51.動き出す世界
side:レイモンド・マイルズ
夜白隊長のやつがいなくなって、もう1ヶ月が経過した。
世間はもうすぐクリスマスだと、騒いでいるかBSF内の空気は晴れない。
それもそうじゃろうなぁ…
鳴の手掛かりは全くなく、唯一の手掛かりである、あのクリスタルも、あれから全くうんともすんともいわん。
研究室もまだ解析中で、なにもわかっていない。
心配事は多いが、1番は…
「アリスがのぉ……」
鳴が失踪してからのアリスは、見ていられない。戦闘中に話を聞いたアリスは、半ばパニックになったように、体力の温存なんて考えず、全力でバグズを殲滅した後、すぐに鳴が消えたホールに突入した。
何も無いただの洞窟と化したホールの最奥を自分の目で確認し、縋るようにドローン映像も確認したアリスはその場で泣き崩れた。
クリスタルに何度も触って、「私も、だいじょぉぉおお!」とそれはもう号泣していた。
アリスがどれだけ触れてもクリスタルはなにも反応しなかったのだ。
あれから、ずっとアリスは塞ぎ込んでいる。訓練してても、上の空で集中していない。
鳴に出会う前の…あの頃のアリスよりも、目標が無い分酷い状態だ。
あの頃のアリスは焦ったように訓練して、復讐という目標だったが生きていた。
でも、今は、もぬけの殻のようなのだ。
「心配ですね……」
橋本秘書がワシの漏れた声を拾う。
「うむ、どうしたものか。鳴と出会って、復讐心が薄れてくれた。愛知でのタイプ:δを単独討伐で、アリスは完全に吹っ切れて、笑顔が多くなったんだ」
「そうですね。最近のアリスちゃんは笑顔が多くて、楽しそうで、より一層可愛くなりました」
「うむ、ワシが見ても、明らかに鳴のこと好きだったからの……
鳴がいればすぐ、立ち直るんじゃが」
「夜白隊長は、バグズの本拠地に行ったんでしょうか」
「おそらくのぉ」
「私には夜白隊長が負ける姿が想像出来ません」
「そうじゃのぉ、ワシもじゃな。しかし、環境がわからん。鳴も食べ物がなければどうしようもないじゃろうし…」
「それはそうですね……」
奴らが地球に住み着いていたのではなく、転送されてきていたのであれば、鳴が向こうで暴れているのだろう。
現にあれから世界中、どこからもバグズは出現していない。
「総長、すみませんが、そろそろ出発のお時間です」
「仕事はせねばならんか……」
「世間も騒いでおります。総長は仕事しなければなりません」
アリスが心配で仕事どころではないのだが、確かに世間は隊長の失踪を知っている。色々な憶測が飛び交い、情勢が安定していないのも事実だ。
「それじゃ、行くかのぉ」
これから"中華連邦国"に向かう。本当はアリスがいる本部から離れたくはないが、向こうの情勢が悪くなっている。連邦国支部も慌ただしいようで、BSF内部でも氾濫分子が出ているらしい。
BSFは対バグズの機関であって、その武力を使ってその他の、政治や、ましてや戦闘行為なんて絶対に阻止しなければならない。
ワシがいって喝を入れなければ……
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隊長がいなくなった……
あんなに強く、絶対にいなくならないと思ってた隊長が…
好きなのに…
大好きなのに……
こんなことなら、好きだって伝えれば良かったかな。私の大切な人が次々に失ってしまう…
もう会えないのかな。
私はどうすればいいの?
「アリス、これ食べて!」
いつの間にか帰ってきてたリリさんが、アイスを渡してくれる。
「あ、ありがとうございます……」
「隊長ならきっと無事だよ!逆にバグズの本拠地壊してるって!」
「でも……
帰ってきません……」
「帰る方法を探してるんだよ!それまで私達が帰る場所を守らないと!」
何かしないとと、頭では理解出来るけど、万が一隊長が死んでしまったら?
隊長が強いのは知っているけど、何体バグズクラフトがいるかわからない。ずっと、戦い続けることは隊長でも……
その可能性があるだけで、もうどうしようもなく心が苦しい。
「アリス…、
私も隊長がいなくなって悲しいんだけどね。今の私達には信じて待つしかないの。
研究室の解析が進めばこちらからも行けるかもしれないし、いつも通り訓練するしかない。
隊長が戻ってくる方法を確保することを信じて……」
話しながら、言ってるリリさんも元気がなくなってくる。
「リリさん、私はただ待つことしか出来ないんでしょうか?」
「うーん……
そうだ!明日は研究室に行ってみようか!進展があるかもしれないし!」
「そうですね…」
研究室に行っても、まだなにもわかってないと言われる想像をしてしまう。それが怖くて、ただそうとしか
返事が出来なかった。
◇
翌日、朝からリリさんとアレンも含めて合流し、研究室に向かう。出迎えてくれたのは室長のジホンさんだ。
「やぁ、よく来たね。今日は私だけで済まない、みな忙しくしていてね。ああ!言わなくてもいい!君たちがきた理由はわかっている。転送クリスタルの研究進捗だろ?」
「はい、忙しいところすみませんね。早い話そうなります」
「だよねー!
いろいろと細かい説明は後にして、まずは知りたい所を簡単に言おうか!
まず、今すぐ隊長を追うための転送ゲートを作ることは出来ない」
やっぱり、無理なんだ…
「でもねー、今、ちょうど取っ掛りが出来たところなんだ。それで君たちが来ると連絡がきた時、ピンときた。愛知と桜花高校の大規模進行、そのホールは埋めてしまったけど、あなた達なら転送クリスタルを回収して来れるわよね?」
氷が得意なだけで、隊長には違う系統も教わった。私達でもホールを掘り直すことは可能だ。サンダブリッツもあるため、直ぐに行き来できる。
「やります!!」
「ふふっ、そう言うと思ったわ!ちょっと待ってね。楠木さんまで総長と行っちゃったからねー。持ってくるものがあるの!」
そう言って持ってきたものは、何やら片手で収まるサイズの機器だ。
「あの転送クリスタルは バグズ因子と反応する"IDTF"と呼ん……
まぁ、細かい話はいいか。簡単にいえばその電波のようなものが出ているんだけど、研究過程で作ったこれはそれを測定できる。つまり、」
「見つけるのに役立つ!?」
私が言葉を引き継ぐ。
「そゆこと!転送クリスタルがもう1つでもあれば、もう少し分かるし、検証できることがあるの」
「それが進めば隊長に会えますか!?」
「確証はないが、研究がかなり進むのは間違いない」
これしかない…
隊長にまた会いたい。
会うためにできることをしよう。いつまでもウジウジしてるのは、隊長に怒られる。
「すぐに見つけてきますので、よろしくお願いします!!」
「よーし、アリス、アレン、早速行こうか!」
「「はい!!」」
◇
プルルルルルルルル
サンダブリッツへ移動していると電話がなった。
ん?栗谷隊長からだ!?
珍しい、どうしたんだろう?
「もしもし?」
「アリス!大変だ!至急会議室に!!」
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