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愛情。

書き方を少し変更しました。


「え?律がいない?」


昼休み。

千尋はお弁当に入っているチーズ入りウインナーを頬張りながら来客の言葉を繰り返した。

その様子を見ながら、来客は申し訳なさそうに眉をハの字に曲げた。


「うん。教室に行ったんだけど見当たらなくて…」

「うーん。律が行くなら図書室とかじゃないかなー」


そういう千尋本人もイマイチ自信はなくて、小さく首を捻る。

するとそれを見ていたらしい陸が、千尋の頭に覆い被さるように腕と頭を乗せて話に参戦してきた。


「学習室じゃねーの?」

「「学習室?」」


来客の女の子(どうやら生徒会書記らしい)と千尋の声がかぶる。

千尋はそのことが何となく可笑しくてふっ、と笑った。

その瞬間陸の腕が千尋の首に回る。

後ろから抱きしめられているような体制になって、思わず千尋の頬が赤くなった。


「ちょっ、陸。スキンシップが多いよっ」

「別に兄弟なんだからいいだろうがよ」

「よ、よくないよっ!」


千尋は自分の首元に巻き付いた陸の手をなんとか離そうと懸命になるが、陸はそれを許さない。

むしろさらにぎゅっと抱きしめられて固定されてしまった。


「……仲良いんですね、堤兄弟は」


その様子を見ていた女の子が少し唖然とした顔つきでポツリと呟く。

それに違和感を感じた千尋が、また躍起になって陸の腕を外そうとした。


「ねぇ、陸っ!ハズしてってば!」

「駄目だ。おまえが可愛いのが悪いんだよ」

「えっ……」


不意を突くような甘い言葉に千尋は思わず胸を高鳴らせた。

その様子を密着した身体で感じ取った陸はまんざらでもない様子で、嬉しそうに千尋の髪に顔を埋める。

そして、気づかれないようにそっと、その髪にキスを落とした。


(あー、可愛くてどうにかなりそう)


公の場だと分かっていても言うことを聞いてくれない暴走しそうなほどの愛情に陸は若干の戸惑いを感じていた。


千尋は妹だ。

同じ学年だから同じクラスとかになったことは普通にあるし、血だって繋がっていないけれど千尋は確かに陸にとって妹だった。


それが最近は変わり始めている。

兄弟、という関係じゃない、もっとずっと邪な感情が陸の中に生まれ始めていた。


透き通るような白い肌。

髪の隙間から覗くうなじ。

大きな目に、長いまつげ。ふっくらした身体と唇。


「……っ」


それを意識すると、獣みたいな感情が陸を襲った。

触れたい、キスしたい。いや、それだけじゃ足りない。

もっともっともっともっと……



「陸?話聞いてた?」

「……っ!」


ふいに陸の腕の中にいる千尋が彼を見上げてそういった。

上目遣いで覗き込むように陸を見るその目が光を反射してキラキラと光る。

その大きな瞳が誘うように揺れているかのように見えて陸は、思わず目をそらした。


「……陸?聞いてたの?」

「や、…悪い。聞いてない」

「もうっ」


頬を膨らませて唇を突き出すような表情をする千尋。

これ以上自分の中に芽生える欲を抑える自信がなくて、陸は思わず千尋から身体を離した。


「……で?なんだっけ?」

「だからね。律がいなくて困ってるみたいだから一緒に探そうって行ってたの!陸も来るでしょ?」

「………」


(いつの間にそんな話になっていたんだ)


陸はその話の展開が、明らかに千尋の『お人好し』から来ていることに感づいて思わずため息を吐いた。

千尋はこういう面倒ごとを請け負う癖がある。

そしてそのとばっちりをかぶるのは、何を隠そう陸だ。


「なんで俺まで」

「え?だって陸、いつも優しいからさ。こんな時。ついつい甘えちゃうんだよね」

「……ったく」


(優しいのは千尋限定なんだけど)


心の中でそう呟きながら、もう一度分からない程度に千尋の後頭部の髪にキスを落として陸はゆっくりと教室のドアを目指して歩き出した。

その背中で、可愛い足音が自分についてきているのを感じながら。




ちょっと甘めテイストでした。

苦手だった方申し訳ありません。

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