~第四話~
「そうか。……そんな事があったのか。セラフィナイトは平静を装ってるけど(変だな)と思ってたんだ」
クロサイトの言葉を聞いてシェルはそう答えた。
クロサイト自身もその場に居合わせた訳ではない。
だが、セラフィナイトの様子が可笑しい事に直ぐに気づいた。
セラフィナイトに問い質してみたが、彼は何も言わない。
クロサイトはクリソコラから事の真相を聞かされた。
『同じ四天王同士、貴方も知っておいた方が宜しかろう』と。
『けれど、この事は他言無用!』と、そう念を押された。
クロサイト自身も誰にも伝えるつもりはなかった。
だが、セラフィナイトの意気消沈ぶりは手に取るように分かる。
このままでは勝負にすらならない。
クロサイトは悩んだ末に、主君に全てを打ち明けた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「……怖いのか?」
「シェルタイト様?」
「“ジェムシリカが怖いのか?”って聞いたんだ」
(クロサイト殿からお聞きになられたのか?)
セラフィナイトはそのシェルの言葉で全てを理解した。
「“いいえ”とお答えすれば、嘘になります。私とジェムシリカ殿との差があれ程とは。あそこまで力の差があるとは……正直、思ってもいませんでした」
「もう一度闘って、勝つ自信はあるのか?」
「…………」
「実力差がどうの……と言う以前に、気持ちで負けてしまっていては勝てるものも勝てないぞ」
「気持ちでどうにかなるものではありません! ひと月であのジェムシリカ殿に勝つなど、到底不可能……」
「お前らしくない言葉だな。そんなにジェムシリカに負けた事がショックだったのか? 圧倒的な力の差を見せつけられた事が?」
セラフィナイトの言葉を遮るようにシェルはそう言った。
「…………」
「ひと月は、短いか?」
「はい」
「……だが、ジェムシリカがお前にひと月の猶予しか与えなかったという事は……裏を返せば、お前にはそれだけあれば充分だという事なんだぞ。あいつはお前の力をそれだけ評価してるんだ」
「……っ!!?」
そのシェルの言葉はセラフィナイトにとって予期せぬ意外な言葉だった。
そんな風に考える事は到底出来ない。
それほど圧倒的な力の差をジェムシリカに感じていた。
「構えろ、セラフィナイトっ!」
「シェルタイト様?」
「俺はどちらの味方もしない。だが、お前の方が不利なのは確かだからな。一度だけ見せてやる。ジェムシリカを上回る力を!」
その瞬間、シェルの気が変化した。
それは八歳の時、ムーカイトの碧い髪の力が覚醒したシェルが、ジェムシリカとの闘いに勝利して以来、封印していた真の力を解き放った瞬間だった。




