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闘威狼に同行するご隠居達

武闘派闘威狼の出番です

 八百刃が神名者時代には、監査長を勤め、八百刃獣の中でも最戦闘派、闘威狼トウイロウ

 相手の闘志を吸収して力に自分の力に変えるその能力でどんな相手とも互角に渡り合える狼の八百刃獣である。

 そして、今回、予定の無い呼び出しを受けて、八百刃の元に向かうのであった。



「闘威狼、入ります」

 闘威狼が八百刃の執務室に入るとそこには、側近である白牙以外に二つの存在が居た。

「仕事を割り込ませて御免ね」

 八百刃が相変わらず軽い口調で謝罪すると隣に居た白牙が言う。

「八百刃様、配下の者に貴方が謝罪する必要などありません。闘威狼殿、緊急の要件だ、現在の仕事に関しては、こちらで代わりの者を割り当てる」

「了解しました」

 闘威狼も素直に頷くが、不満そうな顔をする八百刃。

「相手が誰でも謝る時は、謝るべきだと思うよ」

 困った顔をする白牙と闘威狼だったが、そこに居た、人の姿をした客人が言う。

「相変わらずですね八百刃様」

「狼打は、すっかり神様の使徒が板についたね」

 八百刃がそういうのは、元八百刃の信望者で、八百刃と同じ最上級神、時空神、新名ニイナの第一使徒、狼打ロウダであった。

 苦笑しながら狼打が言う。

「今回の仕事は、新名様からの正式の要請だ。ここに居る、天狼テンロウが発見した現勢力への抵抗勢力のアジトに正面から入り、制圧してもらいたい」

「仕事内容は、納得した。しかし、よくそんな物が見つけられたな」

 闘威狼は、狼打の後ろに控えていた翼を生やした狼の使徒、天狼を見た。

「新名様には、各勢力域の調査権がありますから、その監査の途中で発見しました」

 闘威狼は視線を向けると八百刃が言う。

「闘威狼だったら楽な仕事でしょ? 言っとくけど出来るだけ被害を少なくしてね」

「この任務拝命しました」

 狼打が答える。

「感謝する闘威狼殿」

 闘威狼が苦笑する。

「しかし、初めてあった時は、八百刃様の力に圧倒されて居た小僧が立派になった」

 頬をかく狼打。

「今でも八百刃様には、全く勝てる気がしない。問題の場所には、天狼が案内するので頼んだ」

「了解した。天狼殿、よろしく頼む」

 闘威狼の言葉に天狼が頭を垂れる。

「勿体無いお言葉です。力の限りお役に立てるように頑張らせて頂きます」

 そして、部屋を出て行こうとする闘威狼に八百刃が声をかけた。

「楽勝の任務だから、水産蛙スイサンア風乱蝶フウランチョウも連れて行って」

 闘威狼が白牙の方を見ると白牙が頷く。

「あいつらは、八百刃様の心が広いと思って仕事をしていないからな。偶には、働かせないと下の者に示しがつかない」

「解った、一緒に行って来る」

 闘威狼がそう答えて、今度こそ部屋を出て行く。



「闘威狼様、先程名前があがった八百刃獣は、何者ですか?」

 水産蛙と風乱蝶を迎えに行く道で天狼が質問してくるので闘威狼が答える。

「ホープワールド時代からの八百刃獣だ。自然と中位なのだが、あまり仕事をしてない。仲間内からは、隠居コンビと呼ばれている」

「酷いぞ、闘威狼」

 そう文句を言ってくるのは、風を纏った蝶達、風乱蝶だ。

「本当の事だろう。偶には、仕事をしろ」

 闘威狼の言葉に風乱蝶が不満気に言う。

「後輩の分際で偉そうね」

「後輩?」

 驚く天狼に闘威狼がフォローする。

「そうなのだ、八百刃獣になった順番で言うと、あっちの方が先で一応先輩になる」

「年長者は、大切にして欲しいものだ」

