lag_05(迎えに行く)
*
黒い石柱・誰かの彫った、三つの言葉・ 誰かの言葉。
(二千年)
一方通行/文字・言葉(石文)時を超えて(見せつけられる)圧倒的な懸隔/時差、
(届かない)
眩暈がするほど(遠い・遠い)時間の壁に、ぼくは飲まれる(不明瞭)
これは何? これが、何?
──(分からない)
*
「分かってる?」と、きみはぼくの(耳)引っ張って、「聞いてる?」
もちろん(何だったかな)
「もうっ」と、きみは膨れて(そんな顔もかわいらしいのに)手を放す(指先が離れていく)
大丈夫。と、ぼくは(きみを)説得する。
ぼくがきみに(何か・何であれ)否やはない。
「もうっ」
(きみは腰に手を当て、また膨れて見せる)
「もうっ」
そして(口元を手で覆い)笑い出す。
ぼくの胸のうちは(愛おしさで)いっぱいになる(破裂しそう/気取られたくない)心の二律背反。
分かってる?
きみがぼくに、もたらしたもの。届けてくれたもの。教えてくれたこと。きみの全て。
──分かってる?
分かってるよ(愛してる)
*
「ハーヴェイ・ニコルズ」
彼女が口にした(百貨店)
ロンドン・チューブを乗り継いでそして、
──お土産にチョコレート(ハロッズ)に紅茶とジャム(フォートナム&メイソン)だけじゃ、普通すぎる。だからね、と、彼女は(ハーヴェイ・ニコルズ)買い物に行く。
その間、あなたは、あの大泥棒博物館で黒い石をじっくり堪能して?
*
ひとつの正義や真実よりも、小さなやさしい嘘が(ずっと・もっと)いいことがある。
或いは、もしも(叶うのなら)ぼくはきみの出掛けるあの朝、ぼくはきみを迎えに行く。
──(おとぎ話)──
ベッドから飛び降り着替えて腰に財布とパスポートの入ったバッグを巻き付けジャケットを羽織り彼女の出ていった扉を開ける駆け出す。
通りに出る彼女の向かった駅に地下鉄の駅に急ぐ。
朝の陽射しに目を眇めながら走る・走る・走る。乾いた空気が身体に入って手足を冷たくする。
階段を下りるオイスターカードを通す改札をくぐるエスカレーターを降りるホームに出る標識を見るアナウンスが聞こえる列車の音と押し出される空気、湿ったにおいアーチ状の壁に沿って彼女を探す彼女を見つける。
ぼくは息急き切って人を避け謝り進む彼女を目指す彼女が気が付く彼女が微笑むぼくも笑って彼女の前に立つ列車がホームに入る扉が開く駅のアナウンス人が降りて人が乗る。
彼女の手を取り間に合ったと息を吐く扉が閉まる列車が動き走り出す風が巻く。
「乗り損ねちゃった」と、彼女は手を上げ頬にかかる髪を耳にかけ腕に巻いた時計を見せるそして、
「知らなかった?」彼女は云う。「この時計、いっつもズレるの」
ぼくはきみを抱きしめる
了




