46.推し
side:ザック
「えー、ラスベガス支部の皆、私が零番隊隊長の夜白だ。これから皆には地獄を見てもらうことになる」
えっ!?
みんなに動揺が走る。
隊長はざわめきを納めるように、間を置かずにまた話はじめる。
「最近、ここ一帯にバグズの出現が相次いでいることは、皆体感していることだろう。これは、大規模進行の予兆だと予想される。よって、ラスベガス支部に我々零番隊はしばらく常駐することが決定した。君たちには大規模進行に向けた、戦力増強のため訓練を受けてもらう。研究室の予測によるとあと1週間前後との予想だ。よってこれより5日間は過酷なものになると覚悟せよ。
君たちの5日間の頑張り次第で生死を分ける可能性もある。気を引き締めるように!」
「「「了解!」」」
なんか、思ってたより凄いことになっている。大規模進行がくるってことは、あ、あの【死神】タイプ:δまで出るってことだ。
それって結構ヤバくないか!?
零番隊がいればδ相手でも負けないだろう…でも、俺達は最前線で戦っている。出現位置が少し悪いだけで、死んでしまう可能性がある。
気を引き締めなきゃいけないってことだな。
挨拶が終わり、訓練場へとやってきた。
中央にはアレンさんがいる。
「よっしゃー、やるぞぉー!!」
訂正、気合いの入りまくっているアレンさんだ。
俺達はこれから、集団でアレンさんに挑む。
ラスベガス支部のレベル6以下は全員だ。全8部隊いるうち、3人のレベル7を除いた、21名が相手する。1時間組手、休憩の後、アリスさんと1時間組手だ。これを繰り返すらしい。
どっちも辛い気がするけど、これも実践形式の訓練だそうだ。時間がない中でレベルアップさせるにはこれが早いらしい。
ふぅー、俺はただ全力で挑むだけ…
集中する…
「うぁぁああ!!」
アレンさんに向かって全力で木刀を振るったら、お腹に凄い衝撃が走り、転がされた。食べたものが全て出る気がする。
つ、強いのは分かっているが、21人がかりで挑んでいるんだぞ?
先輩達はレベル6だし、何としても一撃くらい入れてやる!!
1時間後ー
無理無理無理無理無理無理!!
ムリムリムリムリムリムリ!!
「はっはー、俺にもいい訓練になるな!色んな方向からの対応を迫られる!全方位への注意力の訓練だ!」
アレンさんが楽しそうに笑っている。
もう、あの笑いは悪魔にしか見えない。
俺達はもう、しばらく動けないほどボコボコにされていた。
全身、隅々まで打撲のない場所などないのではと思うほどだ。
周りでも同じようにみんなぐったり倒れている
こんなのが、続くのか……
俺、タイプ:δにやられる前に死んでしまうかもしれない…
◇
5日間の工程が終了した。
昨日で、解放されたのだ!アレンさんにボコボコにされ、休憩して、アリスさんにもボコボコにされ…
休もうとして立ち上がらないと追撃される。
本当に地獄のような5日間だった。
もう2度とやりたくない。絶対にいやだ!
でも、いやでも強くはなった気がする。
特に防御面は。
「おい、ザック、俺はもうすぐレベル6になるかもしれん。そのくらい力をつけたと実感してるぞ」
「俺もだ!身体が勝手に動くよくようになってきてるぞ」
同期のダニーが自慢気に話してくるが、俺だって実感くらいあるのだ。
「絶対死なないからな!むしろ、いっぱい殺してやる」
「俺がお前よりも活躍してやるよ」
「ほう!?成績はいつもどっこいどっこいじゃねぇか」
「うるせぇー、これから覚醒するんだよ」
まったく、俺の方が訓練中たくさん挑んでいたはずだ!だから、ダニーより強くなっているはずなんだ!いつも先輩達に2人セットに思われているばかりじゃないはずだ。
とりあえず、眠過ぎてやばいから寝よう…
◇
あれから3日たった。
今のところ大規模進行は発生していない。研究室もあくまでも予測らしいから外れるかもしれないが、まだ気が気ではない。
ダニーと訓練場に向かって角を曲がると廊下の先にはアリスさんと七瀬さんの後ろ姿を発見した。
アリスさんは身長がそんなに高くないが、健康的な感じでスタイルいいカワイイ系、七瀬さんは胸が大きくスタイル抜群で美人系だ。
どちらも人気だが、カワイイ系が好きな俺の推しはアリスさん。ダニーは七瀬さん推しのためそこは違っている。
もちろん、ファンクラブにも入っている。まぁ、シャルルさんが総長に許可を得て作ったSNSアカウントをフォローするものなんだが…
シャルルさんが撮ったアリスさんの写真が定期的に投稿されるのだ。一応、アリスさんに許可を取った写真を投稿してるらしいが、本人はどこまで知っているのだろう?
そんな2人の推しが目の前に現れたんだ。実際には訓練中も、アリスさんに至っては実際に組手をしていたが、あの時は必死過ぎて余裕がなかった。
2人で目を合わせ頷く。一言でいい声を掛けたい。写真を一緒にとってもらうことは出来るだろうか?
意を決して、声をかける。
「あ、アリ「ジリリリリリリ!!!!」」
基地内にアラームが鳴り響いた。出現したバグズクラフトを衛生が捉えたようだ。
「バグズ複数確認、数6!まだ増えます!!支給出撃願います!」
当直オペレーターの声が響く。
「くっ、ダニー、行こう!」
「おう!」
バグズめ!なんてタイミングで!
振り返りながらダッシュしようとした瞬間、風が吹きいい匂いがした。
よく見えなかったが、七瀬さんを抱っこしたアリスさんだろう。
俺も気合いを入れなければ!
絶対生きて、アリスさんに写真を撮ってもらうんだ!!
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