 そういうのは、いつの間にかに闘威狼の頭に乗って居るカエルの八百刃獣、水産蛙だ。

「年長者といわれますが、闘威狼様より年上なのですか?」

 天狼の質問に闘威狼が答える。

「そんなレベルじゃ無い。一般的にうちで最年長とされている大地蛇殿や、新名様の使徒で最年長の萬智亀マンチキ殿と同年代だ」

 それに驚く天狼。

「オールドエイジを除けばほぼ最年長クラスでは、ないですか!」

 闘威狼が頷く。

「といっても、こっちも働かないから中位なのだがな」

「年寄りをあまり働かせようとするもんじゃない」

 水産蛙の年寄り染みた言葉に闘威狼が諦めきった様子で言う。

「解っています。しかし、今回は、八百刃様からの命令ですからついてきてください」

「聞いている。一緒に行くけど、頑張ってね」

「戦いは、若い者に任せます」

 風乱蝶と水産蛙の回答に闘威狼が遠くを見ながら言う。

「解っていましたよ」

 疲れた口調に隣の天狼まで苦笑してしまう。



 目的地に向かう闘威狼達。

「それにしても八百刃様は、随分と甘いお方なのですね」

 天狼が、平和そうに闘威狼の背中に居る水産蛙と風乱蝶を見る。

「戦いは、常に自分の意思と言うのが八百刃様の考えだ。だから、八百刃獣は、常に自分の意思で八百刃様の命令に従っている」

「そちらの御二人は?」

 天狼の突っ込みに闘威狼が顔を背ける。

 そうしている間に問題の場所に到着する。

「ここだな」

 闘威狼は、門の前に立ち宣言する。

『我は、八百刃獣の一刃、闘威狼、我等に逆らう意思があるとしたら、ここで我に示せ!』

 それに答えるように、大量の神や、それに準ずる者達が闘威狼の前に出てくる。

「愚かな獣が、例え上位の八百刃獣といえ、たった一体で何が出来ると言うのだ、ここで滅び、決起の礎になれ!」

 リーダー格の獅子神の言葉に答え、次々と戦闘を得意とする神や神獣が闘威狼に襲い掛かる。

「自分達の無力さを知れ!」

 次々と放たれた攻撃を闘威狼は、吸収して一気に巨大化する。

 進撃が止まるが直ぐに巨人神がその武器を振り下ろしてくる。

「大きいだけで勝てると思うな!」

 闘威狼は、その一撃をあっさりその爪で打ち砕く。

「その言葉、そのまま返そう」

 そこから先は、力と力のぶつかりあいであった。



 長い戦いになった。

 そして、獅子神が膝をついた格好で、いまだその悠然と立つ闘威狼を睨む。

「貴様、限界が無いのか?」

 闘威狼が淡々と言う。

「我が限界は、八百刃様の限界。お前等では、とうてい超えられない壁だと知れ」

 その言葉に、心まで折れた獅子神が倒れると、集まっていた抵抗勢力は、逃げていく。

 そこに天狼が降りてきて言う。

「すごい力ですね、これで任務完了ですね」

 天狼の言葉に、闘威狼が、元のサイズに戻りながら言う。

「本当にそう思うか?」

「何をいっているのですか?」

 天狼が戸惑って言うと闘威狼が言う。

「もしも隠しているつもりだったら、少しは、攻撃を食らっておくべきだったな」

 天狼が舌打ちをする。

「だが、もう遅い、これだけの力を持ったお前を倒したとなれば、私の新勢力での地位は、格段高いものになるだろう!」

 天狼が邪悪な意思を表に出して、笑みを浮かべた。

 闘威狼は、視線を向けて問う。

「勝てるつもりか?」

 天狼が高笑いを上げて言う。

「そのつもりだ。私は、八百刃やお前等上位八百刃獣の事を出し抜く為に、研究を続けた。その結果、お前は、正面からの戦いに強いが、純粋なパワー自体は、低い事を知った。倒す手段を用意し、お前を引きずり出した、私の勝ちだ!」

