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九尾鳥が観察した最新兵器

短めな最新兵器に対しての話

 戦いの中で一番大切な物は、何か?

 武器と答える物が多いだろう。

 しかし、真に大切な物は、全く他にあるのだ。



「最新装備か」

 男達は、手の中にあるライフルを見つめる。

 どんな素人が持とうと確実に敵を捉え、弾切れも無く、殆どのものを貫通する威力まで兼ね備えた最新兵器であった。

 しかし、男達には、そんなライフルよりも欲しいものがあった。

「水は、何処にあるんだよ」

 一人の男の呟きに誰もが沈黙する。

 最新兵器を装備させられた彼等は、最前線を任され、進軍を続けていた。

 その最新兵器の圧倒的な性能に彼等の指揮官は、明らかなミスをした。

 地理把握が済んでいない場所への進軍。

 その危険性を理解していなかった。

「もしもトラブルがあったとしてもこのライフルがあれば敵を打ち破って進んでいける」

 絶対の自信をもってそう告げた指揮官もまさか、打ち破る敵すら居ない状況が来るとは、思わなかったのだろう。

 現在、彼等は、敵を追撃し深いジャングルの中に迷い込んでいた。

 追撃していた筈の敵の姿も無く、帰り道すらも解らない。

 行動し易い様に携帯した食料も少なかった彼らは、直ぐに空腹に襲われる事になった。

 それでも、人間は、数日なら食事をしなくても生きていける。

 しかし、水が無ければ三日も持たない。

 数時間、経ったそれだけの迷走で、彼らは、これまで味わった事の無い焦燥感に襲われる事になる。



 一日が経過した。

 最早、男達の渇きは、限界に近いものになっていた。

 必死の捜索にも関わらず帰路だけでなく水源一つ見付からない。

「水、水は、何処にあるんだよ!」

 一人の男がライフルの引き金を引く。

 何も出ない。

 最新型のライフルは、誤射を防ぐ安全設計が成されているのだ。

 それが尚更に苛立ちを高める。

「どんなに高性能でも、水一つ見つけられなければ意味が無いじゃないか!」

 そんな時、男達の目に高い木の上になる果実が入った。

 男達は、無我夢中でその木に向って駆け出した。

 そして、よじ登ろうとしたが、ツルツルとした木の皮がそれを妨害する。

「打ち落とせば良いんだろ!」

 果実が生えた枝を目標にして、引き金が引かれた。

 しかし、放たれた弾丸は、果実そのものを打ち抜いてしまう。

「何でだよ! 俺は、ちゃんと枝を狙ったぞ!」

 苛立ち、何度も打ち出され、果実を全て打ち抜いてしまった。

「馬鹿、なんて事をしてくれたんだよ!」

「俺の所為じゃない! 全部このライフルがいけないんだ! 何で狙ったところに当たらないんだよ」

 いがみ合う男達。

「自動補正だ。その機能で勝手に照準が果実になってしまったんだ」

 ライフルを憎々しげに見る男達。

「何が最新型だ! 果実一つ落せない役立たずじゃないか!」

 地面に叩きつけられるライフル。

 他の男達も行軍に邪魔な荷物に成り下がったライフルを捨てて歩き始める。

 数日後、捜索隊が発見したのは、渇きに悶え苦しみながら死んだ男達の姿だった。

 そして、状況を観察していた一人の男が消えた。



 八百刃神殿に消えた男が現れる。

「ただいま戻りました」

 男は、八百刃獣、九尾鳥の姿に戻り、八百刃の元に訪れ、一部始終を報告した。

「今回の件は、失敗という事で宜しかったでしょうか?」

 八百刃が小さく頷く。

「今回の件の一番の問題は、なんだと思う?」

 九尾鳥が即答する。

「指揮官の判断ミスでしょうね」

「外れだよ」

 八百刃が、報告の一部をピックアップする。

「一番の問題は、あのライフルをきっちりと理解させないで兵士にもたせた事。今回の件だって、果実を落す事が出来なかったのは、兵士がライフルの照準システムを十全に理解していなかったからだよ」

「しかし、その様な事ならば戦場の常では、ございませんか?」

 九尾鳥の指摘に八百刃が真剣な顔をする。

「だからそれが間違っていないと言うのか?」

 九尾鳥が途惑う中、白牙が口を挟む。

「間違っているのだったら、お前から是正するように通達があってしかるべきだろう」

 八百刃が真剣な目をする。

「兵士は、駒。それが戦いでの鉄則。しかし、その駒に何処までの知恵を与えられるか、何処までの知恵を与えても駒のままで居られるか。それが戦いを司る我々にとっても難しい判断」

「その考え方事態が間違ってるのでは、ないのか? ここの判断で戦う、それこそ理想だとお前も言っていただろう」

 白牙の指摘に八百刃が頷く、

「そうだね。でもね、個人の力なんて高がしれている。力を合わせるには、駒である必要があるのも確かなんだよ」

「難しい判断ですね」

 九尾鳥の呟きに八百刃が告げる。

「九尾鳥の決断と同じ、誰の下で戦うのかは、自分の意志で決めてその指示の元、駒の様に戦い、どんな結果になろうとも自分の責任である。それが兵士の理想なのかもしれない」

「弱気人間に九尾鳥と同じ覚悟を求めるのは、酷だな」

 白牙の言葉に八百刃が遠い目をする。

「だけど、あちきは、そうあって欲しい。九尾鳥、悪いけど、今回に似た例を兵士への教育水準を有る程度あげて再度実施。その結果を報告して」

「了解しました。全ては、八百刃様の御心のままに」

 頭を下げて退室していく九尾鳥。

「とりあえず、これで仕事も一段落だね」

 八百刃が背伸びをする。

「そんな訳があると思っていたのか?」

 白牙が新たな仕事の山を取り出す。

「どうしてそんなに残っているの?」

 顔を引きつらせる八百刃。

「お前に事前に知らせているのは、最低限の仕事のスケジュールだ。お前に目を通してもらわなければいけない報告書など無限に有る。予定より早く終わった以上、その分でこっちの確認もしてもらう」

 白牙が白金虎に指示を出して優先度の高い報告書を集めさせる。

「えー、あちき新作のエッグデザート食べにいくつもりだったから早く終わらせたのに!」

 クレームをあげる八百刃に白牙が冷徹に告げる。

「人間界に行かせるつもりは、全く無いから諦めろ」

 積みあがっていく資料に涙する八百刃であった。

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