~第一話~
四天王編を通しての主人公はセラフィナイトですが、この「四天王誕生!」はクリソコラがメインのお話です。
「私が、御前試合に……ですか?」
クリソコラは女王ラピスの言葉に困惑を隠せずにいた。
彼はその職務上、自身の感情を表に出す事も、主君の命に“否や!”を唱える事も決してなかったが、その命を素直に受け入れる事は流石に出来なかった。
(この私に表舞台に立て、と?)
「其方は剣の腕もなかなかのものだと聞いている。一族最強の剣士と謳われるジェムシリカと闘ってみたいとは思わぬか?」
「しかし、私は……」
「これは私の、ノンマルタス一族の女王ラピス・ルース・ムーカイトの勅命である! 逆らう事は許さぬ!! この度の御前試合には成人を迎えたクロサイトも初出場する。其方とジェムシリカ、そしてクロサイトの剣技……楽しみにしている」
(クロサイト……? ロードクロサイト・カペラス殿の事か? しかし、彼は弓の名手の筈……何故、彼が剣の試合に? 陛下は一体どういうお積もりなのだ?)
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ノンマルタス一族を陰から支える諜報部員たち。
唯一、地上への行き来が許され、地上の動向を探る諜報部員の大半はある一族の出身者だった。
その一族はありとあらゆる部門のエキスパートを輩出し、体術に優れ、隠密活動を得意とする。
……その名は“ソディアイト一族”。
一族の宗家であるソディアイト家は爵位こそ授からなかったが、その長年に亘る王家への忠誠が認められ、貴族の称号を与えられた家柄だった。
だが……
ソディアイト一族は元々、公には知られていない“陰の存在”。
それまで、ソディアイトは家督も一族の総帥の地位も宗家の嫡男が継承するのが慣わしだったが、貴族の称号を与えられてから後は――家督は嫡男、危険を伴う諜報部員の総帥の地位は一族の中で最も力のある者が継ぐというように、世襲と能力重視という二つの継承制度を持つようになった。
家名を継ぐ者と職務を継ぐ者を完全に分けたのだ。
現総帥はそのソディアイト宗家に次男坊として生を受け、幼き頃より一族中からその才能を認められ、成人すると同時に総帥の地位に就いた“一族始まって以来の天才”と名高い、クリソコラ・シエク・ソディアイトだった。
(ジェムシリカ殿の剣技には確かに興味がある。彼の本気の剣技を見たのは二年前に一度きり……。私の剣が彼にどれだけ通用するか、試してみたい気はする。しかし、飽くまでも私は陰の存在。その私が御前試合に、表の世界に出る日が来るなど……夢にも思わなかった)
クリソコラの逡巡を他所に、瞬く間に御前試合の日は訪れた。
その日、女王ラピスはまたしても意外な命令を下す。
クリソコラ22歳、ジェムシリカ24歳。
そしてクロサイトは17歳。
この時、シェルの側近はジェムシリカとクロサイトの二人だけだった。