 天狼が高笑いをあげる中、戦う意思が無い、純粋な力、大質量の高圧縮質量が闘威狼に落下して来た。

「高高度からの落下は、摂理。戦う意思など無い! さあ、どうする?」

 余裕の問い掛けをする天狼に闘威狼が憐憫の表情を向けた。

「本気で八百刃様を出し抜けると思っていたのだな」

 天狼が憎々しげに言う。

「当たり前だ! その証拠に、八百刃の力の象徴の一つ、お前を滅ぼせるのだからな!」

「あら、あたし達の事を忘れた?」

 その風乱蝶の声に天狼が嘲る。

「中位の八百刃獣の力で、このパワーに勝てると思ったのか?」

 闘威狼が嫌そうに言う。

「いっておくが、単純なパワーで、風乱蝶に勝てる八百刃獣は、上位八百刃獣でもそう居ないぞ」

 その言葉を示すように風乱蝶が生み出した風が、闘威狼を襲う高圧縮質量を打ち砕いてしまう。

 言葉を無くす天狼に水産蛙が言う。

「ここの始末も命令されているので、早速仕事をさせてもらうぞ」

 水産蛙がその力を発動すると、天狼が生み出した質量が塵に見える圧倒的な水が抵抗勢力のアジトを完全に押しつぶす。

「白牙殿がいっていたが、最上級神でもない限り、水産蛙の産み出す質量に抗えないな」

 闘威狼の感想に天狼がうめく。

「こんな、私の長い計画が……」

 闘威狼は、呆れた顔をして告げる。

「八百刃様に手をだそうとした時から、お前の計画は、失敗する事が確定していたのだ」

 こうして、闘威狼が任されていたトラブルは、無事解決するのであった。



 八百刃の執務室、天狼を引き取りに来た狼打が言う。

「天狼が裏切り、闘威狼を狙っている事に何時気付いた?」

「ヤオがあの不自然な発見を見逃すと思っていたのか? 話を聞いた瞬間から、トラップだと解っていた筈だ」

 白牙が他に誰も居ないので、昔の様な口調で言うと八百刃が続ける。

「抵抗勢力の奴等だって馬鹿じゃ無い、監査が行える場所に拠点なんか置かないよ。ついでに言えば、残党だったら、水産蛙の名前を聞いたら、逃げていた筈だよ。神様になった直後は、よく水産蛙のあの攻撃で相手の重要拠点を潰してたからね」

 大きくため息を吐いて、狼打が言う。

「結局は、天狼は、抵抗勢力へのプレッシャーを与える手伝いをしただけって事だな」

 八百刃は、笑顔で頷く。

「そんなところだね。でも狼打だって解っていたから、直接来たんでしょ、あちきに逆らった天狼を八百刃獣達が殺さない為」

「下の奴等に、あれを勝手に殺したら、新名の奴との関係が悪くなり八百刃に不利益になると遠回りな事を言って」

 白牙の言葉に狼打が言う。

「まあ、ヤオだったら、言わなくても大丈夫だと思ったが、一から十まで利用尽くすなんて、流石は、仕事は、完璧だな」

「当たり前ですよ」

 胸をはる八百刃に白牙が言う。

「その完璧なお前に聞きたい事があるんだがいいか?」

「何でも聞いて」

 上機嫌な八百刃。

「何で大食いチャレンジの達成記念写真の中にお前が居るんだ?」

 白牙が、そのイメージ情報を展開する。

 そこには、特大親子丼を三十分で完食って書かれて、Vサインを出す八百刃が写っている。

「しまった! ヨシに教わった店だとヤヤ経由で白牙にばれる可能性があった!」

 頭を抱える八百刃を見て狼打が言う。

「仕事であれだけ先読みできるのにどうして、こんな単純な事が解らないんだ?」

 狼打の問いには、誰も答えられない。

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