009 二人で共に
本日二話目です
ドラン親方との約束には少し早いが、宿での不始末を考えると居ても居られず早々に出てしまった俺とレイ。散歩がてら町を散策しながら向かう事にした。
俺の左側を歩くレイを眺めていると今更ながら本当なのかと思えてしまう。
茶系に染めたAラインフレアスカートに草色に染められたブラウスに袖を通すレイの姿は光の具合によっては銀色にも見える髪色と似合っている。シンプルなデザインだからこそレイの可憐さが引立つと言うか、横に俺なんかがって良いのかと考えてしまった。
「どうしましたか?ご主人様」
俺の視線に気づいた彼女が、首を少し傾け少し心配そうに尋ねて来る。
あぁ~コレが萌え~なんだ。四十超えて雅かの春が訪れるとは思いもしなかった。ホンの数日前まで異世界に迷い込んで不安でいっぱいだったのに……男とはコウも簡単な生き物なんだと改めて反省した。
「どの角度から見てもレイは綺麗だなって思ってね」
「な、なにを戯言を!陽が高い内から御ふざけはお辞め下さい」
俺が揶揄ったと思ったのか少し頬を膨らませる彼女。言葉使いも何処か堅苦しいのだが、短くて可愛い尻尾がフルフルと揺れているのが見える。如何やら、嬉しさを隠すのに硬い口調や態度を示す癖がレイには在る様だ。
そんな事を考えて居る内に親方の工房に付いてしまった。
「少し来るのが早くないか?」
「スイマセン。邪魔に成らないトコで待ってますから」
「いや、構わん実は既に出来上がって居る」
「流石親方!仕事が早いですね」
「フンッ。戯言は良い!其れより試着してみろ。細かい修正をしてやる」
レイの装備は、鎧姿では無くベストに近い。其れをベースに肩当てと腰当て、幅広ベルトとロングブーツにグローブ。其れと俺が提案した肘と膝にプロテクターの装備で固めていた。色は草木染の淡い緑色で統一されている。弓は短弓・剣は両刃の片手剣・盾は楕円系のバックらーと呼ばれる小型のタイプだ。
「中々似合うな」
「軽くて、着け心地も良いようです。コレなら、どんな動きも問題なく出来そうです。それに色が良いですね」
レイと俺の感想に親方も満足そうな表情を浮かべていた。
「娘の装備は、出来合いに品だが、色を攻める序に少し付加魔法を掛けて居る。回比率と命中度が二割増しだ。但し、防御力はそのままだから当てられない様にしろ。弓と剣はノーマル代わりに盾の方に細工を施しておいたぞ」
付加魔法だと!?親方はそんな芸当まで出来るのか凄いやん。コレで金貨一枚って安いんじゃ無いですか?
「ホレっ!コッチはお前さんの分じゃ試着しろ」
全身黒尽くしの井出達はひ弱な俺を少し強く見せる。レイの装備と同じく最小限の重さに抑えて要所の保護はシッカリとしてデザインだ。
「ご主人様が凛々しく見えますね」
「だろ!それが難題じゃったぞ」
二人揃って言わなくても良いじゃないか。俺だって其れ位自覚してるさ。其れより気に成るのは槍の形状だ。
「親方。コレ槍でしたよね!?槍先は?それに先端が円錐に膨れている不思議な形ですよ」
「其処がこの魔導槍のミソじゃ。普段は鋼鉄製のカバーの中に槍先は隠れて居る。だから街中でも携帯が許されるのじゃ。手元を……こう捻って石突を突けば、ホレ!この通り槍先が飛び出る仕組みじゃ」
俺から魔導槍を取り上げ、実際に槍先の出し入れを行いブンブンと店内で振り回す親方に、呆れながらも仕掛けの凄さに驚いた。
「それじゃ普段は棍棒としても扱えるって事ですね」
「持ち歩く時は上下を逆様に、石突で突けば相手を殺す事は無かろう」
殺すって何よ!?ってか俺にナニヲモトメテマスカ?と思いながらレイを視界に居れると、確かに思う所が沸き上がる。コレだけ綺麗な娘が町を歩けば、ナンパしてくる奴も居るだろう。そんな輩はイチイチ相手にしてられないが、暴力的な相手が居ないとも言えない。街中で殺傷事件で御用だなんて洒落にも成らない。
親方の細かい気配りに感謝感謝である。
「どうだ!?」
「予想以上って言うか基準を知らないですけど、十分満足です」
「コレだから困った奴じゃ。娘さんやお前さんがシッカリ手綱を引くんじゃぞ」
「ハイ」
と笑顔で答えるレイ。俺の半分の歳なんだけど、まぁ~尻に敷かれるのは慣れたものさ。
