~第二話~
四天王は基本的に対等だった。
お互いの実力を認め合った者同士、年齢はさして問題ではない。
しかし、まだ未成年のセラフィナイトがシェルの側近に選ばれた時、周囲の反応は厳しかった。
その若さと才能に対する嫉妬。
しかも、セラフィナイトが平民出身だという事実が彼への風当たりを更に強くしていた。
クロサイトも立場的には同じだったが、その矛先が全てセラフィナイトに向かったのは、誰もがそれと分かるほどセラフィナイトを特別扱いする女王ラピスにあった。
セラフィナイトはシェルの守役に抜擢された時から、妬み故の誹謗中傷に曝されていた。
……が、セラフィナイトはそれを逆に自身の力とし、その望まれたもの以上の実績を示す事で周りを納得させてきた。
だが……
彼が側近筆頭に抜擢された噂は瞬く間に広まった。
『四天王最強のジェムシリカ殿を筆頭から降ろしてまで何故、セラフィナイト殿を? ジェムシリカ殿に何か非がおありなのなら兎も角……』
『陛下は何故、セラフィナイト殿をこうも特別扱いなされるのか?』
ラピス女王が殊更にセラフィナイトを特別扱いするのは、シェルへの盲愛ゆえだった。
彼女は本心ではセラフィナイトを疎んじていた。
否、セラフィナイトを――と言うより、彼女からシェルを奪う者。
その可能性を持っている者への懼れだった。
けれど、セラフィナイトの力を一番評価しているのも彼女だった。
セラフィナイトが自身の気持ちに気づいた事を察知した彼女は、ジェムシリカと競わせる事でセラフィナイトの更なる覚醒を促そうとしていた。
彼女の特別扱いがセラフィナイトの立場を危うくしている事は知っていたが、彼を庇う事は一度もなかった。
――こんな事で潰れる様なら潰れてしまえ!――と。
ラピス女王はセラフィナイトを一人の人間として見てはいなかった。
シェルを護る最強の剣を鍛える事。――それが彼女の目的だった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「私と手合わせ願えますか、セラフィナイト殿?」
そう声をかけたのはジェムシリカだった。
「はい。ジェムシリカ殿、宜しくお願いします!」
それはセラフィナイトにとって願ってもない言葉だった。
シェルを護る為に。一番近くに居る為に!
“一族最強の男になるのだ”と決意したあの春の日から今日まで、セラフィナイトはそうなる為に懸命に努力してきた。
四天王最強と呼ばれるジェムシリカに勝つ事。
それは一族最強と認められる事に他ならない。
そしてそれは取りも直さず、シェルの側近筆頭の位置に己が就いた事を周囲に認めさせる最も近道でもあった。
セラフィナイトはシェルの守役だった時、ジェムシリカと手合わせした事は一度もなかった。
同じ側近になってからは教えを乞う形で何度か剣を交えたが……。
四天王専用の剣の練習場。其処にはもう一人、クリソコラが居た。
クリソコラはそんな二人を黙したまま見つめていた。
ジェムシリカの剣技は素晴らしかった。
確かに彼は強い!
事、剣の試合において彼に敵う者は一人も居ないだろう。
しかし……この時、セラフィナイトにはジェムシリカの太刀筋が全て見えた。
(ジェムシリカ殿に、勝てるっ!)
セラフィナイトが自身の勝利を確信したその刹那……
一瞬空気の色が変わった。
ラピス女王、鬼畜すぎますよね。
でも私は、ラピスは嫌いにはなれないんですよね。この人にはこの人なりの想いがありますから……。
でもでも、これで「セラフィナイト~巡り来る青陽~」で、シェルがセラフィナイトに爵位を与えた訳や、彼への風当たりを嫌がった理由が分かって頂けたと思います。
ずっとそういった風評にセラフィナイトは曝されてたんですよね。
もっとも、セラフィナイト自身はあまり気にしてませんでしたけどね。
嫉まれるのは自分に力があるからだ……と前向きに受け止めてましたから。
「セラフィナイト~巡り来る青陽~」は第二章以降は二次創作ですけど、第一章は本編に基づく過去話です。
この物語は第一章の半年後のエピソードですよ。




