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【Bar風花 閑話】此花神社の穏やかな一日 ~櫻庭家と深雪ちゃんの日常~

前書き


風花町の奥、桜と柑橘の香りが漂う此花神社。

そこに隣接する櫻庭家の平屋で、今日も穏やかな一日が始まる。

朝は天ちゃんの竹箒と、深雪ちゃんのコアラ抱きつき。

昼は美和の手作り弁当と、みんなの笑い声。

夕暮れから夜へ——神社が静かに帳を下ろす頃、Bar風花のカウンターに灯がともる。

戦闘も恋愛もドラマもありません。

ただ、此花神社の朝から夜までを、温かくゆるやかに描いた日常の記録です。

どうぞ、のんびりお付き合いください。


此花神社の穏やかな一日 ~櫻庭家と深雪ちゃんの日常~


此花神社の1日


 風花町の細い路地の奥、街灯の橙色の光がわずかに届く場所に、ひっそりと佇む此花神社。


 ここは四季を問わず桜が舞い、柑橘の瑞々しい香りが漂う不思議な場所だ。そのすぐ隣にある櫻庭家の平屋、あるいは神社を預かる人々の一日は、澄みきった朝の空気と共に静かに幕を開ける。



 

朝:静謐の境内と優しい日常の始まり


 朝霧がまだ白く残る夜明け前。境内に「シャッ、シャッ」と規則正しい竹箒の音が響き渡る。


 天は眼鏡の位置を少し直しながら、生真面目な顔で落ち葉を集めていた。隣に住まわせてもらっているお礼として、毎朝境内を掃き清めるのが彼の日課だ。


「いやぁ、天くん、毎朝本当にすまないねぇ」


 社務所の縁側から声をかけたのは、宮司の高峰おじいさんだった。風花町の美味しい湧き水で淹れたお茶の湯呑みを差し出しながら、のんびりと目を細めている。


「いえ、高峰さん。お隣に住まわせてもらっていますから。おはようございます」


 天が微笑んだその時、社務所の奥から、純白のボブヘアを少し寝癖でハネさせた深雪がふらふらと現れた。


 この時間の彼女は足元がおぼつかない。標準的な、少し大きめの緋袴の裾を気にしながらトトト、と歩み寄ってきた深雪は、天のシャツの裾をきゅっと掴むと、そのまま胸元へコアラのようにすっぽりと収まり、じっと天の体温を吸い始めた。


「おやおや、深雪ちゃんは今日も天くん湯たんぽが一番効くようだねぇ。じゃあ私は先に戻るよ」


 高峰宮司が微笑ましく笑いながら去っていく。天は腕の中の深雪を「よしよし、寒かったね」と抱きしめながら、その耳元できらめく小ぶりのインペリアル・トパーズを見つめた。高峰宮司の淹れた温かいお茶を一口すすると、深雪は満足そうに目を細めた。



 

昼:お姉ちゃんの手作り弁当


 太陽が高く昇り、境内の桜が柔らかな光に透けるお昼過ぎ。


 深雪は授与所のカウンターで、一生懸命にお守りを並べたり、時折冷え性の小さな手を温めながら、静かにお留守番の時間を過ごしていた。


「……咲ちゃん、ありがとう。みゆき、これ大好き」


 隣の平屋からやってきた美和が、手作りのお弁当と温かいほうじ茶を広げると、深雪は嬉しそうに、けれど少し背筋を伸ばして座った。


 美和は愛おしそうに深雪の頭をなでる。


「本当に可愛い妹。千草お姉ちゃんが蔵元への出張から帰ってきたら、またみんなでおいしいものを食べようね」


 高峰宮司も加わり、境内のベンチでみんなでお弁当を食べる。そんな温かい家族の笑い声が、風花町の穏やかな風に溶けていく。



 

夕方から夜:静かに更けゆく、箱庭の境界


 境内が茜色の美しい夕日に染まり、陰影が深く伸びていく時間帯。


 高峰宮司が「そろそろ門を閉めるかね」と準備を始めると、深雪の一日の仕事も終わりを迎える。


 日没を迎え、帳が下りる。街灯の明かりも届かない深い闇が神社を包み込む頃、『Bar風花』の鉄刀木カウンターには柔らかな間接照明が灯り、美和が凛としたプロのバーテンダーとして立ち始める。夜になれば、千草お姉ちゃんもBarの厨房に入って腕を振るう時間だ。


 深夜、お留守番を終えた深雪は、お気に入りのピアスを小さく揺らしながら、再び静まり返った櫻庭家の平屋へと、しっぽを振るように帰っていく。


 天の膝の上で丸くなって寝息を立てる彼女の耳元で、インペリアル・トパーズが、夜の静寂の中で優しくきらめいていた。

あとがき


此花神社の穏やかな一日、いかがでしたでしょうか。

深雪ちゃんの寝癖ボブと天ちゃん湯たんぽ、

美和のお弁当、そして夜のBarへの静かなバトン……

書いていて心がじんわり温かくなりました。

派手なことは何も起こらないけど、

こういう日常が櫻庭家と此花神社の宝物なんだなと思います。

またいつか、別の閑話で神社やカウンターにお邪魔できたら嬉しいです。


天照(Bar風花)


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