他に二十本セットの矢筒とナイフを二本買って、レイの装備代と併せて出費は金貨一枚と銀貨五十枚。いよいよ資金の底が見えて来る。残りは金貨五枚と銀貨三十二枚それと銅貨九十枚だ。
こっちの世界に来ても金に悩まされるとは思いもしなかった。何処がファンタジーなんだと心で呪いながら、親方の工房を出た。明日からキッチリ働かないと。
「レイ。冒険者ギルドに向かうぞ。明日からの狩場を事前に調べて置こう」
「明日からが本番ですね!判りました」
俺の気合が通じたのか、レイが変な気合を入れている。……うん綺麗な娘はどんな表情をしてても絵に成るんだね。
ギルドに訪れ、俺が向かう先はシャルルさんの下だ。何かと相談事を聞いて貰ってる彼女なら良いアドバイスをくれるだろう。
「本日は如何しましたか?」
「明日から活動を開始しようと思いまして、情報収集でお伺いしました」
頭を下げ訪問内容を告げる俺にシャルルさんは少し驚いた表情でコッチを見ている。
「シャルルさん。どうかされました?」
「お連れの方は?」
「あぁ~ご指導通り仲間を増やす事したんです。レイ此方はお世話に成ってる受付のシャルルさんだ。御挨拶して」
「お初にお目に掛かります。ご主人様の下で働きますレイと申します」
礼節を取った挨拶です。うん猫娘には多分無理な行動だっただろうな。レイの挨拶にに満足する俺。気が付けば、周囲に居た冒険者達の視線を少し感じるよ。
「……あっ!ハイ。シャルルと言います。こちらこそ宜しくお願いします」
互いに挨拶を交わした後、イキナリ俺の襟首を捕まえてシャルルさんが小声で問い掛けて来る。
「エイジさんって、この町に来たばかりって言ってましたよね。何処で、あんな綺麗な女性と知り合ったんですか!?」
アレ?なんか雲行きが怪しい?俺悪い事したっけ?
「な、何を言ってるんですか。そもそも奴隷を買えって勧めたのシャルルさんの方じゃないですか。俺は其れに従っただけですよ」
「えっ!えええ!!と言う事はレイさんって奴隷なんですか?あんなに綺麗なのに?……それに何で、奴隷で女性を買っちゃったんですか?まぁアレだけ綺麗だと女の私でも迷っちゃいますケド……やっぱりエイジさんも他の男性と同じって事だったんですね」
益々雲行きが怪しくなってます。機嫌を損ねたシャルルさんに何故か勝ち誇った態度のレイ。見えない火花が飛び散った気がするのは俺だけでしょうか?
見た事の無い不機嫌さを見せるシャルルさんが仕事モードへと切り替わった所で、俺に問い掛けをして来た。
「それで、レイさんの冒険者登録されますか?」
レイの登録を今の今まで忘れていたケド、疑問形の言葉に疑問が沸く俺。何故そんな事を聞くんだと思わずには居られない。
「何か不都合でも在るんですか?」
「やっぱり、そう来ましたか……良いですか!奴隷は所有者のモノとして扱われるんです。パーティーメンバーに数えるか数えないかでは、取り分が変わってきます。当然ほかの仲間の方々は頭数が少ない方を歓迎します。ですから、奴隷を登録しないで行動を共にする冒険者も多いんですよ」
生死を共に働いたのに奴隷に分け前を与えないとか考えられない!この世界の人間どもは何を考えてるんだ?奴隷の冷遇が此処まで酷いとは俺処かレイまで知らなかった様で、シャルルさんの言葉に彼女も少し戸惑っている。
「へぇ~。でも俺には関係ないんで其れ無しです。レイを登録します」
即決の行動にシャルルさんとレイが驚いていた。
「ご主人様!」
「そ、ソレで良いんですか!?そうなると他の方の誘いが受け難くなりますよ。って、エイジさんでしたね。判りました。レイさんの登録に何の支障も在りません。手続きを行いましょう」
他の奴の考えナンテ知った事か!俺のレイを奴隷扱いする奴なんかとパーティーなんか鼻っから組むツモリは無い。チョッと鼻息が荒くなった俺を諫める様にシャルルさんが話題を変えてくれた。そうそう、登録は大事だけど、今日の目的は明日からの仕事に関してだ。シャルルさんのアドバイスを聞かなきゃね。
「今更ですが、エイジさん立派な武具ですね。レイさんも良い装備をされている様子ですし、コレなら町の北側でも問題なさそうですよ。常時発注分の依頼を兼ねて行えば効率も良いですから、お薦めの場所は……」
どうにか、アドバイスも頂けました。後は明日に控えて英気を養う為と早々に宿へと帰る俺とレイである。
時間を割いて読んでくれて有り難う




