって、硬度とは比例しない……てやつかな……」

「その可能性も、大いにある、と思う」


うひぃとフィーリアが悲鳴を上げて、クラースが僅かに首を傾げる。


「魔力を保持しやすい石、ですか?」

「あぁ。例えば今の青い石だと、濃い方が石自体は硬いかもしれないが、薄い方が魔力を溜め込める容量は大きいかもしれない。となると、同じ大きさでも効果の持続時間は、薄い石の方が長い、という事になる可能性がある」


「石の質、大きさ、硬さ、そして、魔力を保持出来る容量、ですか……」


クラースが若干遠い目をして、後ろで話を聞いていたらしいクリスタが木の枝で地面にガリガリと絵を描いて情報整理らしき事を始め、それを見たミリアが「ちょっと鍋磨いてくる」とフィーリアが2日前に魔法で焦げ落としをしたばかりのピカピカの鍋を持って離れたところへ移動した。エドガールとランネルはヴァルツを呼んで絵本を開いたりしている。



結局、次なる石は現時点で指標となれる『大きくて、更に硬いと言われている石』から選ぶ事になった。

しかしクラースも全ての石の硬度が分かるわけではなかったので、先ほどの濃い青の石、紅い石、紫の石の3つに絞られた。

持つのはヴァルツだから、と本人にどの色が好き?と聞いてみたところ、ヴァルツは紫の石を選んだ。


フィーリアはヴァルツから紫の石を受け取ると、握り込んで目を閉じる。


そして"持っている人(ヴァルツ)の瞳の色が茶色く見える"効果を石に流し込み始めた。



暫くして、魔力を流し終えたフィーリアがふぅっと息をついて目をあける。


「今回は結構時間かかったんだな」


フィーリアが力を込めるところを見ていたアレンフィードに言われて、フィーリアはうんと頷く。


「石に魔力を込める時って、『中の見えない器に水を注いでいく』みたいな感じで、最初から容量がきちんと分かるわけじゃないの。そろそろ一杯になりそう!溢れそう!て言うのが何となく分かる、て感じかな。今回の石は前のより保持出来る容量が増えたから、その分込める時間も長くなったんだと思う」

「へぇ……視ただけで分かれば、一発なのにな」


ほんとにね、と頷いて、フィーリアは石をヴァルツに渡そうとして……そしてうーんと眉を寄せる。


「さすがにこれを丸裸で持たせるのって……どうだろ?」

「あぁ、そうだな……アクセサリーに出来れば良いけど、今は無理だしな」


「それなら、巾着で良ければ作ろうか?」


こういう小さいの、と指で5cmくらいの大きさを示したミリアに、フィーリアが是非!!と食いつく。


ミリアはすぐに自分の鞄から裁縫道具を取り出してきて、その中に入っていた端切れを取り出す。

生成り、黒、紺、ベージュ、水色、ピンク…

濃淡様々な色の布をフィーリアがぱちぱちと瞬いて見ているのに気付いて、修繕用だよ、と教えてくれる。


「旅してると、服もほつれたり破けたりするからね」


ミリアの説明に、フィーリアはなるほどと頷く。


「男の子だから、やっぱ濃い色の方が良いかな?」


紺色の布を選んでヴァルツに見せると、こくりと頷いたので、ミリアはすぐに裁断して縫い始める。


横でじーっとミリアが布を縫い合わせていく様を見ていたフィーリアは、その速さに感心してはーっと溜息のような息をついた。


「ミリアって、髪の毛もそうだけどさ。すごく女の子らしいよね」

「えー?これくらい普通だよ、普通。髪の毛はクリスタとフィーリアが無頓着すぎるの!お裁縫については、まぁフィーリアはこれからでしょ?クリスタは……ボタンがつけられるから……まぁ、充分かな……」


ごにょごにょと言葉を濁したミリアに、クリスタはお裁縫が苦手なのかな、とフィーリアは首を傾げる。


あっという間に小さな巾着が完成して、口に紐を通そうとしていたミリアがスノウとじゃれていたヴァルツを呼ぶ。

布と同じような色の紐をヴァルツの首にかけて長さを調整してからちょきりと切って、その紐を巾着に通してきゅっと結ぶ。


「はい、完成」


「あーりーがーとーーー!ミリア大好き!」

「はいはい、私もフィーリアの事好きよ」


ぎゅうっと抱きついてきたフィーリアに、危ないでしょ、とミリアは裁縫道具を手早くしまう。


フィーリアは冷たぁいと唇を尖らせて、そして受け取った巾着をヴァルツの首から下げる。

巾着は、ちょうどヴァルツの胸の辺りに来ていた。


「長さもばっちりだね。じゃあこれ、入れておくね」


出来立てほやほやの巾着に効果付与したての紫の石をしまうと、ふわりとヴァルツの瞳の色が茶色に変わる。

それを確認したフィーリアは、ミリアとの共同作業も相まって満足そうに頷いた。



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